追憶のquiet

makikasuga

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運命は誰に微笑んだのか

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(システムレイ、俺のAIが今のコールさ!)

 コールがシステムレイ、しかも人工知能だと? そんなはずはない!

 真偽を確かめたいのに、捜査一課の刑事が邪魔しにきた。こんなときのためにと桜を盾にしたが、それでも怯まなかった。

(武器は人を助けるために持つもの。少なくとも俺は、そう思っている)

 刑事は必ず桜を庇う、だから彼女を撃てば当たる。予想は的中した。刑事と一緒にやってきたハナムラの人間が反撃するかと思ったが、意外なことに撃って来なかった。

 システムレイ、この俺が叩き潰してやる。

 こうして別室に置いたノートパソコンと向き合い、システムレイとコンタクトを取るべく様々な方法を試しているが、どういうわけか一向にたどり着けないでいる。
「なぜだ、なぜ、システムレイにたどり着けない? この俺が、人工知能なんかに負けるはずがないのに!」
「おまえには無理だよ」
 冷静な声と共に、後頭部に鉄の塊を押しつけられた。
「システムレイは、コールの全権を託すために作ったプログラムだ。七年間、アップデートはしていない」
「これが七年前のシステムだと!?」
 そう叫んで立ち上がり、振り向こうとすれば、更に強く押しつけられた。
「あんまり動くなよ。お許しが出てないのに、撃っちまうじゃねえか」
 青い目の男がひょいと顔を覗かせる。おそらくこの男が自分に凶器を向けているのだろう。
「そうさ、七年前の古いシステムで十分だった。俺がコールだってことがバレると面倒だから、標的がハナムラだろうが、コールは仲介する。ウチの連中を倒せる奴なんていないのがわかっていても」
 そこでようやく気づいた。ハナムラのボスは死んでいない。コールが仲介した人材は息絶えてしまっているということに。
「イソダショウ。おまえは俺に勝てない。その証拠に、システムレイを攻略出来ていないんだろ?」

 こんなことは有り得ない、この俺が負けるなんて。

「違う、違う、違う!」

 まだだ、まだ終わってない。俺は世界を操れる。現代に切り裂きジャックを蘇らせた。

「おまえが接触してくれたおかげで、データは全てコピーさせてもらった。削除した防犯カメラの映像も復元して警視庁に送っておいた。一番の証拠はコレだな」
 レイがポケットからスマートフォンを取り出して操作すると、どういうわけかパソコンが勝手に動き出した。そして、ある映像を再生した。

『……何のことだ、知らない、俺は人殺しなんかしてない!?』
 それは五人目の被害者であり、兄ジュンジの死の間際の映像だった。殺したのは六人目の被害者のサクラダマリである。
『何を言っても無駄よ。わかってるんだから、あなたがモリアーティだってこと』
『モリアーティってなんだよ、人殺しって、そんなの知らな──』

 映像はそこで止まった。
「四人目の被害者ヤマトコウセイを殺したのはおまえだろ。その罪を無関係の兄になすりつけた。たった一人の肉親が、そんなに憎かったのかよ」
 この後、兄はサクラダマリに殺される。四人目の被害者ヤマトコウセイを殺害した犯人として裁かれたのだ、自分の代わりに。
「そうだ、兄だからこそ憎かった。唯一の理解者だと信じていたからな!?」
 同級生を殴ったのは、大好きだった兄を侮辱されたから。それをわかってもらえなかったことが、どうしても許せなかったのだ。
「血縁だからこそ、思うところはあるよな」
 青い目の男が、突然同調するような言葉をかけてきた。
「だからって殺していいってわけじゃない。無関係の上に自分の代わりにするなんてさ」
 全て言い終わらないうちに、左肩を撃ち抜かれた。衝撃と痛みでその場に倒れ込む。
「おい、誰が撃っていいって言った?」
「悪い悪い、つい手が滑っちまった。さてご主人様、自白も済んだことだし、これからどうする?」
「決まってんだろ。ハナムラに反旗を翻す者には罰を与える」
「なんだ、コールとしてじゃねえのかよ。キャラがブレてんぞ」
「キャラなんかどうでもいい」
「せっかくご主人様呼びしてやってんだからさ、最後までコールを貫けよ」
 自分が血を流して苦しんでいるというのに、彼らは呑気そうだった。
「コールはあくまでも仲介役だろ。こいつをバラすなら、依頼者がいないと成立しない」
「だったら、俺が依頼者になるわ」
「なら、後で金を振り込めよ。コールの案件にしたいなら、きちんと筋を通さねえとな」
 金の話になった途端、青い目の男は考え込んだ。
「わかった。振り込む」
 青い目の男が出した結論に、レイは面食らったようだった。
「自腹切ってまでやりたいのかよ」
「ここまできたらさ、ご主人様ごっこ、最後までやり通したいんだよね」
「勝手にしろ」
 青い目の男は見るからに楽しそうで、人を殺すことに躊躇いはなさそうだった。そのときになって、初めて恐怖を感じた。
「やめろ、来るな!?」
 全身が震えた。撃たれた痛みなんて吹き飛ぶくらいの恐ろしさだった。
「え、震えてんの? さっきまで平気そうだったのになんで?」
 青い目の男が自分の前に立ちはだかり、顔を近づけてきた。
「ふーん、怖くなったんだ」

 こんなときでも笑ってやがる。どういう神経してるんだ。

「優しくしてるのに、なんでかな?」

 こいつは死神だ、本物の死神なんだ!?

「誰を敵に回したのか、今になって気づいたんだろ。だが遅い、遅すぎるんだよ」
 レイが腕組みをして、自分を見下ろすように笑い、最後の審判を下した。
「やれ、シラサカ」
「了解、ご主人様。じゃあね、ジャック・ザ・リッパー君」

 嫌だ、死にたくない、俺が、この俺がこんなところで死ぬなんて、有り得な──。

 最期に見えたのは、暗闇の底なし沼へと飲み込まれた自分だった。
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