7 / 23
1days⑤
しおりを挟む
「目離すなって言っといたのに、なんでこんなことになってんだよ!」
「はい、俺です、俺のせいです。ごめんなさい」
「前々から言ってんだろうが、おまえらは少年を頼りすぎなんだよ!」
診療所の主だという松田は、本当に医者なのかという位の強面で、シラサカを責め立てた。
「先生、零の容態はどうなんですか?」
見かねた直人が割って入ると、シラサカはほっと胸を撫で下ろした。
「血液検査の結果は異常なし。感染症の兆候はないが、引き続き精査する必要がある。三十八度以上の高熱が今日で四日目、おまけに解離性健忘まで発症しちまった。厄介だよ」
「解離性健忘?」
「記憶喪失のことだよ。解離性健忘の原因が高熱からくるものかはわからない。徐々に現れる場合と突然発症する場合があるからな」
直人の問いかけに答えた後、松田は桜に視線を向けた。
「ところで、このお嬢さんは?」
「彼女は蓮見桜ちゃんといって、零を見つけて俺に連絡をくれたんですよ」
「初めまして、蓮見桜です」
直人に紹介され、桜は立ち上がって名乗った後、頭を下げた。
「蓮見? それって確か……」
「そう、零がいまだにご執心の彼女、蓮見優衣ちゃんの従姉妹ですよ」
「優衣姉のこと、知ってるんですか!?」
シラサカが優衣の名前を口にしたことに、桜は驚いた。
「知ってるよ。俺は君に謝らないといけない。ごめんね、優衣ちゃんを助けてあげられなくて」
「どういうことですか、優衣姉を殺した犯人はまだ見つかってないって!?」
「そうだね。犯人は永遠に謎のままに終わると思うけど、もう罰は受けてるから」
優しかったシラサカの目が鋭く光る。桜の背中がぞくりと震えた。
「一つだけ言えるとすれば、零も俺も優衣ちゃんを殺したわけじゃないことかな」
それが事実だとしても、彼らが優衣の死の真相を知っていることだけは、間違いなさそうだ。
「なるほど、少年をここに連れて来させたのは、そういうわけか」
シラサカの言葉で何かを悟ったらしい松田が、腕組みをして渋い顔つきになった。そこで直人も察したらしく、すぐにシラサカに詰め寄った。
「シラサカさん、あんた、まさか!?」
直人に向かって不敵に微笑んだ後、シラサカは桜に言った。
「桜ちゃん、しばらく零の側にいてあげてくれないかな」
突然の申し出に、桜は戸惑った。
「知りたいでしょ、優衣ちゃんがなぜ殺されたのか。零ならきっと答えてくれるよ」
「桜ちゃん、断っていいから。これ以上君を関わらせては──」
「それとも、こう言った方がいいかな」
直人の言葉を遮り、シラサカはたたみかけてきた。
「君は零に興味を持っている。優衣ちゃんが関係しているからというわけではなく、君個人として」
気持ちを見透かされたと思い、桜は動揺した。シラサカはクスリと笑った後、念押しするようにこう言い放った。
「幸い、邪魔者である君のお父さんもいない。これは、二度とないチャンスだよ」
八年経っても尚、零は優衣を思い続けている。桜を救ったのも、その事があったからだ。
(一生かけて護るよ。それが俺に出来る唯一の償いだと思うから)
そんな償いはいらない。何より私は……
(痛かったよな。俺のせいで、こんな怪我までさせて、本当にごめん)
あなたときちんと話がしたい。
「はい、俺です、俺のせいです。ごめんなさい」
「前々から言ってんだろうが、おまえらは少年を頼りすぎなんだよ!」
診療所の主だという松田は、本当に医者なのかという位の強面で、シラサカを責め立てた。
「先生、零の容態はどうなんですか?」
見かねた直人が割って入ると、シラサカはほっと胸を撫で下ろした。
「血液検査の結果は異常なし。感染症の兆候はないが、引き続き精査する必要がある。三十八度以上の高熱が今日で四日目、おまけに解離性健忘まで発症しちまった。厄介だよ」
「解離性健忘?」
