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同居開始

お風呂

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「お風呂も広いな……」

 食事が終わったあと、碧さんの提案によって僕が最初にお風呂に入ることになった。
 お風呂へと続く扉を開けると、全面ガラス張りの旅館みたいな広がっている。
 肩までゆったりと浸かり、目線を窓の外へと向ける。ネオンが煌めいており、その光景はとてもロマンチックだ。

(信じられないな。自分がこんな生活を送っているだなんて)

 昨日までは母さんと二人暮らしだったのに、いきなりの四人暮らしだ。
 義理の兄は芸能人だし、まるで小説のお話みたいに思えてくる。

「雪都くん、ちょっといいかな」
「あ、はい! なんでしょうか?」
「うちのシャワーはかなり特殊だからボタン操作を教えようと思って」
「え、そうなんですか」

 ぐるりと浴室内を見渡してみる。確かに、よくある捻ると出る装置がない。というかノズルらしいものも見当たらない。
 
「わ、わかりました。えーっと」

 慌ててつつ、浴槽から出ようとしたその時だった。

「今入るから待ってて」
「え、」

 引き戸式のドアが開き、碧さんが姿を現した。
 咄嗟に浴槽へと浸かり直す。同じ男とはいえ、碧さんに裸を見られるのはなんとなく恥ずかしかったのだ。

「よく見ていてね。ここを開いて、青いボタンと冷たい水が赤いボタンを押すと温かい水が出てくる。ここを捻ると温度調整もできるよ」
「わぁ、凄い……!」

 タイルだと思っていたところを開けると、様々なボタンで埋め尽くされていた。
 あまりにもハイテクすぎるので、思わず身を乗り出して聞いてしまう。恥ずかしいという感情はどこかにいっていた。

「っ、雪都くん⁉︎」
 
 身を乗り出しすぎてしまい、そのまま床へと顔面直撃をしかけてしまう。

「危ない!」

 慌てて碧さんが手を伸ばして助けてくれる。そのまま、僕は碧さんの腕の中に覆われた。

 ──ゴン、と鈍い音が広い浴室内に響き渡った。

「ご、ごめんなさい! 僕のせいで!」

 慌ててだす僕を宥めるかのように、碧さんが大きな手のひらで頭を撫でた。

「俺は大丈夫だから。常に特訓しているし」
「で、でもっ、」
「大丈夫だから。ね?」

 にっこりと微笑まれてしまい、何も言えなくなってしまう。

「碧さんは大丈夫だと言ってくださったのですが、心配なので背中をよく見せてください」
「え、雪都くん⁉︎」

 頑張って碧さんを起き上がらせると、背中側に回ってTシャツを捲る。
 広い背中の中央あたりが赤くなっていた。

「もう大丈夫だから!」

 少し強い声で、碧さんが言い放った。思わず、肩が跳ねる。

「俺からはよく見えないけど、痛みも感じていないから気にしないで」

 そう言い残すと、碧さんは足早に浴室内から去ってしまったのだった。

 


 
 
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