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第弐拾玖話-行方
行方-19
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身柄を拘束されたイヴ・ウィンガードは、警視庁の取り調べ室に居た。
「じゃ、もう一度お聞きしますね? 何故、女性達を誘拐したんですか?」
取調官の刑事がイヴに質問するが、イヴは何も答えない。
身元確認の質問には答えたのだが事件の動機や犯行については一切の質問に答えない状態が一週間も続いていた。
「はぁ~」取調官は疲れた様子で溜息を吐く。
世間話をしても答えることなく、黙秘を貫いていた。
今、取り調べを行っている取調官はかなりのベテランで多くの犯罪者を落としてきた猛者であるのだが、外国人相手だと何故か調子が狂い上手く行かないのだ。
そんな中、取り調べ室のドアがノックされる。
「はい」記録係の若い刑事が返事しながら、ドアを開ける。
「や、どうも」
佐藤田警部補が顔をぐいっと前に出して若い刑事に挨拶する。
「な、なんですか?」
「いやね、そこの容疑者に話したいって言う人間がいるもんでね」
「はぁ」若い刑事はベテラン取調官を見て伺いを立てると「そうだな。休憩しに行こう」取調官は椅子から立ち上がり若い刑事を連れて部屋を出ていった。
そして、入れ違いで取り調べ室に入ってきたのは長四郎と燐、二人の監視役の明野巡査であった。
「どうも。すっかり女性の恰好ですね」
女性もののスウェットを身につけたイヴの姿を見て長四郎が話し掛けた。
「答えないか・・・・・・仕方ない。これから話す内容は僕の妄想ですので、黙ったままで結構なので聞いてくれませんか?」
イヴは何も答えず、頷きもしない。
「答えなさいよ!」燐が怒りに任せて、机を蹴る。
「ちょっ! ラモちゃん」明野巡査が燐に注意すると、燐は鋭い眼光で明野巡査を睨む。
ずれた机を何食わぬ顔で戻しながら長四郎は、「ごめんなさいね。彼女、気が立っているから」と断りを入れて話し始めた。
「あんたが気になってしょうがないのは、何故、自分に行きついたのか? って言う事だと思うんですけど。どうでしょう?」
イヴにお伺いを立てるが、当然の如く返事は返ってこない。で、燐が怒り始めるので長四郎は目で燐を連れ出すよう明野巡査にお願いした。
「ラモちゃん。レッドカードで退場」明野巡査に羽交い締めされながら、燐は引きずられるようにして取り調べ室から出された。
退出した明野巡査の代わりに遊原巡査が部屋に入ってきたと同時に長四郎は話を再開した。
「ごめんなさいね。では、お聞かせしましょう。貴方は本国アメリカで名前は知れ渡っていても顔までは明かせなかったのに、日本で顔バレしたのか。まず、これは運ですね」
「運?」イヴが口を開いた。
「はい。運です。彼らが貴方に声を掛けなければ事件は解決しなかったと言っても過言ではありません」と言いながら、長四郎は記録を取る遊原巡査をちらっと見て続ける。
「で、公安外事課があなたのことを捜査してまして、名前は割れていたんですよ。で、偶然にも池袋で働いているイヴ・ウィンガードさんと出会えた。で、ここだけだと疑いの目を向ける話にはなりません。それで、疑うきっかけの一つが匂いです」
「匂いですって。犬じゃないんだから」
「そうなんですけどね。でも、あなたから香ってきた匂いが男性用の香水のものに近かったので。あなたの動向を刑事に張り込みさせていたんですよ。当然、そういうのに疎いイヴさんではないのであっさりと刑事を撒いてしまった」
「本当に張り込み居たの?」
「居ましたよぉ~ 誰かは教えないですけど。それでまぁ、調べて行ったらシンジケートが浮かび上がっていってもしかしてその元締めが貴方ではないかと。で、さっきの女子高生を誘拐したのではとね」
すると、パチパチとイヴが拍手した。
「素晴らしい推理ね。でも、彼女を誘拐したのはそう言う理由じゃない」
「でしょうね。トランスジェンダ―の貴方は自分の愛でる相手をバラバラにするのが好みのようですし」
「どうして私がトランスジェンダーだと?」
「それは、池袋でホームレスに声掛けしている時の恰好が男性的というより男性そのものといった感じかつ言動も紳士という言葉が似合うっていう感じだったんで。後、匂いですね。あれが決定打でした」
「そう。それで、あの場所をどうやって見つけたの? 品川ふ頭のあれはバレても不思議はないけど」
