俺の幼馴染みが悪役令嬢なはずないんだが

ムギ。

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前編

酒だつまみだ宴会だ!前編(主人公視点)

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「ヴィルとティナの成人を祝って!乾杯プロースト!!」
「「「乾杯プロースト!!」」」

  成人式を終えたその日の夜、俺達は父さん達に連れられてラルフさんの食堂に来ていた。

「ヴィル!ティナ!今日はおめぇらの成人の祝いだ!とびっきりの酒を出してやる!」
「いいぞー!ラルフ!!」
「二人とも飲め飲めー!」

  東街の一画、いつもは静かな雰囲気のラルフさんの食堂は、溢れんばかりの人が集まり、東街中に響くんじゃないかというくらいの喧騒けんそうに包まれていた。
  それもこれも、俺達二人の成人を祝う為に集まってくれたっていうんだから凄い。

「皆!今日はヴィクトールとティアナの為に集まってくれたこと、感謝する!おおいに飲んで食べてくれ!」
「いいぞーバルト!!」
「ヴィル!ティナ!成人おめでとう!!」
乾杯プロースト!!」
乾杯プロースト!」

  あっちこっちでグラスが鳴り、父さん達はあっという間に人波の中に入っていってしまった。
  樽でスタンバイしてる麦酒ビーアが水の様に消費されていく。

「ヴィル!ティナ!マスター特製の腸詰めヴルスト甘藍漬けザワークラウトだよ!どんどん食べな!」

  エラさんは忙しく動き回り、料理や酒を切らすことなく持ってきてくれる。
  テーブル一杯の料理と、ラルフさん秘蔵の果実酒ヴァイン
  なんだか、前世の飲み会みたいでついつい酒がすすんでしまう。
  が、

「ヴィル。あんまり飲むんじゃねぇよ、傷にひびくだろうが」

  隣で主治医せんせい麦酒ビーアをかっくらいながら監視しているのでいまいち楽しめない。
  先生、それ水じゃなくて麦酒ビーアですよね?
  さっきから何杯飲んでます?ザルですか、いやむしろワク?
  顔色全然変わらなくて恐いんですけど大丈夫ですか。

「ヴィル、ティナ。どうだ食ってっか?」
「ラルフさん!ありがとう!すっげぇうまいよ!」
「美味しいわ!特にこの甘藍漬けザワークラウトが好き!」
「そうかそうか。ほらヴィル、お前の好きな檸檬ツィトローネのパイ」
「ああああ!ありがとうラルフさん!」

  もうラルフさんマジ神!
  俺の中の食の神!

「ははっ、嬉しいねぇ。この店を閉める前にお前達の成人祝いができて良かったよ」
「えっ?」
「むぐ!?」

  俺がパイを頬張った瞬間にラルフさんが感慨深そうにそんなことを呟くから、あやうく喉に詰まらせそうになった。

「お、おいおい!慌てんじゃねぇよしょうがねぇな」
「ゲホゲホ!」
「ヴィルッ!お水!」

  慌てて水で流し込み、ラルフさんにさっきの言葉について問いただす俺。

「え?え?ラルフさん店閉めちゃうの?え?俺の好きな檸檬ツィトローネのパイは?腸詰めヴルストは?甘藍漬けザワークラウトは?巻甘藍ロールキャベツは?馬鈴薯グラタンアウフラウフは?玉葱スープツヴィーベルズッペは?」
「ま、まて!落ち着け!ウチのメニューをまじないみてぇに挙げ連ねんな!王都から移転するだけだ!」

  なあーんだ移転かぁー。
  移転!?

「え?え?どこに?」
「どこって、もちろん、アウクスブルクだ。 やっと店の内装まで出来上がったんでな。来月には引っ越しだ」

  アウクスブルクって、なぁーんだ。ウチの領都じゃん。

「え、じゃあ領都に帰ればラルフさんの脛肉シチューグーラッシュもオランデーズソースがけの馬鈴薯じゃがいもも」
「おう!いつでも来い!たらふく食わせてやる!」
「もう、ヴィルったらホントにラルフさんの料理が好きなのね」

  ラルフさんに、まだまだ色気より食い気か、と頭を撫でられた。
  ラルフさんの料理が美味しすぎるのがいけないと思う。
  それにしても移転しちゃうのかぁ。これはますます領地に帰る許可を貰わないとね!           
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