探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

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第弐拾玖話-行方

行方-20

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「品川ふ頭はバレても構わないって事は、公安外事課が動いていたのを知っていたって事ですか?」
「ええ、当然」
 長四郎の質問にイヴは笑顔で頷いて答える。
「あ、申し訳ない。なぜ、あの監禁場所が分かったか、ですよね」
「そう」
「銀座のテーラー。あそこが貴方の運営するシンジケートのアジトであることが分かりましてね。ま、そこを上手く使わせてもらいました」
「どう上手く使ったのかしら?」
「あそこのテーラーがアジトであることは、公安外事課も知っていました。そこで、ある作戦を立てました。奇襲作戦です。銀座のアジト、品川ふ頭の同時に奇襲をかけどちらかに居るあなたの部下が三番目のアジトへ向かうそう思いまして」
「それが上手くいった?」
「はい、そうです。運よくテーラーに居た人間が動き出しましてね。そこを追っかけて見つけました。でも、肝心の貴方が姿を現さないと意味がないのでね。少し待ちました」
 すると、長四郎の背後の壁からドンっという音が聞こえた。
 外でこの会話を聞いている燐が怒りに任せて壁を蹴った音だった。
「あ、今のは気にしなくて良いので結構なので」長四郎がそう言うと「気にしろよ!」と壁の向こうに居る燐がすかさずツッコむ。
「で、どこでどうやって連絡を取ったのかは分かりませんが、貴方は仕事を抜け出して晴海ふ頭の倉庫へと向かった。そこまで知ったうえであのタイミングで乗り込んだんですよね」
 長四郎は平然とした顔でイヴに告げた。
「まさか、日本で捕まるとは・・・・・・」
 イヴは髪をかき上げると、顔つきが変わった。
「本当にムカつくぜ」
「そうですか。こっちもいらない仕事を押し付けられて参っていたんでね。少し時間はかかったけど、うるさい助手を救出出来ましたから。ああ、そうそう。二、三お聞きしたいことが」
「どうぞ」今度は男の声色で、イヴは長四郎の質問を許可した。
「トランスジェンダーの方に言うのは大変失礼な質問かもしれませんが、本当の貴方はどちらなんですか?」
「君も分かっていないな。そうやって、物事を片方の局面からしか見ないのは良くないことだ。僕がやっている表の仕事も裏の仕事の時も本当の私だ」
「なんか、すいません。浅はかな人間なもので」長四郎はペコリと頭を下げる。
「良いよ。気にしていない」
「じゃあ、次の質問を。女性を誘拐して貴方はシンジケートを作ろうとした。化粧品メーカーの社員として世界を飛び回り各支部を作ろうと動いていた。そこで、気に入った女性たちを殺害している。誘拐して手元に置くならともかく、何故、殺すんです?」
「なんて言えば良いのかな? 満たされないものでね」
「満たされないか・・・・・・ 何となく分かりました。では、最後にあのじゃじゃ馬娘のどこが良かったんですか?」長四郎は身を乗り出してイヴに尋ねた。
「それはだね」
 イヴは長四郎にだけ聞こえるように耳打ちをした。

「今回はとんでもない目にあった」
 燐は口を窄めて回転椅子と一緒に回る。
「良い薬になったろ。バカ高校生」長四郎はそう言って珈琲を飲む。
「んだとぉ~」
「でも、探偵さんの言う通りだよ。今回、ラモちゃんが誰にも言わないで事件なんか追うから誘拐されたんだからね」と明野巡査が燐を窘める。
「泉ちゃん。そんなこと言っても素直に聞く魂じゃないから。この女子高生は」
「言えてる」長四郎の発言を肯定する絢巡査長。
「何それぇ~」
「ま、兎に角、無事に助け出せて良かったじゃない。あ、王手」
 遊原巡査は佐藤田警部補と行っている将棋で王手を指す。
「え? あ、ウソ。ちょっと待って?」
「ダメです。あ、探偵さん。あの時、女子高生を誘拐した理由って何だったんですか?」
「あ、それ聞きたい!」燐がそう言うと部屋に居る人間全員の視線が長四郎に向けられる。
「それはね。じゃじゃ馬な子が大好きなんだって」
「ウソだぁ~」
 長四郎の発言をきっぱりと否定する大人三人にムッとする燐であった。

                                                   完
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