俺の幼馴染みが悪役令嬢なはずないんだが

ムギ。

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前編

剣はあっても魔法はない!(主人公視点)

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「俺はツァイス領、ギーセンってとこの生まれでな。ツァイス公爵直轄の研究所があるもんで、魔法マギア研究が盛んなんだが……」
魔法マギア研究……ですか」

  実は魔法マギアは、俺が知る限り人族じんぞくの間では廃れた技術とされている。
  なんでも、魔法マギア体内魔力オドがないと使えないらしく、二千年前の人魔大戦で当時の三分の一にまで数を減らした人族じんぞくは、体内魔力オドも極端に減り、やがて使えない『魔法マギア』に頼った魔法マギア文明から、自然魔力マナの結晶『魔昌石』を動力源とする魔導文明に移行していき、現代の魔導具による生活になった。
  と、学院の人族史の講義で習ったっけ。

  あー。
  転生したら剣と魔法の世界だった、が密かな夢だったのになー。
  俺が生まれた頃には当然魔法マギアのマの字もなかった訳で。
  逆恨みとばかりに剣の方をめっちゃ頑張ったね。

「……魔法マギア研究において赤い瞳をもつ人族は端的に言えば研究資料・・・・だ。理屈は解明されてねぇが、人族じんぞく体内魔力オドが高いと瞳や髪が赤みを帯びる傾向があるらしい………が、俺に言わせりゃ魔法が必要とされなくなった今、体内魔力オドの高い人族なんざ歩く災厄、バケモンだ」
「それで、赤い瞳は、なぜ良くないものとされてるんですか」
「………やっぱ王都じゃすっかり忘れられてんだな」

  気がつくと、すっかり日が昇ったのか、カーテンが開けられた窓からは嫌みなほど晴れ渡った空が見えていた。
クリフもいつの間にか居なくなっていた。
  先生は片付けを終えて、窓がわの椅子に座りなおすと、ため息をついた。

「まだ四十年くれぇしか経ってねぇんだがなァ……」

  そう言って先生が話してくれたのは、四十年くらい前にギーセンで赤い瞳の人族が研究所から逃げ出して魔法マギアを暴発させ、街が半壊したという実際にあった話だ。
  ド忘れしてたけど、人族史の教科書にあったよその事件。

「俺の親父は魔法マギア研究所の研究員でな、その人族を赤い瞳の研究資料として連れてきた張本人だった。当初は、瞳が赤かろうが人族が人族を研究資料とすることに少なからず批判が集まってたが、この事件をきっかけに赤い瞳は人族ではない、バケモノだ、という見方がされるようになった」

  だから、赤い瞳は忌み嫌われ、不吉の象徴なのだと。
  それで父さんは口外するなって言ったのか……。

「まあ、あれからというもの、赤い瞳や髪の人族は現れてねぇらしいが。ヴィル坊みたく夢に見るならまだしも、実際に目の前に現れたら全力で逃げるね俺は」

  俺は父さんの赤い瞳は、正直恐いより綺麗だと思ったけど、これは言わないでおこう。

  コンコン
  ガチャッ 

「失礼致します。朝食のご用意が整いました」

  とそこへ、クリフがそう言って顔を出した。
  部屋にテーブルが出されて食事が運ばれてくるのかとおもいきや。

「お、もうそんなに経ってたか、よし、執事、手伝え」
「はい」
「え?」

  先生は椅子から立ち上がると大判の布を取り出した。
  クリフが背中を支えてくれ、先生は布で左腕をくるむ様にして肩から吊るように固定してくれた。

「よっしゃ、これでいいだろ」

  左肩はシッカリ避けて巻いてあるところが流石です。

「ありがとう先生。腕がいうこときかないから固定されてないと歩き回るのも恐かったんだよ」
「腕の傷口が安定したからな、吊っても問題ないだろ。何か違和感があったらすぐ言えよ」
「はい」
「あと、体力が落ちるからなるべく動け。そして食え」

  朝飯いくぞ。と、手を引かれてベッドから出ると、クリフが上着を肩に掛けてくれた。

「いやいや!ちょっと待って下さい先生!」
「んだよ」
「まさか食堂で食べろっていうんですか!?」
「そうだよ。ベルが奥方とティナちゃんと待ってんぞ。な?執事」
「はい、皆様お待ちです」

  ちょっとマジで!?
  言っとくけど俺利き腕使えないからスプーン持つのすらまだ怪しいんだよ!?
  そんな食事マナーが赤ん坊並みの俺がおじさん達と一緒に食事なんて無理だって!
  と、言ったら……。

「はぁ……。なるほどベルが言ってたのはこういうことか……」
「さすがは筆頭公爵家……、食事マナーがなっていないとお食事を共にされないのですか………」
   
  いやいや!
  ウチがどうかっていうより、貴族ならみんなそうでしょ?!
  実際、三歳になるまで母さんとしか食事したことなかったし!

「まあいい。ベルはそんなこと気にしねぇって言ってたから大丈夫だ。むしろ遠慮しねぇでティナちゃんに食わせて貰え」
「それはそれで恥ずかしいんですけど!?」
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