俺の幼馴染みが悪役令嬢なはずないんだが

ムギ。

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前編

これが寝起きドッキリってやつか(主人公視点)

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  翌朝。
  熱が下がってスッキリした俺は、クリフが起こしに来てくれる前に目が覚めてしまった。
  まだ朝日が昇り始めたばかりなのか、カーテンの隙間から薄く光が差し込んできていた。
  クリフが来てくれるまで二度寝しようかと、何の気なしに首を巡らせた。

「!!」

  ビビった。
  薄明かりの中で人の顔があったからガチでびびった。
  その顔が父さんじゃなきゃ叫んでた。ガチで。

「…………」

  父さんは、椅子に腰かけベッドの端に肘をついた格好で眠ってた。
  いつの間に来てくれたんだろ………。
  父さんの疲れの見える寝顔に、前世の自分が少しだけ重なった気がした。

「父さん………」

  ぽつり、つぶやいた俺の声にも反応しない。よほど疲れてるんだろう、ちゃんと横になって寝た方がいいよ……父さん。
  俺はせめてもと、かけたままの眼鏡をはずしてあげた。あれ、以外と軽い。

  カチャ……。

  学院でクラスの奴が一人メガネだったけど、フレームは太いしレンズは水晶だし、現代日本を知っている俺としては重かった。よくあんな重いのを一日中かけてられるよなってレベル。
  それに比べて父さんの眼鏡軽ッ!なにこれチタンフレームかなんか?レンズもプラスチックレンズとか ?ってもこの世界にはプラスチックもチタンもないんだけどさー。
  と、ここぞとばかりにじろじろと父さんの眼鏡を観察する。
  だって父さんてホントに四六時中眼鏡かけっぱなしだから、こんな機会でもないと父さんの眼鏡なんて触れないし。

「………………?」

  あれ、よく見るとツルの内側になんか模様みたいのが彫ってある。薄暗くてよく見えないなー。
  あ、やべ。ホントに遠慮なくじろじろ眺めてたら、父さんが起きてしまった。

「ぅ…………ん?」
「お、おはよう父さん………」

  薄明かりのなか、目を開けた父さんの瞳は『赤』かった。
  ……………あれ?
  父さんて瞳は茶色……… 

「…………………ん?………」

  父さんは、俺が弄んでいた眼鏡を見て固まった。心なしか青ざめてる気がする。
  いやー、それにしても綺麗な赤だなー、宝石みたいだ。

「ッ!!!」

  ガバッ! 

「わっ!?」

  び、びっくりした。
  父さん固まってたと思ったら急に動くんだもん。
  あ、眼鏡かけた。
  あれ??茶色くなった??

「…………ヴィクトール……」
「父さん……?」
「今……見たものは口外してはいけないよ」
「どうして……」
「それは……」

  コンコン

  そこへ、扉が叩かれ、クリフが入ってきて父さんは口をつぐんでしまった。

「おはようございます………、これはコール筆頭公爵様……いつおいでに……」

  着替えを持って静かに入ってきたクリフは、父さんに気づいて驚いたようだった。

「んだよ、まだ居たのかバルト」

  クリフに続いて入ってきたトビアス先生がそう言うと、父さんは静かに椅子から立ち上がった。

「………長居をしてしまったね、そろそろやしきに戻るよ」
「父さんっ」
「おう、帰れ帰れ、帰って寝ろ」

  父さんは椅子に掛けてあった上着を羽織ると、俺の方を見ずに帰っていってしまった。

「父さん………」

  パタン……

  あの綺麗な赤が、俺の脳裏にこびりついて離れなかった。血の赤色と夕焼けの茜色を混ぜたような、不思議な赤。なんであんなに綺麗な目を隠してるんだろう。
  つか、あの眼鏡なにあれ、隠しレアアイテム?かけたら瞳の色変わるとか。

「ヴィル。おい」
「ッ!」
「どうした、寝ぼけてんのか」
「あ、いえ、大丈夫です」
「ヴィクトール様。お召しかえを」

  ぼけっとしてたらクリフが体を起こしてくれ、寝間着を脱がせてくれると、先生がてきぱきと包帯を交換してくれた。

「先生」
「あ?」
「瞳が赤いのは、何か良くないことなんでしょうか」

  その手際を見ながら、俺は思わずそう聞いていた。
  あくまで何の気なしに聞いたのだが、先生はピタリと手を止めて、顔をしかめた。

「赤い瞳………だと?」
「あ、あの。夢に出てきたんですよ、赤い瞳の人が」

  その反応に思わず、俺はそんな苦しい言い訳を吐いた。先生の顔が、明らかにいいことではないことを物語っていたからだ。

「夢ぇ?なんでそんな夢みたんだ?」
「さ、さあ………。なんか悪い予兆ですかね」
「さあな、少なくともあんまりいい夢じゃねぇな」

  先生は止まっていた手を再び動かし始めた。

「いたたた!」
「我慢しろ」

  肩は相変わらず痛いけど、手早く処置を終えてくれたおかげか昨日ほどは痛まなかった。

「………よし。さっさと着替えろ」
「失礼します。ヴィクトール様」

  俺は部屋着に着替えながら、おそるおそる先生に再び聞いた。

「先生、赤い瞳はなにが悪いことなんですか」
「あん?知らねぇのか、まあ……、お前の歳じゃ知らなくても仕方ねえか」
「?」

  先生は薬や包帯を片付けながら話してくれた。
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