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復活した由良川と、お迎え?チカちゃん?
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「はいは~い!チカちゃん、どうした~?…たかじょ~?しらないよ~?みせでてすぐ、わかれたから~。…おれ~?よいさましちゅう~!…ひとりだよ~?」
チカちゃんが探しているのは、高條なのか、由良川なのか。
「いっしょにかえるって~?…ばしょ~?あ~、ちょっと、まってて~!こっちから、またれんらくするわ~!」
由良川だったようだ。家が近所だから、物心がつく前からの付き合いだと、前に聞かされた。由良川もチカちゃんも、実家から大学に通っているはずだ。
「マイ、スウィーティ~がまっているから、かえらないと~!さいはら、フロントにでんわして、ロックかいじょもらって~!」
「ロック?言わないと開かないのか?」
「そうだよ~!しゅくはくするけど、ちょっとでてくるっていって~!」
部屋を出るには、室内の精算機で会計を済ますか、フロントに電話をかけて、ロックを解除してもらわないといけないらしい。鍵いらずとは、そういうシステムなのか。
「開けてもらうのはいいけど、歩けそうなのか?肩ぐらいしか貸せないからな?」
「あるけそう~!チカちゃんのこえをきいたら、ふっかつした~!あいのちからは、いだいだわ~!」
愛の力かどうかはわからないけど、由良川はふらふらと立ち上がった。どうなることかと思ったが、チカちゃんから着信があって助かった。
言われた通りにすると、そのうちガチャッと、ロックの解除音が聞こえた。
痛ましい姿で寝こけている高條を残し、由良川に肩を貸しながら部屋を出た。もう会うことはないだろうが、後味がとてつもなく悪いから、今夜のことは早く忘れようと思った。
「このへんまでくればいいか~!さいはら、もういいよ~!ありがとうな~!マイ、スウィーティ~に、れんらくするわ~!」
「チカちゃんに迷惑かけるなよ。…明日とかに、高條からメールの返信があったら、どうすればいい?」
「あ~、てきとうにかえしておいて~!チカちゃんがフラれちゃったら、さいはらにしらせるから~!そしたら、ブッチしちゃっていいよ~!」
「…わかった。そこまで引き受けてやるんだから、それ相応のことを返してもらうからな」
「まかせろ~!おれは、おんをあだでかえさないおとこだ~!」
ここまでこき使われて、恩を仇で返されたら、たまったもんじゃない。
早く忘れようと思ったばかりだったけど、最後まできちんとやりたい性分が、それを邪魔することになってしまった。由良川から知らせが入るまでは、高條とメールのやり取りをしなければ。
スマホを耳に当てながら、ふらふらと立ち去る由良川の背中を見送っていたが、やつが惚れ込んでいるチカちゃんを、一目見てから帰ろうかと思い直した。
次の角を曲がって行ったので、尾行していることに気がつかれないように、その角からちょっとだけ顔を出して、状況をうかがう。
「チカちゃ~ん!!!」
ぶんぶんと、手を振っている由良川の後ろ姿が目に入った。振り方が大げさで、よろめいて今にも転びそうになっている。手なんか振っている場合じゃない。距離的に近いし、街灯でそこそこ明るいから、由良川のハタ迷惑な様子がばっちり見えた。
運悪く、そこへ通りがかったガッチリとした体躯の若者が、めちゃくちゃ迷惑そうな顔をしながらも、よろよろしている由良川を支えようと、手を伸ばした。
…かのように見えたが、伸ばしたその手で由良川を張り倒し、黒くて長い毛束のような物を、由良川の顔面にバシッと叩きつけた。…あれは、俺が被るはずだったヅラか?
「うっせぇ。帰るぞ」
低く野太い声の持ち主は、道に倒れ込んだ由良川を振り返ることなく、スタスタと元来た道を戻って行った。
「ぶはっっ!!まってくれ~!おいていかないで~!」
由良川は、ジタバタして何とか立ち上がり、さっきよりふらふらしながら、その後を追いかけて行った。投げつけられたヅラが、日本人形の呪いのごとく首元に巻き付いていて、それはそれは不気味だった。
……もしかして、今のがチカちゃん?
