天使と死神は恋をする(追憶のquiet特別番外編)

makikasuga

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1days④

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 小一時間後、山奥にある建物の前で車は停まった。

「あの、ここは?」
 いつしか日も暮れ、建物が発する光以外は全て暗闇だ。車を降りて外の空気に触れれば、虫の音以外は聞こえず、見上げた空には、星が散りばめられている。
「診療所だよ。ここの先生に、命を救われたんだ」
 桜を救出する際、直人は重傷を負った。一時は生死を彷徨う状態だったと父から聞いた。完全復帰まで一ヶ月半程かかったという話だった。

 だったら、私もお礼言わなきゃだ。

「こんばんは、桜ちゃん。また会えて嬉しいよ」
 出迎えに現れたのは、バイト先で出会ったシラサカだった。店で会ったときと同様、魅力的な笑顔を振り撒いている。
「こんばんは。シラサカさん、でしたよね?」
「嬉しい、名前覚えててくれたんだね。迷子も捕まえてくれて、本当にありがとね。立ち話もなんだからさ、さあ入って」
「じゃあ、俺は零を抱えて……って、おまえ、起きてたのかよ」
 直人の声を聞いて、すぐさま桜は振り向いた。助手席から出てきたのは、精悍な顔つきをした大人の男性だった。目の焦点があっておらず、どこかぼんやりしていた。やがて桜と直人に視線をやった後、こう語りかけてきた。
「あんた達、誰?」
「俺は桜井直人っていって、おまえとは、その……」
「桜井、直人?」
 噛みしめるように名前を呟いた後、零は右手で両目を覆った。
「知らない。わからない。何も、思い出せない」
「気にすんな。俺とはまだ知り合ったばかりだから」
「どうやって、あんたと知り合った? あんたも、ヤバい仕事してるのか」
「いや、俺は──」
「心配したんだぞ、零」
 返答に困っている直人を助けるかのように、シラサカが零に駆け寄った。
「何か思い出したのか?」
 シラサカの問いかけにも、零は首を横に振るだけだった。
「夢を見て、怖くなっただけ。迷惑かけて、ごめん」
「無事だったからいいよ。それより、まだ熱があるんだろ、先生に診てもらえ」
 シラサカの言葉に零はこくんと頷き、彼に支えられるようにして歩き出す。その姿は、桜の知っている零とは別人で弱々しく感じられた。
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