82 / 114
遺書
しおりを挟む遺書を書けと言われて、はい書きます、というほど、わたくしは素直な性格ではありませんわ。なので、これは戦いが終わった後に書いていることでしょう。
あの一ノ瀬真昼様が柊シノアを連れて、深刻な表情で告げたことが始まりだった。
「みんな遺書を書いて。何か一つでも自分が生きた証を残したければ少しだけ残して、あとは整理して」
それを聞いてまず思ったのは困惑。何故そんな必要があるのか、それが必要となる事態が起きるのであろうことはすぐにわかりました。けれど理由がわかりません。
昔通りなら、クレスト経由で情報が伝わって来たはずだが、結梨をめぐる中で、わたくしは父に絶縁を言い渡しました。
人造衛士なんて悍ましいものを作るなんて、お父様は間違っていると思ったからでした。そしてその保護をせず実験に使うなんて生命を冒涜しているとしか思えなかったからですわ。
結局、特型デストロイヤーの出現によって有耶無耶になってしまいましたが、結梨は死亡したと伝えられました。当然、信じるしかありませんでした。あの腕を見せれれば、誰でも。
しかしそこから事態は加速度的に変化していったと思います。量産型衛士や衛士爆弾、新型アーマードコアなど多くの新兵器が生み出されていきました。
第一次東京防衛戦にて、戦線を突破したデストロイヤーが民間人を多数殺害したのを聞いて、わたくしは目が眩むような思いをしました。他の皆さんも同じような気持ちだったと思います。
更に、量産型衛士というものが拍車をかけました。量産型にはまずプロトタイプが必要なはずです。そしてそのプロトタイプは私たち共に過ごした結梨なのだと理解しました。
この考えは、暗黙の了解となっていました。あの量産型衛士が真昼様のシスターだというのは。それに非人道的とされるB型兵装の特効やアンチデストロイヤーウェポン、爆弾として活用するなどそれは言葉にできないものでした。それをしても死者を出し、負けたのはわたくしたちなのです。
誰かを非難できる気力はありませんでしたわ。いや、非難することさえできないほど打ちのめされていたのです。己の無力さに。
あれほどなりふり構わず戦力を投入した結果が、民間人の大量死衛士の死亡者数、破壊された大地。灰色の空は絶望の色をしていました。
だから、というべきでしょうか? わたくしたちは真昼様に従うことにしたのです。どんな正論も、論理も、倫理も、純粋な暴力には敵わない。
暴力には、それを上回る暴力を。
真昼様は暗躍されるようになって、わたくしたちは極めて普通に過ごしました。周りから怪しまれないように、普通に。
ですが頼られない不甲斐なさと、嫌悪感が同時に存在していたのも事実です。
真昼様のやっていることは善ではないけど戦術価値のある行為です。ですが、お父様から教えられた人としての正しくありたい心が彼の方を否定するのです。
シノア様、そして愛花さんもまた、真昼様についたと仰っていました。わたくしたちは手段を選んでいるほど余裕がないかもしれない。もっと被害を抑える方法があったのかもしれない。そんなもしもが頭から離れない。
わたくしたちは正しく、胸を誇れる存在であるべきだと思います。思いますが、現実は厳しい。その暗部を一人で背負われている。お父様も、わたくしのために闇に手を染めたとわかってはいるのです。
みんな、好きでやっているんじゃないとわかっているのです。誰もが平和を望んでいる。だけどそれを現実は許してくれない。だから平和に近づける最善策を最短で成し遂げようと努力してある誇るべきお方なのは理解しているのです。
それは葉風さんも同意見でした。愛花さんは若干暴走気味ではありましたが、遺恨を晴らす、復讐というのは衛士としてありふれた話であり、咎める理由にはなりません。
真昼様、そしてシノアさん。
わたくしは、どうしてもそちら側へ行くことができません。勇気がありません。臆病者です。だけど、もし、私がそっちに行ってしまったら、誰が貴方達を引き戻すというのでしょう。
今は戦いの時かもしれない。だから許されているのかもしれない。だけど、未来で必ず貴方は裁かれます。無能な人間によって裁かれる。
そんな未来は、望みません。だから、わたくしの戦場はここではないのでしょう。衛士として戦うのではなく、真昼様やお父様が胸を張って生きられる人生に整えることが、私の考える戦いです。
これを読んでいる貴方は笑いますか?
貴方は真昼様の意見に賛成ですか? 否定的ですか? 嫌悪感を抱きますか? 常識を守るべきだと思いますか?
それを命懸けで成している理由が、わたくし達を守るためであっても、お前は間違っている、と言えますか?
葉風さんなら、言うのでしょう。あのお方は変にネガティブが強いですから、危機感から連れ戻そうというのでしょう。
わたくしは、真昼様達を放置する選択をします。そして、彼の方達が戻って来れるタイミングを作ることをベストだと考えています。
それが、わたくしの戦い。
わたくしの戦いです。
お父様、軽蔑しているなんて言ってごめんなさい。
真昼様、冷たい態度をとってごめんなさい。
シノア様、真昼様を悪くいってごめんなさい。
だけど、わたくしがやらないと、ヴァルキリーズはバラバラになってしまう。せっかく誰かを救うレギオンなのに、内輪揉めで解散なんて無様は晒せないでしょう?
全く、誰もが、目的は一つなのに悪ぶって、ほんと呆れますわ。でも、正義ではないことを自覚しているところは好感が持てる、といったところですか。
善でもない、誇りもない、正義もない、だけど、それでも成さなければならないことをやっている。正直、眩し過ぎます。どうしたらあんな人が生まれるんでしょう?
ラプラスの力? 幾たびの戦場を渡り歩いてきた経験?
そんなチャチなものではない。あれは、人の意思だ。負けるもんか! っていうそこが抜けるほど諦めの悪さ。醜い。みっともない。哀れ。そう憐憫の感情を向ける者も必ずいる。
だとしても。
私がやらなきゃ誰がやるんだ!! と叫び続けている。行動で。結果で。選択で。夕立時雨様への愛もかなりあるとは思いますが。
そこはご愛嬌ですわ。格好良い真昼様の、可愛いところです。
さて、作戦が始まりましたわね。スプリットの討伐。上手くいくでしょうか。それぞれ司令塔を分割して配置していることからして、分断されるのは予想済み。
あとは衛士とデストロイヤーどっちが根を上げるかの勝負といきましょう。
そういえば言ってませんでしたが、これでもわたくし、負けたことはないんですよ。
不細工なデストロイヤーさん。
エスコートのお相手には不似合いですが、弾丸を当てる的にはちょうど良いですわね。
イェーガーの新技術、特と見させてもらいましょう!
え? 味方を誤射し、錯乱状態で手がつけられず、新型バトルクロスが変貌して暴走した?
更にイェーガーは内戦状態に陥り、戦闘どころではない。戦線は瓦解してコピリコ女学院が地下に取り残されている?
部隊の撤退と再編成で現時点で動けるのはわたくしと金色一葉さんしかいない?
「ごほっ、おえっ」
血反吐を吐かれているのですがこの方。
「必ず取り戻す。何があっても、私の選んだ仲間に間違いはない」
あっ、知ってますわこれ。
真昼様と同じパターン。むし真昼様より恐ろしい王道と正道を真っ直ぐひたすらに歩いていくやべーやつな感じですわ!?
そう、いうなれば、
「まだだッ!!」
光の亡者ってやつですわ
「まだ私は倒れていないッ!!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる