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話す由良川と、話さないチカちゃん?
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高條の提案で、ここしばらくの憂鬱な出来事を笑い話に変えることができた。こいつの懐の深さには、感動すら覚える。
「俺が高條じゃなくてよかったよ。俺がおまえだったら、高條に会えなかっただろ?」
「ブッ、何だそりゃ。才原、もう酔った?」
「酔ってない。高條とは、もう会うことはないだろうって思ってたんだ。それなのに、こうしてまた会った上に、会えてよかったって思うんだから、わからないもんだよな」
「俺も、才原の涙に絆されたわけじゃねぇけど、あんなことがあって、よかったとさえ思えてきた」
「それはちょっと…。あんなことじゃなくて、普通に会えてたらどんなによかったか。…再会して数分で泣いたなんて、ネタにしても恥ずかしすぎるんだけど」
顔が熱くなりうつむく俺を見て、声をあげて笑う高條っていうのが、お決まりのパターンになってきた。
「才原、連絡先をちゃんと交換しねぇ?メアドだけの登録で、“ショートカットの子”になってんだ」
「俺なんか、メアドを登録してもない」
「ブッ、扱いがひでぇ!」
「しょうがないだろ…。あ、でも暗記してる。そんなの高篠だけだ」
「ブッ。逆に、特別扱いになってるし」
何を言っても、こいつのツボにヒットするらしく、笑われてばかりいる。
「高條の変な笑い方がクセになってきた。聞いてると楽しくなるからいいけど、けっこうな笑い上戸だよな」
「いや、普段はこんなに笑わない。才原が普段、人前で泣かないのと同じ」
ニカッと笑う高條が意外だったけど、何気に俺のフォローを入れてくる辺りは、さすがとしか言いようがない。
連絡先の交換をしてからも、楽しく話していると、隣の個室に客が入ってきた。「ご注文が決まりましたら、お呼び下さい」と、定番のセリフが聞こえ、ふすまが閉まる音がした。
『この頃、俺への接し方が以前にも増してソークールだよな~!ここまで連れて来られたのが、ホントに奇跡だわ~!話してくれないだけならいいが、目も合わせてくれないともなると、俺だってへこむよ?ガチでへこむよ?直せるところは直すからさ、理由を聞かせてくれよ~!酒が入れば、少しは口が軽くなるだろ?ってことで、とりあえず、生大ジョッキでいい?はい、注文ピンポーン!店員さんカモーン!ハリー!ハリー!』
高條が言っていたように、他の部屋の会話が筒抜けだ。
『サラダはガッツリ系で、焼き鳥はタレでしょ!軟骨の唐揚げと、枝豆は外せないだろ~。ご飯物はもう少し経ってからでいいか!ネギ塩ホルモン炒飯がうまそうだから、後で頼むとして~。他は何が食べたーい?そうそう、忘れちゃいけないのが、だし巻き卵!大根おろしがたくさん付いてれば言うことなーし!もち明太子チーズ焼き?おっし、これも注文するぞ~!』
ドリンクの注文を終えてから、相手の好きなつまみをタッチパネルで追加しているようだ。この声といい、話し方といい、隣の客はたぶん……。
「隣の客、たぶん同じ大学のやつで、声はしないが、連れは同じ学科のやつだと思う」
高條が声をひそめながら、そう言ってきた。俺も、今だに一言も発しない由良川(確定)の相手は、チカちゃん(ほぼ確定)じゃないかと思っていた。
「親しいやつらなのか?」
「同じ学科のやつは、講義がほぼ被るから、それ関連でよく話す。サークルも同じだし。もう片方ともサークルが同じで、そいつは、一年の頃からやたらと突っかかってくる」
由良川が高條を目の敵にする訳がわかった。でも、それってやっぱりとばっちりだと思った。
「由良川、やたらと突っかかってくる方な、そいつに飲まされて記憶をなくした夜に、才原と会ったんだ」
「サークルの飲み会だったとか?」
「そう。いつもなら鮎登の、同じ学科のやつな、そばから離れないくせに、その時は最初から俺に絡んできたし」
「由良川は、サークルではいつも鮎登にベッタリなのか?」
「だな。由良川が鮎登にすげぇ入れ込んでいて、片時も離れたくないって感じだ。男同士だが、俺にはそうにしか見えねぇ」
「俺の知り合いにも、同性の幼馴染を溺愛する男がいるよ。そいつが、男とかそういうカテゴリーじゃなくて、そんなの超越した存在だって言ってた」
「ずっと一緒にいりゃ、そんなもん?そういや、鮎登と由良川も幼馴染だったな」
飲み会としか聞いていなかったけど、サークルの飲みだったのか。由良川の行動が、そうにしか見えないのはバッチリ当たっている。俺の前以外でも、チカちゃんへの想いを隠さないところが、由良川らしい。
その幼馴染二人のはっきりしない色恋沙汰に、高篠と俺は多大なる迷惑をかけられているのだけど、それは言えないので黙っておいた。