「知りたいですか?」
「ええ、知りたいね」
「それは、次回という事で」長四郎はニヤッと笑った。
「じゃ、もう一度お聞きしますね? 何故、女性達を誘拐したんですか?」
取調官の刑事がイヴに質問するが、イヴは何も答えない。
身元確認の質問には答えたのだが事件の動機や犯行については一切の質問に答えない状態が一週間も続いていた。
「はぁ~」取調官は疲れた様子で溜息を吐く。
世間話をしても答えることなく、黙秘を貫いていた。
今、取り調べを行っている取調官はかなりのベテランで多くの犯罪者を落としてきた猛者であるのだが、外国人相手だと何故か調子が狂い上手く行かないのだ。
そんな中、取り調べ室のドアがノックされる。
「はい」記録係の若い刑事が返事しながら、ドアを開ける。
「や、どうも」
佐藤田警部補が顔をぐいっと前に出して若い刑事に挨拶する。
「な、なんですか?」
「いやね、そこの容疑者に話したいって言う人間がいるもんでね」
「はぁ」若い刑事はベテラン取調官を見て伺いを立てると「そうだな。休憩しに行こう」取調官は椅子から立ち上がり若い刑事を連れて部屋を出ていった。
そして、入れ違いで取り調べ室に入ってきたのは長四郎と燐、二人の監視役の明野巡査であった。
「どうも。すっかり女性の恰好ですね」
女性もののスウェットを身につけたイヴの姿を見て長四郎が話し掛けた。
「答えないか・・・・・・仕方ない。これから話す内容は僕の妄想ですので、黙ったままで結構なので聞いてくれませんか?」
イヴは何も答えず、頷きもしない。
「答えなさいよ!」燐が怒りに任せて、机を蹴る。
「ちょっ! ラモちゃん」明野巡査が燐に注意すると、燐は鋭い眼光で明野巡査を睨む。
ずれた机を何食わぬ顔で戻しながら長四郎は、「ごめんなさいね。彼女、気が立っているから」と断りを入れて話し始めた。
「あんたが気になってしょうがないのは、何故、自分に行きついたのか? って言う事だと思うんですけど。どうでしょう?」
イヴにお伺いを立てるが、当然の如く返事は返ってこない。で、燐が怒り始めるので長四郎は目で燐を連れ出すよう明野巡査にお願いした。
「ラモちゃん。レッドカードで退場」明野巡査に羽交い締めされながら、燐は引きずられるようにして取り調べ室から出された。
退出した明野巡査の代わりに遊原巡査が部屋に入ってきたと同時に長四郎は話を再開した。
「ごめんなさいね。では、お聞かせしましょう。貴方は本国アメリカで名前は知れ渡っていても顔までは明かせなかったのに、日本で顔バレしたのか。まず、これは運ですね」
「運?」イヴが口を開いた。
「はい。運です。彼らが貴方に声を掛けなければ事件は解決しなかったと言っても過言ではありません」と言いながら、長四郎は記録を取る遊原巡査をちらっと見て続ける。
「で、公安外事課があなたのことを捜査してまして、名前は割れていたんですよ。で、偶然にも池袋で働いているイヴ・ウィンガードさんと出会えた。で、ここだけだと疑いの目を向ける話にはなりません。それで、疑うきっかけの一つが匂いです」
「匂いですって。犬じゃないんだから」
「そうなんですけどね。でも、あなたから香ってきた匂いが男性用の香水のものに近かったので。あなたの動向を刑事に張り込みさせていたんですよ。当然、そういうのに疎いイヴさんではないのであっさりと刑事を撒いてしまった」
「本当に張り込み居たの?」
「居ましたよぉ~ 誰かは教えないですけど。それでまぁ、調べて行ったらシンジケートが浮かび上がっていってもしかしてその元締めが貴方ではないかと。で、さっきの女子高生を誘拐したのではとね」
すると、パチパチとイヴが拍手した。
「素晴らしい推理ね。でも、彼女を誘拐したのはそう言う理由じゃない」
「でしょうね。トランスジェンダ―の貴方は自分の愛でる相手をバラバラにするのが好みのようですし」
「どうして私がトランスジェンダーだと?」
「それは、池袋でホームレスに声掛けしている時の恰好が男性的というより男性そのものといった感じかつ言動も紳士という言葉が似合うっていう感じだったんで。後、匂いですね。あれが決定打でした」
「そう。それで、あの場所をどうやって見つけたの? 品川ふ頭のあれはバレても不思議はないけど」
「知りたいですか?」
「ええ、知りたいね」
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