Detectiveは宇宙人

飛鳥 進

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第壱話-開始

開始-12

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 それから真希は素直に自らの犯行を自白した。
 動機は至って、単純なものだった。自分の営業成績の邪魔になるから殺害したという自分勝手な犯行であった。
 一か月前、取引先の売り場に見知らぬ商品が並び始めた。しかも、自分の会社の製品の売り場が縮小されていた。
 真希はすぐさまこの商品を売りに来た男についての情報を聞きだした真希はヘラー興信所を使い被害者の大隈の身辺調査をさせた。
 その結果、大隈が地球外生命体つまり宇宙人である事が判明した。そこで大隈が洗脳か何かを取引先相手にしたと踏んだ真希は早速、脅迫を実行することにした。
 只、大隈の勤務先は不明であった為、取引先から出て来た所で声をかけた。
「どうも、初めまして。グンギロの真希と申します」名刺を渡すと「これはご丁寧にどうも。大隈と申します」大隈もまた名刺を渡す。
「実は折り入って話があるんです」
「ほう。何でしょう」
「ここじゃなんで、場所を変えましょう」
「ええ、分かりました。もし宜しければ、食事でもしながら」
 その誘いに乗り真希は大隈の行きつけだという居酒屋へと場所を移した。
 カウンター席に並んで座り生ビールとつまみを二、三品頼み、大隈の方から話を切り出してきた。
「他社の営業さんが私にどの様な御用でしょうか?」大隈はそう言うと、お通しのほうれん草の煮びたしを口に入れる。
「これを見てください」真希はヘラー興信所が入手した大隈の本当の姿が映った写真を見せると大隈は鼻で笑い「失敬」と言いながら続けた。
「これはフェイク写真か何かですか?」
「ここに映っているのはあなただ。大隈さん」
「成程。ですがこの写真だけでは、証拠不十分ではないでしょうか?」
「これを見てもまだそういう事が?」真希は二枚の写真を大隈の前に出す。
 その写真には大隈が本来の姿から人間の姿に代わる所が納められていた。
「真希さんはどこまでを知っているんですか?」大隈は生ビールを流し込む。
「貴方が宇宙人だという事。地球人を洗脳して不良品を売りつけている。それだけです」
「不良品ですか・・・・・・・・」大隈は不敵な笑みを浮かべ、どこか余裕がある感じであった。
「何がおかしいんだ? あんた」
「いえ、地球人は聞いていたより迫害的なのだと思いましてね」
「ああ、迫害するさ。あんたみたいな悪い宇宙人にはな」
「悪い宇宙人ね。一応、聞きますがこの写真はどうされるつもりですか?」
「あんたが商売を辞めない場合、この写真を週刊誌にリークする」
「恫喝とは、地球人の良くない所業だ。だが、これをリークしたら貴方の身に危険が及びますよ」
「それも恫喝ではないのか?」
「対等な立場で話しているつもりですが。大将、お勘定」
「はい」大将はそう返事し、会計の準備をする。
「割り勘で良いですか? 真希さん」
 真希は動じず平然としている大隈に対して憎悪の感情が渦巻いていた。
 先に店を出た大隈を追いかける。
 大隈は人気のない路地裏に入っていく。「待てよ!!」そう叫びながら路地裏に入ると大隈は異形の姿で真希を待ち構えた。
「お待ちしてましたよ」
「どういうつもりだ?」ビジネスバッグを盾に真希は身構える。
「貴方に危害を加えるつもりはありません」その言葉を信じられない真希は相手が宇宙人という事で護身用にナイフを取り出そうとする。
「ナイフですか? あなたは偏見の塊らしい」
「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃ」
 真希は恐怖心が先行しナイフを取り出すと大隈の右胸に突き刺す。
 大隈は倒れながら人間の姿に擬態していく。
「お、お前がいけないんだからな!!」真希はその場から立ち去り、近くのゴミ捨て場に指紋を拭き取った凶器のナイフを捨てた。と一連の事を真希は取り調べで自白した。
「あ~疲れた」新三は座敷の席で大声を出す。
「疲れたのはこっちですよ」
「ホント、ホント」誠の発言に愛子は賛同する。
「にしても、よく騙せたよな。あれで」
「ええ」
 新三と誠は嬉しそうにグラスを酌み交わす。
「どういう意味ですか?」
「愛子ちゃんには言っていなかったね。ほら、あの防犯カメラの映像さ。あれ、作って貰ったやつ」
「へ?」驚きのあまり口をあんぐりと開けて愛子は啞然とする。
「ほらぁ~だから、言った方が良いって」
 誠にそう言われ恐る恐る新三が愛子を見ると、愛子は今までに見せたことのない鬼の形相で睨んでいる。
「あ、ごめん。ごめん。伝達ミス?」作り笑顔で誤魔化す新三だが愛子は許せないといった感じで指をぽきぽきと鳴らしている。
「ごめんで済んだら警察いらねぇ!!!」
 ゴンっと鈍い音を立てて新三の顔にストレートパンチを決め込むと誠の方を向き「説明願います?」と言う愛子。
「は、はい」
 誠は声を震わせながら、愛子に説明を始めた。
 ナイフからは指紋は検出されず真希自身もかなりボロは出しているものの、今の状況では切り抜けられるもしれない。
 そこで新三はカマをかける為、真希が凶器を捨てる防犯カメラ映像を作成するよう誠に依頼したのだ。
 勿論、この映像は証拠品として扱っていないのでご安心を。
 そして、その作戦は成功した。
「という事が。納得して頂けましたか?」
「はい、すっきりしました。というか、犯人逮捕の為には手段を選ばないんですね」
「そうですね。まぁ、早く解決しないと国際問題というか星間問題に発展しますから」
「宇宙人の殺人事件て、早く解決しないといけないんですか?」
「まぁ」言葉を濁す誠を見て迂闊に喋ってはいけない事案なのかと愛子は思った。
「ねぇ、そんな暗い話は置いておいてさ。ここら辺で白黒はっきりさせない?」
「何をですか?」きょとんとした顔で新三を見つめる愛子。
「何をって・・・・・・・俺に対する愛子ちゃんの扱い。粗暴じゃね」
「粗暴じゃありません。妥当ですよね、巽川さん」
「妥当ですね」笑顔で誠は頷く。
 誠も今まで新三のなりふり構わない態度に嫌気がさしていた頃、愛子が現れ心が軽くなったのだ。
「誠っちまで、そんなこと言うのぉ~」
 情けない声を上げる新三を見て、高笑いする愛子と誠であった。
                                                  
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