それについては黙っておいて

ミナクオ

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それについては黙っておいて

五段坂君の話(#5)

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一晩寝たが、

気分は重いままで、

どんよりと一日を過ごした。



夜な夜な

集う気にもなれない。



寝ようとしていると、

玄関のドアが開いた。

鍵はかけない主義だ。



「はあはあ、五段坂ごだんざか、聞いてくれよ!」



西国さいごく

息を切らしながら、

部屋に入ってきた。



「雨子さんと、飯食いに行ったんじゃなかったのか?」


「行った!行ったさ!行ってきたさ!はあはあ。」


「いいから、ちょっと落ち着け!」


「さっき雨崎あめざきんちでその話をしたら、三人に大爆笑された!お前が昨夜、顔色悪かったって聞いたから、むこうはほっといて飛んで来てやったんだぞ!」



笑われてむかついて

飛び出してきたようだが、

それでも嬉しい。

昨夜のことも気にかけてくれた。



どんよりとしていたのが

嘘のように晴れていく。



「ありがと!心配いらないから。ところで、どうして大爆笑されたんだ?」


「雨子さん、気になるやつがいて、そいつがうちの大学だから、情報収集のための誘い飯だった!」


「うわあ!アウトオブ眼中、西国氏だったんだな。」


「そうなんだよ!し・か・も!」


「しかも?」


「雨子さん、男だった!」


「え~?!」


「俺は女性だと思ってたんだ。でもよ、男だと認識してないの、バイト内で俺一人だけだった。」


「どうしてそーなった?」


「お洒落でさ、レディース物も着こなしちゃうんだって!シフトが被るまでは接点なかったから、そういう趣味だって知らなかったんだよ!」


「髪型とか体型とか、声でわかんなかったのか?」


「髪は長くて、後ろでまとめてたし、スラッとしててゴツくないし。ハスキーな声で色っぽいと思ってた。」



西国にしてみたら

気の毒な話だが、

彼女ができなくて、

すげー安心した。



「ふっ…。」


「お前も笑うのか!って、なに泣いてんの?!」


「ふうぅ…。西国が不憫すぎて!!」


「ういやつめ!頭なでなでしてやる!」



本当は違う。

ホッとしたら涙が出ただけだ。



「西国、これからも頭なでなでしてくれるか?」


「いいよ!」


「一緒に寝てくれるか?」


「いいよ!」


「彼女なんて作るなよ。俺とずっと一緒にいてくれよ。」


「え、それは無理!!」


「そこは流れで、いいよ!って言えよ!」


「やだよ!付き合うなら健康なやつがいい。」


「は~??俺、健康だよ?」


「五段坂はスモーカーだろ。まわりを気遣って室内では吸わないし、ポイ捨てもしないのは偉いけど、吸うこと自体が許せない。今は健康でも、この先どうなるかわからんし。なるべくずっと一緒にいたいから、付き合うなら、健康的な習慣を身につけてるやつと付き合いたい。」


「だったら!禁煙したらずっと一緒にいてくれる?俺と付き合ってくれる?」


「んー…、禁煙できた時点で考えてやる。」


「まじで!?」


「何回も禁煙失敗してんだろ?ホントにできんのか?」


「できる!俺の本気を見せてやる!!」



家長師匠いえながてんてー、そこの壁は、

禁煙したら越えられそうだよ。



恋人候補に名乗りをあげて、

今はまだ、友達の関係で、

寝かしつけてもらう。



禁煙期間どれくらいで、

恋人認定してもらえるだろうか。



そこの壁を絶対に越えてやる!

ふつふつと闘志を燃やしつつ、

俺は……。





「五段坂、おやすみ。俺も眠るよ。」



西国の優しいささやきは、

今夜も俺の耳には届かない。


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