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俺のこと
しおりを挟むこの世界には、第二の性というモノが存在する。
人並み外れた才能を持ち、非常に整った顔立ちをしているα。
至って平均的な能力を持ち、大半が平均的な顔立ちをしているβ。
3性で1番劣った知能を持ち、その代わりと言うように非常に愛らしい顔立ちをしているΩ。
何故第二の性というモノがあるのか。
発見されて数百年経った現在でもその理由は未だ解明されていないが、3つだけ分かっている事がある。
アルファが優れた人種なのは、神様が丹精込めて創った祝福児だから。そのためなのか、現在確認されているアルファは世界人口の2%しか居ない。
ベータが可も不可もないのは、神様が量産的に創った一般人だから。世界人口の大半を占めているのがこの性だ。
そしてオメガ。
オメガが他の性よりも劣っているのは、神様から嫌われた存在─所謂、忌み子だから。顔立ちが愛らしく出来ているのは、神様からのせめてもの慈悲だという説もある。
オメガの数は世界人口の約1%、アルファの半分しかいない。
忌み子とされているオメガは身分関係無く皆地位が低く、権利も圧倒的に少ない。
そんなオメガの中で最も忌み嫌われているのが、男のオメガだ。
アルファと交わした場合のみではあるが、男の癖に赤子を孕む事ができるという点が穢らわしいから。そう、世間一般で言われている。
それでも生かされるのは、女のオメガと違い、男のオメガの産む子は必ず優秀なアルファになるからだ。
何故俺がこのような知識を振り返っているのか。
それは、たった今俺自身がオメガ判定されたばかりだからだ。
青天の霹靂とは、こういうことらしい。今までずっと周囲からアルファだと思われていて、俺自身もそう自負していたのだ。
「おかしい…絶対にウソよッ!!この子がオメガなんて穢らわしいモノなはずないッ!!判定ミスに違いないの!!!!検査をやり直してよッ!!!!!!」
「奥様、残念ですがミスではありません。とても極稀にですが、オメガのくせに表面的なアルファの特徴や能力を持っている奴がいるのです。……忌々しいことにね」
「そ、そんなこと…ッッ」
母と判定士の会話を、どこか他人事のように感じた。
フラフラと、この世の終わりのような表情をして歩く母の後ろ姿をなんとなしに眺めながら着いていく。
自分がオメガだったという事実を振り返り、特にどうでもいいなと思った。俺はこんなにも無関心だっただろうか?
家に着いた頃、まるで幽鬼のようだった母が希望を見出したかのように顔色を取り戻し、パッと俺の方へ振り向いた。顔は喜色に溢れ、深淵に堕ちていた瞳はギラギラと異様に輝いている。
「そうよ!!!!貴方の能力はアルファと同じ…いいえ、下手したらそれ以上だわ!!!!!だから抑制剤を飲んで…いや、それだけでは不十分ね。…なら、子をなす臓器を取り除いておけば……いける、これなら絶対にいける!!!」
恐ろしい、不穏な事を、実に素晴らしい案だと言わんばかりに口にしていく母を見て、嫌な予感がした。
「その賤しい臓器を取っ払って、アルファとして生きなさい!!!!今すぐ病院に行くわよ!!大丈夫、オメガだって判定された事は誰にもバレないわ!だって、あの判定士と病院を買収すれば良いだけだもの」
母は自分が正しいと確信している様子で、何度も何度もウンウンと頷いている。しかもこちらが拒否するとはまるで思っていないようで、さっそく大学病院へ行くために乗るタクシーの空きが無いかを確認し始めた。
だから何を言っても無駄だと悟り、ただ黙って頷いた。
こうして俺は、オメガだと判明した次の日に子をなす臓器を失い、不完全なオメガとなった。
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