FLY HIGH

真山マロウ

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衝撃

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「今の、ってことは前は違ったの?」

 ものはついで、さらに踏みこむ。

「前の夢は、なんて言えばいいいんだろう、ちゃんと大人になることかな?」
「そっか。シロはしっかりしてるね」

 だらだら生きてきた私とは雲泥の差だ。年齢的に成人してても中身はまったく、の代表格だもんな。

「私は、ちゃんと大人になれてないよ……」

 かじりたてのサンドイッチに視線を落とす。あらためて自分の情けなさを実感していると、ホイップクリームみたいなふわふわで甘いシロの声が、すきっ腹にしみこんできた。

「悠乃は、さなぎなんだね」
「さなぎ? 昆虫の?」
「うん。大人になる途中。未来が詰まってるんだよ。宝箱みたいだね」

 毎度ながらのド直球。普段なら恥ずかしくなりながらも浮かれてしまいそうな嬉しいセリフだけど、むしろ今はつらい。

「買いかぶりすぎ。私にはなんにもないよ。未来どころか夢も希望も」

 お先まっくら。ため息まじりに肩をおとすと、すらりとした指先が私の手に重なった。昨日も思ったけど、シロの体温は不安になるほど低い。

「悠乃はこれからも、たくさん笑ったり喜んだりできるよ。楽しいことだって、きっとある。だから……」

 一呼吸おいて、淡い虹彩が間近に迫る。

「だから悠乃は、悠乃の未来をなくそうとしないで」

 なんの根拠もない綺麗ごとを、と一蹴したい気持ちと、こんな私にでも寄りそってくれることへの感謝がごちゃまぜになって、鼻の奥がジーンと熱くなった。

 気をぬくと泣きだしてしまいそうなのを必死にこらえ、サンドイッチを噛みしめる。シロが「あ!」と小さく手を鳴らした。

「そうだ、知ってる? さなぎの中って、いくつかの器官以外はバラバラのドロドロなんだよ」

 ぶほっと咳こみ、涙が引っこんだ。なんという予想外の流れ。

「食事中に、そういう話はちょっと……」
「そうなの? ごめんね」

 シロはちょっとズレてるところがある。けど、それが妙に心地いい。こんな時間がもうじき終わるなんて信じられない。――信じたくない。





「なんかあった?」

 休憩後、仕事に戻ると声をかけられた。三つ年上の野木のぎさん。丁寧に教えてくれながらも一定の距離を保ってくれる。打たれ弱く、がっつり人と関わるのが得意じゃない私にとって、最高の教育係だ。

 そんな人がつい話しかけてしまったほど、私の「眉間のしわが凄かった」らしい。

「仕事きつい?」

 心配してくれてるのが見てとれる。うやむやに返したら、もっと気をつかわれそうだ。
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