隣からは相変わらず、由良川だけが話す声が聞こえてくる。俺達が話さなくなるのもおかしいから、とりとめのない話をヒソヒソと続けた。高篠が笑う時、さっきよりも小さく控え目に「ブッ」と、吹き出すからそれがまた楽しくて、俺も声を抑えながら笑った。
「俺が高條じゃなくてよかったよ。俺がおまえだったら、高條に会えなかっただろ?」
「ブッ、何だそりゃ。才原、もう酔った?」
「酔ってない。高條とは、もう会うことはないだろうって思ってたんだ。それなのに、こうしてまた会った上に、会えてよかったって思うんだから、わからないもんだよな」
「俺も、才原の涙に絆されたわけじゃねぇけど、あんなことがあって、よかったとさえ思えてきた」
「それはちょっと…。あんなことじゃなくて、普通に会えてたらどんなによかったか。…再会して数分で泣いたなんて、ネタにしても恥ずかしすぎるんだけど」
顔が熱くなりうつむく俺を見て、声をあげて笑う高條っていうのが、お決まりのパターンになってきた。
「才原、連絡先をちゃんと交換しねぇ?メアドだけの登録で、“ショートカットの子”になってんだ」
「俺なんか、メアドを登録してもない」
「ブッ、扱いがひでぇ!」
「しょうがないだろ…。あ、でも暗記してる。そんなの高篠だけだ」
「ブッ。逆に、特別扱いになってるし」
何を言っても、こいつのツボにヒットするらしく、笑われてばかりいる。
「高條の変な笑い方がクセになってきた。聞いてると楽しくなるからいいけど、けっこうな笑い上戸だよな」
「いや、普段はこんなに笑わない。才原が普段、人前で泣かないのと同じ」
ニカッと笑う高條が意外だったけど、何気に俺のフォローを入れてくる辺りは、さすがとしか言いようがない。
連絡先の交換をしてからも、楽しく話していると、隣の個室に客が入ってきた。「ご注文が決まりましたら、お呼び下さい」と、定番のセリフが聞こえ、ふすまが閉まる音がした。
『この頃、俺への接し方が以前にも増してソークールだよな~!ここまで連れて来られたのが、ホントに奇跡だわ~!話してくれないだけならいいが、目も合わせてくれないともなると、俺だってへこむよ?ガチでへこむよ?直せるところは直すからさ、理由を聞かせてくれよ~!酒が入れば、少しは口が軽くなるだろ?ってことで、とりあえず、生大ジョッキでいい?はい、注文ピンポーン!店員さんカモーン!ハリー!ハリー!』
高條が言っていたように、他の部屋の会話が筒抜けだ。
『サラダはガッツリ系で、焼き鳥はタレでしょ!軟骨の唐揚げと、枝豆は外せないだろ~。ご飯物はもう少し経ってからでいいか!ネギ塩ホルモン炒飯がうまそうだから、後で頼むとして~。他は何が食べたーい?そうそう、忘れちゃいけないのが、だし巻き卵!大根おろしがたくさん付いてれば言うことなーし!もち明太子チーズ焼き?おっし、これも注文するぞ~!』
ドリンクの注文を終えてから、相手の好きなつまみをタッチパネルで追加しているようだ。この声といい、話し方といい、隣の客はたぶん……。
「隣の客、たぶん同じ大学のやつで、声はしないが、連れは同じ学科のやつだと思う」
高條が声をひそめながら、そう言ってきた。俺も、今だに一言も発しない由良川(確定)の相手は、チカちゃん(ほぼ確定)じゃないかと思っていた。
「親しいやつらなのか?」
「同じ学科のやつは、講義がほぼ被るから、それ関連でよく話す。サークルも同じだし。もう片方ともサークルが同じで、そいつは、一年の頃からやたらと突っかかってくる」
由良川が高條を目の敵にする訳がわかった。でも、それってやっぱりとばっちりだと思った。
「由良川、やたらと突っかかってくる方な、そいつに飲まされて記憶をなくした夜に、才原と会ったんだ」
「サークルの飲み会だったとか?」
「そう。いつもなら鮎登の、同じ学科のやつな、そばから離れないくせに、その時は最初から俺に絡んできたし」
「由良川は、サークルではいつも鮎登にベッタリなのか?」
「だな。由良川が鮎登にすげぇ入れ込んでいて、片時も離れたくないって感じだ。男同士だが、俺にはそうにしか見えねぇ」
「俺の知り合いにも、同性の幼馴染を溺愛する男がいるよ。そいつが、男とかそういうカテゴリーじゃなくて、そんなの超越した存在だって言ってた」
「ずっと一緒にいりゃ、そんなもん?そういや、鮎登と由良川も幼馴染だったな」
飲み会としか聞いていなかったけど、サークルの飲みだったのか。由良川の行動が、そうにしか見えないのはバッチリ当たっている。俺の前以外でも、チカちゃんへの想いを隠さないところが、由良川らしい。
その幼馴染二人のはっきりしない色恋沙汰に、高篠と俺は多大なる迷惑をかけられているのだけど、それは言えないので黙っておいた。
隣からは相変わらず、由良川だけが話す声が聞こえてくる。俺達が話さなくなるのもおかしいから、とりとめのない話をヒソヒソと続けた。高篠が笑う時、さっきよりも小さく控え目に「ブッ」と、吹き出すからそれがまた楽しくて、俺も声を抑えながら笑った。
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