探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

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第玖話-オニ

オニ-13

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 翌日、五人は行動を開始した。
「今日は、どうしたんですか? 平凡さんの事件解決したのでは?」
 並外商事を訪れた長四郎、燐、一川警部に向かってそう質問する川尻。
 風間が自供した事が、すぐさま報道され事件は終幕に差し掛かろうとしていた。
「ええ、それはそうなんですが。実は、ここで不正アクセスの事件が起きたっていうタレコミがあったとですよ」
 一川警部は参りましたといった感じで、返答する。
「そうでしたか。分かりました。どうぞ、こちらへ」
 川尻は三人を応接室へと案内し、場所を移した。
 長四郎達が席に座ると同時に、川尻は話し始めた。
「熱海さん達が訪れた日に、会社のサーバーにハッキングがかけられた事が判明しまして。ハッキングをかけられただけで、重要なファイルには手はつけられてはいなかったので無事に済みましたが」
「では、業務に支障がきたす様なことはなかったって事ですか?」
「はい。そうです」長四郎の質問に川尻は即答する。
「それで御社的には、法的措置を講じるるもりとですか?」
「今、上層部が検討中です。幸い一番大事な顧客データが抜かれていなかったので慎重に検討していると言った感じです」
 自分達の手の内を見せる、その感じに少し違和感を覚える長四郎と一川警部は質問を続ける。
「盗まれたデータは何だったんです?」長四郎の質問に「私もそこまでは報告を受けていないんですよ」と川尻は、はにかみながら答えた。
 その回答を聞き、燐は心の中で胸を撫で降ろした。地牛が川尻の個人データを盗んだ事がバレていないと思ったからであった。
「あのハッキングされたのって、いつですか?」ここで、初めて燐が口を開いた。
 勿論の事だが、燐はこの会社のサーバーにハッキングが行われた日は知っている。
 相手がどこまで知っているかの調査の意味を込めての質問である事を悪しからず。
「羅猛さんが弊社に見学に来た日ですよ」
「ああ、あの日でしたか」燐はぎごちない相槌を打つ。
「ええ、そうですよ」
「この会社って、商社ですよね? 会社見学って何て言うんですかねー」言葉を選んでいると、川尻が「工場見学の方が主流と言いたいのでしょうか?」と長四郎が思っていることをストレートに発言した。
「そうです。そうです。どの様な経緯で変蛇内高校の社会科を引き受けたのでしょうか?」
 あっさりと川尻の言う事を肯定し、長四郎はその経緯について質問する。
「それはですね。社会科見学で商社に来ることはあまりないと思うんです。だからこそ、商社の仕事を知ってもらいたい。高校生になるとある程度、こちらの話にも理解を得られやすいですから」
「確かにその通りですね。どうも、申し訳ないです」長四郎は軽く頭を下げて謝る。
「いえ、謝って貰うようなことは。それに、これを言いだしたのは私の妻なんです」
「奥さんがですか! それは凄かとですね」真っ先に食いついたのは一川警部だった。
「そうなんですよ。刑事さん。大学生から就活で「並外商事の事を以前から知っていていました」と言われてもなんか薄いというか。就活生向けに説明会をしますしね。その事を家で愚痴こぼしていたら、妻が「高校生に説明会をやってみたら?」と言われまして。丁度、妻も変蛇内高校に勤めていましてね。そこから、今回の見学会を」
「良い話ですね」長四郎がそう言うと少し嬉しそうに「はい」と答える川尻。
 そんな中、長四郎が着ているジャケットの内ポケットに入っているスマホがバイブ振動する。サッと取り出し、内容を確認する。
 絢巡査長からのメッセージで、「自動車工場に車を持ち込んだのは、吉良きらという人物」とだけ書かれていた。
 長四郎はすぐにスマホを内ポケットにしまい、川尻に尋ねた。
「あの別の事件の話になってしまうのですが」と前置きし「平凡さんの事件についてお聞きしたい事が」と聞いた。
「何でしょうか?」
「実は、事件直前に平凡さんに吉良という人物が接触していたことが分かりましてね。犯人を追い込む為の証拠を持っているはずなんですよ。何か、知っていたり若しくは平凡さんの同僚の方に聞いて頂けませんでしょうか?」
「はぁ、分かりました、聞いてみます」
 自分から吉良については何も語らないのを長四郎は見逃さなかった。
「川尻さんのお知り合いに吉良という方はいませんか?」少し無理があると思いながら、長四郎は聞く。
「いえ、そのような方は存じ上げないですね」少し語気を強めた口調で川尻は答えた。
「そうですか」長四郎は何かを言いたげな感じを残しながら口を閉ざした。
「あの私からも良いですか?」
「何でしょう?」川尻からの質問に答えようとする一川警部。
「平凡の事件って、犯人が逮捕されて捜査は終了したんじゃないですか?」
「いや、送検までは警察が捜査しますんで、裁判で確実に有罪になる証拠を見つける為の追捜査っちゅう所ですたい」
「そういう事でしたか」納得したのか。川尻はそれ以上の質問をしなかった。
「あの最後にもう一つだけ宜しいでしょうか?」
 長四郎が人差し指を立て質問を請う。
「どうぞ」
「川尻さんは車運転とかなさるんですか?」
「ええ、まぁ。それが何か?」
「深い意味はないですよ。通勤は車ですか?」
「いいえ、電車通勤です。車は休みの日に乗ります」
「お車は外車ですか?」
「国産車です」
 この謎めいた長四郎の質問に、川尻は少しイラつきを覚え始める。
「国産車とは意外と質素ですね。商社の人って高級思想なイメージがありましたから」
「そうですか」素っ気なく返事する川尻を見て、燐はそろそろ退散したほうが良いと思った。
「じゃあ、私達はこれで帰りますんで」そう切り出したのは一川警部であった。
 一川警部もまた燐と同様の事を思い去ることにしたのだ。
「あ、はい。下まで送ります」そう言う川尻に「いえいえ、今日はここで結構ですよ。また、事件についてお聞きする事があるかもしれませんので。その時は宜しくお願い致します」と以前、言った事と同じ事を言い、長四郎はいの一番に部屋を後にした。
 残された二人も『失礼します』と言って長四郎の後を追う形で部屋を出て行った。
 三人を見送った川尻は身体を小刻みに震わせながら、ソファーを蹴り倒すのだった。
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