ほしくずのよる

桃ノ木 慎

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ほしくずのうみ

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 「ボク」は必死に腕を動かしていました。
もっともっと高いところへ。「ボク」は今までに体験したことが無い「空を泳ぐ」ということが楽しくて仕方がありません。
と、そこへ
「おやおや、ずいぶん深いところまで来てしまったね」
近くで声がしました。
 「ボク」はびっくりして、バランスを崩してしまいました。
あ、あぶない!
そう思った瞬間。ふわりとした何かが、「ボク」の体を包み込みました。
「ごめんごめん、急に声をかけてしまってごめんね」
「大丈夫かい?オイラがキミのすぐ近くにいてよかったよ」
「ボク」は何がどうなっているのか分からず、目をパチクリしました。
「ははは、おどろいた顔をしているね」
「そりゃそうさ、初めてここに来た子はみんな驚くのさ」
誰かと誰かが会話しているようでした。
 「ボク」が辺りを見回していると、目の前がまぶしくなりました。
「うわっ、まぶしい」
「ボク」は目を細めます。
「ああ、ごめんね。今日は空気がきれいだからよく見えてしまうかもしれないね」
「ボク」は、まぶしいと思いながらも、声のする方を見ました。
そこには、きらきらと光る何かが浮かんでいました。
「キミは、誰なの?」
「ボク」は、きらきら光る物にたずねました。
「私かい?私は月だよ」
「お月さま?」
「そうさ、キミもよく私のことを窓から見ているね」
「知ってるの?」
「ああ、よく知ってるよ。私は世界中の夜を照らしているのだから」
そういいながら、お月さまはきらきらと光りました。
「お月さまって、しゃべれるんだね」
「もちろんさ。しゃべることも、光ることもできる」
お月さまは、ぴかぴかと光ってみせました。
すると、
「そして、そんな月をオイラは隠すことができるんだぜ」
急にお月さまとはちがう声がしました。
「ボク」は誰がしゃべっているのだろうかときょろきょろします。
「こっちだよ、こっち」
どうやら声は、「ボク」の下から聞こえてくるようでした。
 「ボク」はやっと、自分が何かふかふかしたものに座っていることに気が付きました。
「やあ、オイラは雲。さっき、キミが落ちそうになっていたから助けたんだ」
「そうだったんだ。ありがとう、雲さん。雲さんもしゃべれるんだね」
「そうさ、そして、気ままに空を泳ぐこともできる」
そう言って雲は、お月さまのまわりを「ボク」を乗せたまま、くるりと回りました。
「ところで、キミはどうしてこんなに空深いところまで来たんだい?」
と、お月さまは「ボク」にたずねました。
「そら……ふかい?高い、じゃないの?」
「ここは、そらのうみ。普通の人が簡単に来られるところじゃない。のぼっていけばいくほど、空が深くなる」
「そんな中でもお月さんはかなり深いところにいるんだぜ」
と、雲が言いました。
「そうだね、私は空深いところにいる。雲くんが自由に空をすいすい泳ぐ姿を見て、うらやましく思うよ」
お月様はぴかぴかと光りました。
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