追憶のquiet

makikasuga

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SystemREI

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「ちょろいな。すぐ乗ってきやがったぜ」
 同じ頃、レイもその掲示板を見ていた。停電を起こした際、一時的にネットワークを乗っ取って、レイとマキの画像が残されている端末を探し当て、そこからJTRの個人情報を引き抜いた。サブ端末からネットワークに入ってくることを想定し、事前に掲示板を乗っ取り、他人になりすましてレイが書き込みをした。その掲示板はJTR以外にはアクセス不能となっているのである。
「何をどうやったかわからんが、これっておまえの情報も流してんじゃねえの? 大丈夫かよ」
 車を停め、一部始終を見守っていたシラサカが言った。
「システムレイは正体不明。JTRが何を言おうと、誰も知らないんだからどうとでもなる」
「おまえを引っ張り出すために、捜一の刑事を使って揺さぶってくるんじゃねえの」
「だろうな。ナオから装備一式を奪ってくれて、正解だったよ」
 そう言うと、レイは通信装置を耳にセットし、ノートパソコンを操作した。まもなく画面に、警察の制服をきた男が写り込む。髪は黒いが、目つきは鋭く、貫禄のある顔つきが生きてきた年数を感じさせた。

「ご協力感謝しますよ、草薙警視総監」
『そろそろ解除してくれないかな。マスコミを抑え込むにも限界がある』
 レイは事前に草薙と連絡を取っていたらしい。まさかの事態にシラサカも唖然とするしかなかった。
「ゼロの指揮官だったあなたなら、どうとでも出来るでしょう。蓮見隼人と接触しました。全てあなたの読み通りです」
『そうか。暴走する前にあいつを止めてくれないか?』
「オプション追加ですか、高くつきますよ」
『金ならどうとでもなる。やはり桜井は無理なのか、君はハナムラのナンバー3だろう』
「俺に死ねと言っているようなものですよ。ボスの命令は絶対ですからね」
『そうか』
「そこまで大事な部下なら、なぜ我々に差し出したのです?」
『私と違って、ゆるがないからだよ』

(有りもしない正義という名の鎧を身に纏って、自分に酔っているだけだぜ、刑事さん)
(だとしても、人の命の刻限を決めるのが、おまえ達じゃないことだけは確かだ)

 この世界に正義などというものは存在しない。身を持ってわかっているはずなのに、桜井は尚、追いかけ続ける。死ぬまで、いや、死んでも変わらないだろう。
「直接ボスに言ってください。俺にそんな権限はありませんよ」
『だったら、花村を動かす方法を教えてくれ』
「そういうことは俺じゃなく、ナンバー2に聞いた方がいいと思いますけど」
 ふたりのやり取りを見守っていたシラサカは、突然のことに慌てた。
「おい、俺まで巻き込むなよ!?」
「ボスのことを一番知ってんのはおまえだろ」
「俺が頼んで折れる人じゃねえことぐらい、わかってんだろ。そういうことは、せめてヤスオカさんに……!?」
 はっとして口を噤むシラサカ。レイは不敵に笑った後、画面の向こうの草薙にこう語りかけた。
「これもオプションに追加しておきますから」
『とても有益な情報だった、感謝するよ』
「それでは、明朝に例のものを」
『いいだろう。直接届けさせる。指定通り、口の固い人物にね』
 通信を切った瞬間、画面からSystemREIの文字が消えた。
「おいおい、警視総監と取引なんかして大丈夫なのかよ」
「正当な取引だから、何の問題もない」
「けど、ボスにバレたら」
「調べてみてわかったんだがな、草薙とボスは学生時代からの知り合いだった。草薙は代々続く警察官僚の家系で、ボスとは真逆の立場にいた。表向きは素知らぬ顔で通しているが、警察との裏取引は全て草薙絡みだ。ボスに負けず劣らずの喰えねえ相手だよ」
「そういうことなら、ヤスオカさんのことも知ってるっぽいな」
「ヤッサンに頼んだところで、ボスが折れるとは思わねえ。ナオが助かる道は、万に一つの奇跡でも起きない限り無理だ。それよりも、あいつを片づけるのが先だろ」
 桜井のことを気にする前に、レイにはやらなければならないことがある。
「俺を楽しませろよ、JTR。でないと、面白くもなんともねえぞ」
 ノートパソコンの画面には、メガネをかけた澄ました顔で笑う若い男の顔が映し出されていた。
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