「記憶喪失のことだよ。解離性健忘の原因が高熱からくるものかはわからない。徐々に現れる場合と突然発症する場合があるからな」
直人の問いかけに答えた後、松田は桜に視線を向けた。
「ところで、このお嬢さんは?」
「彼女は蓮見桜ちゃんといって、零を見つけて俺に連絡をくれたんですよ」
「初めまして、蓮見桜です」
直人に紹介され、桜は立ち上がって名乗った後、頭を下げた。
「蓮見? それって確か……」
「そう、零がいまだにご執心の彼女、蓮見優衣ちゃんの従姉妹ですよ」
「優衣姉のこと、知ってるんですか!?」
シラサカが優衣の名前を口にしたことに、桜は驚いた。
「知ってるよ。俺は君に謝らないといけない。ごめんね、優衣ちゃんを助けてあげられなくて」
「どういうことですか、優衣姉を殺した犯人はまだ見つかってないって!?」
「そうだね。犯人は永遠に謎のままに終わると思うけど、もう罰は受けてるから」
優しかったシラサカの目が鋭く光る。桜の背中がぞくりと震えた。
「一つだけ言えるとすれば、零も俺も優衣ちゃんを殺したわけじゃないことかな」
それが事実だとしても、彼らが優衣の死の真相を知っていることだけは、間違いなさそうだ。
「なるほど、少年をここに連れて来させたのは、そういうわけか」
シラサカの言葉で何かを悟ったらしい松田が、腕組みをして渋い顔つきになった。そこで直人も察したらしく、すぐにシラサカに詰め寄った。
「シラサカさん、あんた、まさか!?」
直人に向かって不敵に微笑んだ後、シラサカは桜に言った。
「桜ちゃん、しばらく零の側にいてあげてくれないかな」
突然の申し出に、桜は戸惑った。
「知りたいでしょ、優衣ちゃんがなぜ殺されたのか。零ならきっと答えてくれるよ」
「桜ちゃん、断っていいから。これ以上君を関わらせては──」
「それとも、こう言った方がいいかな」
直人の言葉を遮り、シラサカはたたみかけてきた。
「君は零に興味を持っている。優衣ちゃんが関係しているからというわけではなく、君個人として」
気持ちを見透かされたと思い、桜は動揺した。シラサカはクスリと笑った後、念押しするようにこう言い放った。
「幸い、邪魔者である君のお父さんもいない。これは、二度とないチャンスだよ」
八年経っても尚、零は優衣を思い続けている。桜を救ったのも、その事があったからだ。
(一生かけて護るよ。それが俺に出来る唯一の償いだと思うから)
そんな償いはいらない。何より私は……
(痛かったよな。俺のせいで、こんな怪我までさせて、本当にごめん)
あなたときちんと話がしたい。
0
あなたにおすすめの小説
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
マチ恋 ―君に捧げるLove song― 一夜の相手はスーパースター。誰にも言えない秘密の恋。【完結】
remo
恋愛
あなたにとっては遊びでも、私にとっては、…奇跡の夜だった。
地味で平凡で取り柄のない私に起きた一夜のキセキ。
水村ゆい、23歳、シングルマザー。
誰にも言えないけど、愛息子の父親は、
今人気絶頂バンドのボーカルなんです。
初めての恋。奇跡の恋。離れ離れの恋。不倫の恋。一途な恋。最後の恋。
待っている…
人生で、一度だけの恋。
【完結】ありがとうございました‼︎
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
記憶喪失の婚約者は私を侍女だと思ってる
きまま
恋愛
王家に仕える名門ラングフォード家の令嬢セレナは王太子サフィルと婚約を結んだばかりだった。
穏やかで優しい彼との未来を疑いもしなかった。
——あの日までは。
突如として王都を揺るがした
「王太子サフィル、重傷」の報せ。
駆けつけた医務室でセレナを待っていたのは、彼女を“知らない”婚約者の姿だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる