それについては黙っておいて

ミナクオ

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それについては黙っておいて

五段坂君の話(#4)

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西国さいごくに引かれずに、

距離を縮めるには。



まずは一緒に寝ることを

当たり前にしてしまえ。



事あるごとに泊まらせ、

どんどん私物を置かせ、

触れ合いに慣れた頃に、

そこから先を仕掛けてやる。



焦りは禁物だ。

じっくり行こうじゃねーか。



俺には俺の、

壁の越え方がある。






「よお、レポートか?」


「そう。ここでやって、そのまま出しちまおうかと思って。」



フリースペースで

パソコンに向かっていると、

雨崎あめざきがやってきた。



「この間はどーも。あれをネタに思う存分かわいがってやれたわ。」


「こえーよ。恋人認定したんだから、その他の関係はさっさと清算しちまえよ。」


「その他の関係なんてない。なんたって純愛だもん。」


「だもんって言うな。キモ、くはねーか。イケメンはなんでも許されるな。ハラタツ!ホントにその他はねーの?」


「過去はどうであれ、頓着したのは唯一人だ。現在は恋人になったし、他はねーな。」


「あ、そう。雨崎は器用に遊んで一粒選ひとつぶえりしたんだろうけど、むこうは?お前とその他を比較して、やっぱりお前が一番ってなったのか?」


「なんで五段坂ごだんざかが、そこ気にするわけ?」


「雨崎みたいに器用なやつは少ないの!不器用な方の肩を持ちたくなるんだよ。むこうにも選ばせてやれ。」


「選ばせてやれ?俺にそんな権限ねーよ。肝心な所はいつだってむこうの意思で、俺の方が言いなりだ。」



雨崎にここまで言わすって。

家長いえながすげー!

さすが、師匠てんてー!!



「誤解してたわ。雨崎の方が健気くんなんだな。」


「そういうこと。」



目がくらむような

笑顔を俺に見せた後、

雨崎は去っていった。



こんなに想われてること、

家長、わかってんのかな。

たぶん、わかってねーな。



師匠、無自覚小悪魔!

いや、無自覚デカマッチョ悪魔!







いつもの顔ぶれで、

夜な夜な

いつもの集い。

今夜は大社たいしゃんちだ。



「恋人認定してから、健気くんとはどうよ?」


「健気くん、感激して泣いちまったんじゃねーの?」


「どんだけ健気くんを泣かせる気だよ!次に泣かせるのは、プロポーズまでとっておけよ!」


「そうだ!そうだ!そうしろ!」


「恋人の証としてリングでも嵌めておいて、数年後には本気のやつを贈ってやれ!」



やんや、やんやと、

囃し立てる。



「リング、ねえ…。家長、嵌める?」



「出た!健気くんの代弁者!」


「安定の家長視点!アンサープリーズ!」



西国と大社が、

げらげら笑う。



健気くん、

ご本人ですよ!



「本気のやつだけでいいんじゃね?」


「じゃあ、数年後ってことで。」



御両人、

さくっと将来の

約束しましたね?



「結婚式にはぜひ呼んでくれ!」


「ビバ!愛の儀式!」


「俺も相手ほしーい!」


「この際、性別は不問だ!」


「健気くんの話聞いてっと、そんな気持ちになるよな!」



俺達の間で、

空前の同性愛ブーム

到来の予感。



「雨崎以外にはわりーが、俺、相手できるかも!」



西国がニコニコしながら言う。



「え…?」


「まじかよ!抜け駆けすんなよ!」


「っていう、妄想?」


「ありえる~!」


「違うわ!朝バイトで一緒になる人と、明日、飯食う約束してんの!」



やめてくれ…。

それ以上、聞きたくない。



「前、おっさんと一緒だって言ってなかった?」


「西国、最高に趣味いいな。」


「まじナイスセレクト!」


「守備範囲広すぎ。」


「聞け!外野ども。おっさんが都合悪くなって、最近、おねーさんに代わったの!今まで違う時間帯の人だったから、名前くらいしか知らなかったけど、系統的に雨崎の女性バージョンだな。」



おっさんが、

おねーさんで、

雨崎で。



だめだ…。

何も頭に入ってこない。



「美人ってことか?」


「雨崎を女子。雨子さんだな!」


「雨子さん、クソ意地わりぃだろ?」


「家長、それ俺のこと言ってんの?」


「系統がそうってだけ。雨子さんが男になったら、雨崎級のイケメンだろうなって。声もハスキーで色っぽい!」



その後も、

雨子さんの話題で

盛り上がるが、

俺は……。





「五段坂、もう解散したぞ。みんな帰ったけど?」


「あ、わりー。ボーッとしてた。」


「大丈夫か?顔色悪くね?お前んち近いけど、ここで少し寝てく?」


「いや、帰って寝るわ。心配いらないから。ありがと!」



大社に礼を言って帰る。

ひどく気分が重い。



西国に彼女ができたら、

もう一緒に寝てもらえない。



距離を縮める作戦は

実行できずに終わった。



家長師匠、そこの壁は

俺には越えられなかったよ。


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