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何もかも誤魔化して
しおりを挟むこの学校は共学で、何処にある高校と同じようにアルファ科、ベータ科、オメガ科に分かれる。しかし、此処にはそれらとは別に特殊科という珍しい学科があった。
特殊科はつい最近設立された学科で、特に様々な分野で優秀な人間が第二の性関係なく集められている。
他にこの学校へ入る条件として、アルファとオメガは必ず抑制剤を服用すること、又は番持ちであるであることが求められる。
まぁ、突然発情されても困るしな。主に教室の状態とそいつらの精神状態、学校側に課せられる責任とやらで。
因みに、俺と茶髪のコイツはこの学科に属している。
「ねぇボス待ってよ~。歩くの速い、ってッ!」
そう聞こえたと同時にドンっと、背中へ何か重いものが飛び付いてきたような衝撃がした。そのせいで、僅かに身体が前のめりになりかけたが、何とか耐え抜いた。
「…飛びつくな」
「え~、ボスが待ってくれないのが悪いんじゃん!」
「…テメェが遅ぇだけだろ」
「むむむ~…本当だから何も反論できない~!く~や~し~い~!!」
背中にしがみついてきたかと思うと、コイツは両手でダンダンと思いっきりぶっ叩いてきた。…地味に痛ぇ。
またもや本日何度目かになるため息をつき、背後にいる奴の手へ向けてバッと腕を伸ばす。そしてそのまま、未だぶっ叩いてくる両手首を掴んで引き剥がした。
「うゎっ……ッぶないなぁ!ヒドイじゃんボス~!!」
「…正当行為だろ」
またもやギャンギャン鳴いて着いてくるバカを無視しながら、当初の目的地を目指して歩いていく。
途中、場もわきまえずイチャつく番同士らしき男のカップルがいたが、俺達を目にした途端蜘蛛の子散らすように去っていった。
「番かぁ…」
どこか羨ましそうな響きを含んだ言葉をもらす同行人。そういやコイツ前言ってたな、確か番ってもんに憧れがあるって。だからか。
「ねぇねぇボス~。ボスって運命とか信じる派~?因みにオレは信じる派だよ~。だってその方が絶対わくわくするじゃん?」
先程の奴らに触発されたのか、唐突に運命だかなんだかの話題をぶっ込んでくる。しかし楽しそうに話してるとこ悪いが、そんなもんに全く興味ねぇし俺には関係ない。
つまりどうでもいい。
「…さぁな」
「オレ的にはさぁ、ボスは番出来たら絶対溺愛するタイプだと思うんだよね~。それが運命とかだったら余計に溺愛しそ~!!」
「…知らん」
「えぇ~、そんなこと言っちゃって~。ボスも実は“自分だけの運命か…イイな”とか思っちゃったりしてるでしょ~!!オレはそう思うけどなぁ~。……だって、運命ならオレだけを見てくれるんでしょ?」
何を思ったのか、上がっていたテンションが急に地に落ちる。
斜め後ろに目をやると、僅かに俯いて思い詰めたような表情をした茶髪が立ち止まっていた。心做しか、髪と同色の瞳にあるハイライトも薄くなっている気がする。
……チッ、らしくねぇな。
己の黒髪を片手でかき上げ、らしくない精神を正常に戻す。
それから茶髪の場所まで引き返し、ウジウジしてるウジ虫野郎の髪を思いっきりぐしゃぐしゃにしてやった。
ハッ、ザマァみやがれ。
「ちょ、ちょっとッ!!何すんのボスッ!!あぁ~も~…せっかく時間かけてセットしたのにぃ…」
一瞬呆けた顔を曝した奴はすぐに普段通りになり、何やらぎゃーぎゃー文句を言いながら髪をセットし直している。
「…フッ、テメェはアホ面曝してんのがらしいな」
普段通りバカなコイツを見下ろして鼻で嗤う。
全く、バカのくせに俺に面倒かけんじゃねぇよ。…いや、バカだから俺に面倒かけんのか。
「………」
考えるだけ無駄に思えてきた。ということで、さっさと元の進行方向に足を向ける。コイツは勝手に着いてくんだろ。
歩き始めると案の定、茶髪は刷り込みされた鳥の雛のように俺の後ろを着いてきた。未だにギャンギャン喚いているため煩く、思わず顔を顰める。
…まぁ、懐かれてるようで悪い気はしねぇが。
「……ありがとね、ボス」
目的地まであと半分程歩いた頃、なんの脈絡も無しにポツリと零された感謝の言葉。
俺はそれに対して特に何も言葉は返さず、ただ黙って再びセットし直された髪をこれでもかと乱してやった。
髪のことでまた文句を言われたが、僅かに顔が赤くなってるのを指摘しなかっただけ有り難いと思え。
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