ほしくずのよる

桃ノ木 慎

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眠れない夜

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「ボク、まだねむくないよ」
ある日の夜、「ボク」はベッドの上でつぶやきました。
ベッドの隣にあるイスに座っている「ボク」のおかあさんは、「ボク」に読み聞かせていた絵本をパタリと閉じます。
「今日はいつもよりも夜ふかしさんね」
おかあさんはやさしい声でそう言いました。
 「ボク」は夜ふかしさんの意味がよく分かりません。でも、すこしわくわくしました。
「今日はお星さまがきれいね」
おかあさんがうっすら開いていた窓をいっぱいに開けると、涼しい風がカーテンをゆらゆらとゆらしました。
「お星さま、きれいだね」
「ボク」はベッドから身をのりだして空を見ました。
「今日は少しだけ、お空を眺めていてもいいわよ」
おかあさんはそう言ってにっこりと「ボク」を見ます。
「ほんとう?」
「ボク」は目をかがやかせてベッドから下りると、窓に近寄りました。
子供部屋の大きな窓、のぞきこめばそこには広い広い夜の空が広がっています。
きらきらと光る星たちは、まるで「ボク」に話しかけてくるようです。
「あんまり遅くまで起きていてはだめよ。いい子は早くおやすみ」
と、優しい声でお母さんは「ボク」に言うと、子供部屋のドアをゆっくりと閉めるのでした。

 お母さんが部屋から出ていった後、「ボク」はひとり、夜の空をながめていました。
「お星さま、きらきら光ってみんな楽しそう。僕もお星さまと遊びたいな」
そうやって、「ボク」がポツリとつぶやいた瞬間、キラッと光るものがありました。
「あ!」
「ボク」は空に向かって指をさして、目をかがやかせました。
「ボク」はそれが何か知っていました。
「ながれ星だ!」
ながれ星は一瞬キラリと光り、夜の空を泳いだかと思うと、すぐに消えてしまいました。
「…もうおわっちゃった……」
「ボク」はさみしそうにポツリとつぶやきます。
もう空にはさっきと変わらない静かな星たちが、ないしょ話をするように小さくきらきらとかがやくだけ。
………と、その時でした。
「あ!またながれ星!」
「ボク」は、1つのながれ星を目で追いかけようとして、ふと気づきました。
「あれ?あっちにもながれ星、こっちにもながれ星?」
そう言いながら、「ボク」は空を見わたします。
すると、最初はちらほらと空に流れていた星たちが、ひとつ、またひとつと増えていくではありませんか。
どんどんながれ星は増えていき、「ボク」の目の前は、ながれ星でいっぱいになりました。
「すごい!お空がながれ星でいっぱいだ!」
……と、「ボク」が大きな声を出した瞬間の事でした。
ヒュゥッ……と涼しい風が吹き、カーテンをばさばさ揺らし始めました。
「わっ!」
風はどんどん強くなり、カーテンはばさばさと大きく揺れ、「ボク」は窓のフチにしがみつきます。
あぶない…!そう思ったときには、「ボク」の体はふわっと浮いて、窓の外に投げ出されていました。
「ボク」はギュッと目をつぶりました。
落ちると思ったからです。
しかし、いつまでたっても地面にぶつかることはありませんでした。
「ボク」はそーっと目を開きました。
「あれ?」
「ボク」は辺りを見回します。
「わぁ…!」
ふわりふわり
「ボク」は驚きました。なんと、「ボク」は空に浮いているのです。
しかも、きらきらとした星くずのような光に包まれて。
下の方を見ると、さっきまでいた窓が見えました。
「お空を飛んでいるんだ…!」
「ボク」はびっくりしました。そして、わくわくしました。
「ボク」は水の中を泳ぐようにゆっくりと腕を動かします。
するとどうでしょう。ゆっくりと体が前に進んだのです。
  もっともっと高いところに行ってみたい。そう思った「ボク」は、大きく腕を動かしました。
水の中から水面に上がるように手を動かし、足をバタバタさせます。
「おうちがどんどん遠くなっていく…!」
 ここから、「ボク」の大冒険が始まったのでした。
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