探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

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第肆話-映画

映画-1

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 2か月後の現在。
 熱海 長四郎あたみ ちょうしろうは探偵として久々の浮気調査を終え、今まさに報告書を書き終えようとしている所であった。
 報告書を書きながらこの浮気調査を振り返る長四郎。
 今回の依頼は、IT企業に勤める30代サラリーマンの浮気調査。
 対象は2人も愛人をこさえており、依頼人の奥さんの話では愛人は1人だけとの事だったので思わぬところで時間を食った。
 しかも、愛人2人とは別日に会うのではなく同じ日に時間をきっちり分けて会うという始末。
 正直言って、凄い男だと思う。
 仮に奥さんではなく、愛人同士で鉢合わせる場合だってあり得るわけだ。
 修羅場になることを恐れず行動ができるのは同じ男として感服できる。
 そうこうして、報告書を書き終えた瞬間、事務所のドアが開く。
「よっ!! 久しぶり!!」
 そう言いながら羅猛 燐らもう りんは事務所に入ると、つかつかと事務所の冷蔵庫まで歩き、中に入っていた2ℓのコーラを取り出す。
「あっ!! あんた、私が買っていたコーラ。勝手に飲んだでしょう!!」
 燐の言う通り長四郎は昨晩、風呂上りに飲んだ。
「俺の家の冷蔵庫にあるから、飲んでもええでしょ」
「はぁ? これ、私が買ってきたコーラだし」
「そうなの? 名前なんか書いてなかったからダメ」
「誰が書いていないだって!!」
 長四郎の机にドンっとコーラのペットボトルを叩きつける。
「バ、バカッ!! そんなことして開けたら、零れるだろ」
「あ、それもそうね。よし、開けよう」
「や、やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
 燐は長四郎の懇願を無視して、ペットボトルのふたを開ける。
 長四郎もあの程度の衝撃だったら、対して吹きこぼれないだろうと高を括っていたのだがその予想は大きく外れた。
 ペットボトルからあふれ出たコーラは、天高く舞い上がり机に零れる。
 その零れたコーラは、ノートパソコンにもかかるとブンっという音と共に画面がブラックアウトする。
「ああっ!!」
 長四郎は情けない声を上げながら、すぐ様、パソコンにかかったコーラを大量のティッシュで吸い上げるが、中に染み込んだコーラまでは取り除けずにいた。
「バックアップ取ってねぇんだぞ!!」
 涙目の長四郎に対して、燐は吞気にペットボトルに残ったコーラをグラスに注ぐ。
「人の話聞いてんのかよ!!!」
「ああ、聞いてる。聞いてる」燐はそう答えながら、コーラを美味そうに飲み干す。
「クソっ!!! いかれやがった!!!! マジで、〇したいっ!!」
 パソコンの電源を押しても反応しないので、悪態をつく長四郎の言葉を燐は聞き逃さなかった。
「あ? 今なんか言った?」
 冷たい視線を長四郎に向けると、長四郎は「いえ、何も言ってません」そう返答した。
「宜しい。そのパソコンのようになるわよ」
 長四郎は余計な出費が増えたと思いつつ、先程まで書いていたデータが吹っ飛んでいないか気が気ではなかった。
「というより、ラモちゃん。今日の来た目的は?」
「それは、もう分かるよ」
 燐が時計を見ると、腹の底から響くバイクのエンジン音が聞こえ事務所の前で止まる。
「あっ、来たみたいよ。依頼人が」
 燐がそう発言してから約2分後、事務所のドアがノックされる。
「いるよぉ~入って、入って」
 燐はここが自分の事務所かのような物言いで客人を呼ぶと、ドアが開くと一人の女子高生が入って来た。
「失礼します。あの熱海探偵事務所ってここで宜しいんでしょうか?」
 不安そうに長四郎に尋ねる女子高生。
「はい、合っていますよ」長四郎はそう答える。
「気にせず、ここ座って」
 燐はそう言って、女子高生を客用のソファーに座らせる。
 依頼人の女子高生が気になって仕方ない長四郎であった。
 何処かで観たことがあるのだ。この女子高生は。
「ねぇ、あんた。何、ジロジロ見てるの。きっしょっ!!!」
 燐はそう言いながら、依頼人に出す珈琲をカップに注いでいる。
「違うわ! あっ!! 思い出した!!!」
 長四郎がいきなり、大声を上げるのでびっくりした燐は運んでいたコーヒーカップを落とす。
「もうっ!! びっくりして落としちゃったじゃん!!!」
「ねぇ、君さ。三玖瑠 里奈みくる りなだよね! ね?」
 長四郎の言う三玖瑠里奈は、売れっ子の若手女優である。
「は、はい。知っているんですか?」
「知ってる。知ってる。ファンです。後で、サイン下さい。
いやぁ、この粗暴で凶悪なラモちゃんの知り合いとは恐れ入った」
「粗暴で凶悪だと? もういっぺん言ってみろゴラァァァァ!!!」
 落としたコーヒーカップの清掃をほっぽりだし、長四郎のこめかみを野原みさえの如くぐりぐりをお見舞いする燐。
「そ、それでご用件は?」
 ぐりぐりされながら里奈に、依頼内容を尋ねる。
「兄の捜索を・・・・・・」
「人探しですか?」
「そうです」里奈はきっぱりと答えた。
「お、おい。放せよ。詳しく聞けないだろう」
「あら、御免あそばせ」
 燐はそこで、ぐりぐり攻撃から長四郎を解放する。
「何時から、行方不明ですか?」
 こめかみを擦りながら長四郎は不明時期を聞き出す。
「1か月前です」
「1か月前・・・・・・警察には?」
「勿論、捜索願は出しました」
「でも、良い結果は得られなかった」
 頷いて返事する里奈。
「すいませんが、お兄さんの詳しい情報をお聞かせください」
「はい。兄は」
「ちょっと、待って!!」
 燐が話を中断させる。
「どうした? ラモちゃん」
「あんたさ、今回の依頼。やけに乗り気じゃない?」
「そうなんですか?」
 里奈は事実確認してくる。
「そ、そんな事ありませんぅぅぅぅぅ」
「ふっ、噓ね」
「何が噓なんだよ!」
「だって、あんた噓に出ている時、顔に出てるもん。鼻の穴が膨れるから」
 里奈は燐が言っていることが本当か、確認した。。
「あ、本当だ」
 里奈のその一言で、咄嗟に鼻を隠す長四郎。
 心の中で母ちゃんにしか見破られなかったのをラモちゃんは、いとも簡単に見抜きやがったと思う。
「で、本当のことを言いなさい」
 指をぽきぽきと鳴らしながら、長四郎の真意を尋ねようとする燐。
「それは可愛い女の子。しかも、女優さんの依頼を受けないのって言うのは・・・・・・」
 鬼の形相をした燐の顔が間近にあった。
「けっして、不純な動機で依頼を受けたわけではありません」
「噓つけぇぇぇぇぇ!!」
 再び、燐のぐりぐりが開始されるのであった。

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