FLY HIGH

真山マロウ

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衝撃

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「もう大丈夫なんで」

 足をとめることなく言う。とまどうシロの声が、うしろから聞こえてくる。

「待ってよ、悠乃。なにが? なんのこと?」
「恩返しとか夢とか、ほんといいから」

 逃げたい気持ちを反映して速度を早めていると、断りもなく手をつかまれた。

「ぼく、時間がないんだ」

 ひんやりとした体温に驚いたのもあって歩みをとめ、ふり返る。シロは思いつめた瞳で、まっすぐ私を貫いてきた。

「旅にでないといけないんだ。その前に、どうしても悠乃に恩返しがしたくて」

 待ちぶせされていたことよりも遥かに、がつんと衝撃。めまいを起こしそうになりながらも、やっと声を絞りだす。

「……いつ?」
「悠乃の学校が始まる頃かも」

 って、一週間そこらじゃないか!

「延期とか、できたりしないの」
「ぼくの都合で変えられないんだ。決められてたことだから」

 家庭の事情だろうか。だったら口を挟めない。

 どうやって私の家を特定したのか。どこに旅立つのか。シロは何者なのか。恩返しのきっかけはなんなのか。ききたいことを、ひとつも言葉にできないかわりに、

「わかった。少し考えてみる、夢」
「えっ、ほんとに? やった! ありがとう!」

 曇りっぱなしだった眉を晴れわたらせ、シロが「また明日」と手をふる。

 もと来た道を駆けていくのを、茫然と見送る。

 足もとが崩れるような感覚におそわれ、なんでもいい、すがりつきたくてしょうがなかった。





 あくる日のランチタイム。ベンチで落ちあったシロは、屈託のない満面の笑み。

「夢、みつかった?」

 せっかくその話題から離れてたのに、昨日の今日で逆戻り。

(ていうか夢って、そんな簡単にみつかるわけないよね……)

 にもかかわらず反論をさけるのは、残り少ない日を円満に終わらせたいから。

「恩返しって、夢に関することじゃないとダメなの?」

 どうにかして核心から意識をそらせようと試みる。

「そんなことないけど、欲しいものとかは、お金が……」
「そういうのはいいよ。たかる気ないし」
「よかった。ぼく、悠乃の好きなことを応援したい、手伝いたい、そう思ったんだ。だから、悠乃の夢が知りたくて」

 夢、夢、夢――。結局それか。なぜ、そんなにも固執するんだろう。ここまでくると、うんざりを通りこして不思議。

「ていうか、シロの夢は? 参考までに教えてよ」

 ちょっとイジワルだったかな、と心が痛みながらも踏みこむ。

「ぼくの今の夢は、悠乃に恩返しすることだよ」

 わお、思ってた以上に話にならない。
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