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8.フレルデントでの生活
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アリアが目覚めると、知らない場所だった。
気を失っていた間に移動させられていたようで、彼女は自分が居る場所がどこなのか、全くわからなかった。
アリアが横になっていたのは柔らかなベッドで、部屋は落ち着いた配色の家具や調度品で整えられていた。
まだ少しぼんやりとする頭で記憶を辿り、おそらく姉のサリーナが嫁いだ、ダーフィル公爵家なのだろうと思う。
「あら、アリア、起きたのね。おはよう」
そっとドアが開けられて、サリーナが顔を覗かせた。
アリアは唇だけを動かして、おはよう、と応える。
「気分はどう? あなたは昨日、驚いて気を失ってしまってね、それからさっきまでぐっすりと眠っていたのだけど……」
サリーナはそう言いながら、筆談用のノートとペンをアリアに渡してくれた。
アリアは受け取ったノートに、「大丈夫よ。気分は悪くない」と書き、サリーナに見せる。
「そう? じゃあ、着替えて公爵様たちにご挨拶に行きましょう。それから食事をいただいて、この屋敷の案内をするわね。自分の家だと思って、のんびりしてくれたらいいからね」
アリアは頷くと、身支度を整えた。
「アリア、久しぶりだね。いろいろと大変だったろうが、ここでゆっくりするといい。君の治療の事もいろいろと考えているから、安心しなさい。私たちはそのための協力を惜しまないから」
「そうよ、アリア。なんならこのままずっと居て、うちの娘になってくれてもいいのよ。そうしたら可愛い娘が二人になって、私も夫も嬉しいわ。フレルデントで体を癒して、心身共に元気になってね」
ダーフィル公爵夫妻は二人とも、とてもアリアに好意的だった。
ダーフィル公爵は、パールグレーの髪に緑の目、公爵夫人の方は艶やかな黒髪に、優しい茶色の目をしていた。
サリーナの夫であるステファンは黒髪に緑の目なので、両親の外見の特徴を半分ずつ受け継いでいるようだった。
リカルド王子の従兄である、ステファンの父親のダーフィル公爵は、現フレルデント王の実弟だった。
自国の王家からはひどい仕打ちを受けた自分が、他国の王家にも連なる方々からこんなにも優しくされてよいのだろうかとアリアは思ったが、ダーフィル公爵夫妻の優しさに心から感謝をした。
『ありがとう、ございます』
唇の動きと心を込めたお辞儀でしかダーフィル公爵夫妻に感謝の気持ちを示せられなかったが、思わず零れたアリアの涙に、ダーフィル公爵夫妻は胸を打たれたようだった。
「君の喉はすぐには癒えないかもしれないが、ここでゆっくりと治しなさい。大丈夫、絶対に良くなるから、ね」
隣に立つサリーナに優しく肩を抱かれながら、アリアは何度も頷いた。
そして、不甲斐ない自分がこんなに優しくしてもらえるのは、優しい両親や姉であるサリーナ、そして彼女の夫であるステファンのおかげなのだろうと思い、彼ら全てに感謝せずにはいられなかった。
気を失っていた間に移動させられていたようで、彼女は自分が居る場所がどこなのか、全くわからなかった。
アリアが横になっていたのは柔らかなベッドで、部屋は落ち着いた配色の家具や調度品で整えられていた。
まだ少しぼんやりとする頭で記憶を辿り、おそらく姉のサリーナが嫁いだ、ダーフィル公爵家なのだろうと思う。
「あら、アリア、起きたのね。おはよう」
そっとドアが開けられて、サリーナが顔を覗かせた。
アリアは唇だけを動かして、おはよう、と応える。
「気分はどう? あなたは昨日、驚いて気を失ってしまってね、それからさっきまでぐっすりと眠っていたのだけど……」
サリーナはそう言いながら、筆談用のノートとペンをアリアに渡してくれた。
アリアは受け取ったノートに、「大丈夫よ。気分は悪くない」と書き、サリーナに見せる。
「そう? じゃあ、着替えて公爵様たちにご挨拶に行きましょう。それから食事をいただいて、この屋敷の案内をするわね。自分の家だと思って、のんびりしてくれたらいいからね」
アリアは頷くと、身支度を整えた。
「アリア、久しぶりだね。いろいろと大変だったろうが、ここでゆっくりするといい。君の治療の事もいろいろと考えているから、安心しなさい。私たちはそのための協力を惜しまないから」
「そうよ、アリア。なんならこのままずっと居て、うちの娘になってくれてもいいのよ。そうしたら可愛い娘が二人になって、私も夫も嬉しいわ。フレルデントで体を癒して、心身共に元気になってね」
ダーフィル公爵夫妻は二人とも、とてもアリアに好意的だった。
ダーフィル公爵は、パールグレーの髪に緑の目、公爵夫人の方は艶やかな黒髪に、優しい茶色の目をしていた。
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『ありがとう、ございます』
唇の動きと心を込めたお辞儀でしかダーフィル公爵夫妻に感謝の気持ちを示せられなかったが、思わず零れたアリアの涙に、ダーフィル公爵夫妻は胸を打たれたようだった。
「君の喉はすぐには癒えないかもしれないが、ここでゆっくりと治しなさい。大丈夫、絶対に良くなるから、ね」
隣に立つサリーナに優しく肩を抱かれながら、アリアは何度も頷いた。
そして、不甲斐ない自分がこんなに優しくしてもらえるのは、優しい両親や姉であるサリーナ、そして彼女の夫であるステファンのおかげなのだろうと思い、彼ら全てに感謝せずにはいられなかった。
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