FLY HIGH

真山マロウ

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過去

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 翌日。シロと会える最後だっていうのに、私の人相は激変していた。

「花田さん……だよね?」

 当惑気味に店長さんがたずねる。大泣きに泣きまくって眠ったせいでパンパンに目がむくみ、コンタクトを装着できず家用のメガネで出勤したのだ。

「まだ調子悪いなら今日も休んでいいよ」
「大丈夫です、ありがとうございます」
「そう? まあ、無理しなくていいから。しんどくなったら帰りなね」

 ここで帰ったらシロと会えないし、健康体なのに連日早退するのも気がとがめる。昨日のミスも挽回したい。と普段以上に集中していたら、わりとすぐに休憩時間。

 いつものベンチに座っていると、どこからともなくシロがやってきた。けど、私を見るなり、

「悠乃だよね?」
「そうだよ。メガネかけてるから見慣れないかもだけど」
「それもだけど、目が変だよ。大丈夫?」
「うん、平気」

 みんな遠慮して触れずにいたけど、シロは臆することなくイジってくる。そういうところがらしく・・・て、こんなやりとりも今日までかと思うと、なごり惜しい。

「あのね」

 口火を切る。シロのほうを見る勇気まではなくても。

「いろいろ考えてみんだけど、やっぱり私……」

 喉の奥が熱くなって言葉がでない。ゆうべから涙腺ゆるみっぱなし。頬をつたう雫がとめどない。

「どうしたの悠乃、どこか痛いの?」
「やっぱり私、夢なかった。ダメだった。ごめん……」

 嗚咽まじりに答える。そっと、私の手にシロのが重なる。

「ぼくこそ、ごめんね。悠乃のためにと思ってたけど、こんなに追いつめてたんだね」

 あいた手で涙を拭う。見ると、シロまで泣きそうな顔をしていた。ああ、やだな。こんなお別れにしたくなかったから、いっぱい悩んだのに。

 あいかわらずシロの手は冷たいけれど、ひんやり心地よくて……離れてほしくない。

「シロ、恩返し、お願いしたい」

 思いあまって、切り札をきる。

「明日、また会いたい」

 って、どうせ断られるつもりで無理難題をふっかけたのに、

「うん、いいよ」

 あっさり承諾され、高ぶっていた感情がストップ。

「えっ、会えるの? 出発する日だよね?」
「その前に会おうよ」
「そういうとこは融通きくんだ?」
「うん。それに、ぼく最初からそのつもりだったよ。だから恩返しとは別で会おうよ」

 嬉しさと驚きと拍子抜けがブレンドされた、複雑な気持ち。

 とはいえ、猶予は与えられた。文字どおり最後のチャンス。なんとしても明日こそは、明るく楽しい雰囲気で送りださないと……!
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