今度、それとなく聞いてみるか。俺の中の勝手なチカちゃん像が、根底から崩壊しそうだし、由良川のどうしてそうなった的な勘違いが、ボロボロ出てきそうだ。
チカちゃんが探しているのは、高條なのか、由良川なのか。
「いっしょにかえるって~?…ばしょ~?あ~、ちょっと、まってて~!こっちから、またれんらくするわ~!」
由良川だったようだ。家が近所だから、物心がつく前からの付き合いだと、前に聞かされた。由良川もチカちゃんも、実家から大学に通っているはずだ。
「マイ、スウィーティ~がまっているから、かえらないと~!さいはら、フロントにでんわして、ロックかいじょもらって~!」
「ロック?言わないと開かないのか?」
「そうだよ~!しゅくはくするけど、ちょっとでてくるっていって~!」
部屋を出るには、室内の精算機で会計を済ますか、フロントに電話をかけて、ロックを解除してもらわないといけないらしい。鍵いらずとは、そういうシステムなのか。
「開けてもらうのはいいけど、歩けそうなのか?肩ぐらいしか貸せないからな?」
「あるけそう~!チカちゃんのこえをきいたら、ふっかつした~!あいのちからは、いだいだわ~!」
愛の力かどうかはわからないけど、由良川はふらふらと立ち上がった。どうなることかと思ったが、チカちゃんから着信があって助かった。
言われた通りにすると、そのうちガチャッと、ロックの解除音が聞こえた。
痛ましい姿で寝こけている高條を残し、由良川に肩を貸しながら部屋を出た。もう会うことはないだろうが、後味がとてつもなく悪いから、今夜のことは早く忘れようと思った。
「このへんまでくればいいか~!さいはら、もういいよ~!ありがとうな~!マイ、スウィーティ~に、れんらくするわ~!」
「チカちゃんに迷惑かけるなよ。…明日とかに、高條からメールの返信があったら、どうすればいい?」
「あ~、てきとうにかえしておいて~!チカちゃんがフラれちゃったら、さいはらにしらせるから~!そしたら、ブッチしちゃっていいよ~!」
「…わかった。そこまで引き受けてやるんだから、それ相応のことを返してもらうからな」
「まかせろ~!おれは、おんをあだでかえさないおとこだ~!」
ここまでこき使われて、恩を仇で返されたら、たまったもんじゃない。
早く忘れようと思ったばかりだったけど、最後まできちんとやりたい性分が、それを邪魔することになってしまった。由良川から知らせが入るまでは、高條とメールのやり取りをしなければ。
スマホを耳に当てながら、ふらふらと立ち去る由良川の背中を見送っていたが、やつが惚れ込んでいるチカちゃんを、一目見てから帰ろうかと思い直した。
次の角を曲がって行ったので、尾行していることに気がつかれないように、その角からちょっとだけ顔を出して、状況をうかがう。
「チカちゃ~ん!!!」
ぶんぶんと、手を振っている由良川の後ろ姿が目に入った。振り方が大げさで、よろめいて今にも転びそうになっている。手なんか振っている場合じゃない。距離的に近いし、街灯でそこそこ明るいから、由良川のハタ迷惑な様子がばっちり見えた。
運悪く、そこへ通りがかったガッチリとした体躯の若者が、めちゃくちゃ迷惑そうな顔をしながらも、よろよろしている由良川を支えようと、手を伸ばした。
…かのように見えたが、伸ばしたその手で由良川を張り倒し、黒くて長い毛束のような物を、由良川の顔面にバシッと叩きつけた。…あれは、俺が被るはずだったヅラか?
「うっせぇ。帰るぞ」
低く野太い声の持ち主は、道に倒れ込んだ由良川を振り返ることなく、スタスタと元来た道を戻って行った。
「ぶはっっ!!まってくれ~!おいていかないで~!」
由良川は、ジタバタして何とか立ち上がり、さっきよりふらふらしながら、その後を追いかけて行った。投げつけられたヅラが、日本人形の呪いのごとく首元に巻き付いていて、それはそれは不気味だった。
……もしかして、今のがチカちゃん?
今度、それとなく聞いてみるか。俺の中の勝手なチカちゃん像が、根底から崩壊しそうだし、由良川のどうしてそうなった的な勘違いが、ボロボロ出てきそうだ。
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