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12:過去ー即位
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オートゥイユ夫人が無事に出産をするのと同時に国王が死去した。
慶事と弔事が重なり、宮中は慌ただしかった。
当然優先されるのは国王の葬儀であり、オートゥイユ夫人とその子どもは軽視された。それどころか子どもは国王の生命を吸って産まれた悪魔の子だと言われた。
国葬が行われ、アルフレッドが即位した。それにともないクラウディアは王妃となった。
翌年には吉日を選び戴冠式が行われた。
「陛下、心よりお祝い申し上げます」
対になる王冠を頭にのせてクラウディアは祝辞を述べた。
「母上には療養という名目で王宮から出てもらう。君に管理をまかせるから好きにしてくれてかまわない」
アルフレッドは暗にオートゥイユ夫人を追い出したければ追い出してかまわないし、クロードの養育に関わりたければ関わればいいと言った。
だがクラウディアの返答は思いもしないものであった。
「オートゥイユ夫人が産んだ子にはまだ名前がありませんね。名付けてあげてください」
なぜ王太妃を追い出したのかとか、オートゥイユ夫人を追い出せとかではなく、庶子に名前をつけろといったのだ。。
そうして王妃となったクラウディアの初めての務めによって、忘れ去られたオートゥイユ夫人が産んだ子どもにジャン=テオドールと名付けられた。
「テオドールは陛下にとても似ていますのよ」
名前を与えられ少しの注目がテオドールに集まった頃にオートゥイユ夫人は声高々に言った。
それは彼女の誇張や虚言ではなく紛れもない事実だった。
深いブルネットの髪にすっと通った鼻筋、アンバーの瞳は狼のようである。
既に一歳になっていたテオドールを見て、みなアルフレッドに似ていると、アルフレッドの子どもであると認めた。
「それと違ってクロード王子殿下は……」
テオドールと違いクロードはアルフレッドににていなかった。
まだ一歳と二歳の子どもを比べてあれこれ言うのはおかしいかもしれないが、それほどクロードは似ていなかった。
どちらかといえば女性的な輪郭をしていて、何よりもブロンドにグリーンの瞳はアルフレッドの面影を感じさせなかった。
「もしや陛下の子どもではないのでは」
「王妃陛下が不貞をなさったとでもいうのですか」
「ですが、瞳の色は王妃陛下とも違うのですよ」
クロードがアルフレッドの子どもではないなど邪推でしかなかった。
緑色の瞳など、歴代の国王の中にもいるし、クラウディアの兄も同じ色の瞳をしている。
それでも好奇の視線に幼い子どもはさらされた。
「なんと馬鹿馬鹿しい話なんでしょう。オートゥイユ夫人が噂を増長させているに違いありませんわ」
リゼットは聞こえてくるゴシップに腹を立てた。
だが、当事者の一人であるクラウディアは気にした素振りも見せなかった。
あまり会わない息子に、一度も見たこともない子ども。その二人が何と言われようとも関心はなかった。
ただ問題があるとしたならば。
「このまま噂を放置しておくと、王妃としての威信の問題になるでしょう。最悪、外交問題になりかねない」
噂の根源を断つか、それとも別の噂でかき消してしまうか。
きっと根源をみつけても流れてしまった噂はもう収集できないだろう。
「陛下に王太子をさだめるように提言しましょう。それにともない、王子には教育を」
「それがよろしいかと。陛下はクロード殿下をとても可愛がっていますもの。その姿を見れば誰だって馬鹿馬鹿しい噂を信じませんわ」
クラウディアは曖昧に微笑んだ。
アルフレッドは人一倍クロードを愛していた。それは父親としてなのか、クロードが唯一の跡継ぎであるからなのか、それともテオドールという後ろめたさがあるからなのか。
どちらにしてもクラウディア以上にクロードを可愛がっている。
「それと公表もしましょう」
クラウディアは自分の腹部を撫でてそう言った。
そうして不名誉な噂は、国王の王子を溺愛する姿勢と立太子、またクラウディアの懐妊の発表によってかき消された。
国王は王妃親子を丁重に扱い、一方でオートゥイユ夫人親子は忘れ去られていった。
慶事と弔事が重なり、宮中は慌ただしかった。
当然優先されるのは国王の葬儀であり、オートゥイユ夫人とその子どもは軽視された。それどころか子どもは国王の生命を吸って産まれた悪魔の子だと言われた。
国葬が行われ、アルフレッドが即位した。それにともないクラウディアは王妃となった。
翌年には吉日を選び戴冠式が行われた。
「陛下、心よりお祝い申し上げます」
対になる王冠を頭にのせてクラウディアは祝辞を述べた。
「母上には療養という名目で王宮から出てもらう。君に管理をまかせるから好きにしてくれてかまわない」
アルフレッドは暗にオートゥイユ夫人を追い出したければ追い出してかまわないし、クロードの養育に関わりたければ関わればいいと言った。
だがクラウディアの返答は思いもしないものであった。
「オートゥイユ夫人が産んだ子にはまだ名前がありませんね。名付けてあげてください」
なぜ王太妃を追い出したのかとか、オートゥイユ夫人を追い出せとかではなく、庶子に名前をつけろといったのだ。。
そうして王妃となったクラウディアの初めての務めによって、忘れ去られたオートゥイユ夫人が産んだ子どもにジャン=テオドールと名付けられた。
「テオドールは陛下にとても似ていますのよ」
名前を与えられ少しの注目がテオドールに集まった頃にオートゥイユ夫人は声高々に言った。
それは彼女の誇張や虚言ではなく紛れもない事実だった。
深いブルネットの髪にすっと通った鼻筋、アンバーの瞳は狼のようである。
既に一歳になっていたテオドールを見て、みなアルフレッドに似ていると、アルフレッドの子どもであると認めた。
「それと違ってクロード王子殿下は……」
テオドールと違いクロードはアルフレッドににていなかった。
まだ一歳と二歳の子どもを比べてあれこれ言うのはおかしいかもしれないが、それほどクロードは似ていなかった。
どちらかといえば女性的な輪郭をしていて、何よりもブロンドにグリーンの瞳はアルフレッドの面影を感じさせなかった。
「もしや陛下の子どもではないのでは」
「王妃陛下が不貞をなさったとでもいうのですか」
「ですが、瞳の色は王妃陛下とも違うのですよ」
クロードがアルフレッドの子どもではないなど邪推でしかなかった。
緑色の瞳など、歴代の国王の中にもいるし、クラウディアの兄も同じ色の瞳をしている。
それでも好奇の視線に幼い子どもはさらされた。
「なんと馬鹿馬鹿しい話なんでしょう。オートゥイユ夫人が噂を増長させているに違いありませんわ」
リゼットは聞こえてくるゴシップに腹を立てた。
だが、当事者の一人であるクラウディアは気にした素振りも見せなかった。
あまり会わない息子に、一度も見たこともない子ども。その二人が何と言われようとも関心はなかった。
ただ問題があるとしたならば。
「このまま噂を放置しておくと、王妃としての威信の問題になるでしょう。最悪、外交問題になりかねない」
噂の根源を断つか、それとも別の噂でかき消してしまうか。
きっと根源をみつけても流れてしまった噂はもう収集できないだろう。
「陛下に王太子をさだめるように提言しましょう。それにともない、王子には教育を」
「それがよろしいかと。陛下はクロード殿下をとても可愛がっていますもの。その姿を見れば誰だって馬鹿馬鹿しい噂を信じませんわ」
クラウディアは曖昧に微笑んだ。
アルフレッドは人一倍クロードを愛していた。それは父親としてなのか、クロードが唯一の跡継ぎであるからなのか、それともテオドールという後ろめたさがあるからなのか。
どちらにしてもクラウディア以上にクロードを可愛がっている。
「それと公表もしましょう」
クラウディアは自分の腹部を撫でてそう言った。
そうして不名誉な噂は、国王の王子を溺愛する姿勢と立太子、またクラウディアの懐妊の発表によってかき消された。
国王は王妃親子を丁重に扱い、一方でオートゥイユ夫人親子は忘れ去られていった。
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