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一章 四人の勇者と血の魔王
第3話 魔を統べる者
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ー ー ー ー ー ー ー
一方その頃アルマくんは……?
ー ー ー ー ー ー ー
「……はぁ。こんなに泣いたのいつぶりだろ」
悩みの多い人生だったけれど、ロクトさん達と出会ってからは涙を流す事は全然無かった。僕は涙を拭いながら、顔を上げて空を見た。……まだ青い時間帯だ。
「というか、これからどうすればいいんだ……」
ロクトさんみたいにテイマーの僕を迎え入れてくれる冒険者は少ない。というかほぼいないに等しい。
「諦めるしかないのかな……冒険者」
人気のない路地を歩きながら、不安を取り除くために思考を続ける。大口を叩いて出て行った実家に戻るしか──────
「ん?あれは──────」
前方に、三人。
二人は男。いかにもガラの悪い雰囲気で、もう一人を挟むように立っている。
もう一人は……フードを被っている。長い、青い髪が見えるから……女の人?
「おい!見かけねぇ野郎だなぁっておい!綺麗な面してんじゃねえか!」
「ほんとですよアニキ!結構美人さんじゃないですか!」
「……」
……明らかに、絡まれてる。これで絡まれてなくて三人が仲良かったら僕はもうこの世界の全てを信じない。
そんなくだらない考えは捨てて……僕は短剣を取り出す。
「……助けなきゃ」
例え勇者パーティから追放されても。
僕は、勇者に憧れていた子供の頃の僕に嘘を吐きたくない。
目の前の困っている人を助けるのに、迷いは必要ない。
「いける?ひーちゃん」
僕は懐から─────小さな赤い鳥の頭を覗かせる。こう見えて立派な魔物で、僕の最初の相棒だ。
「僕は左の方をやるから、君は右の方を頼む」
『ぴゅい!』
胸元から飛び立ったひーちゃんと共に、真っ直ぐと男二人に向かって走っていく。
ロクトさんの元で培った戦闘経験、活かすべきは今だ──────!
──────次の瞬間。
二人の男は力を失ったように、地面に倒れた。唐突に。何の予兆も無く。
「……え?」
『ぴゅい?』
何が起こった?僕も、ひーちゃんもまだ何も……
「っ!!」
僕の目に入ったのは、外されたフードの中。青く長い髪の上には────魔族の象徴である、立派な黒い二つの角が生えていた。
「ま、魔族……なんでこの街に」
「ちょっと知り合いに会いに来てましてね~」
「なっ!?」
……一瞬にして、魔族の女性は僕の目の前に移動してきた。
『ぴ、ぴゅいぃ!』
「ひ、ひーちゃん……!」
恐れと驚きと焦りで全く動けなかった僕の前に、ひーちゃんが守るように入ってきた。
「……あら。あなた……興味深いですね。ここまで精度の高い使役能力を持ちながら、その力が不完全です」
魔族の女性は両手でひーちゃんを包み、僕の顔を覗き込んだ。
─────駄目だ。身体が動かない……!!
「あぁ、不完全なのは封印が施されているのですね。全く、誰の企みかは知りませんが……困ったものです。解除してあげますよ」
「え……」
そしてその女性は僕の額に手を当てると────────
目の前からいなくなっていた。
「ど、どこに……!」
右、左、上、下。どこを見えても人影はもういなかった。
「……なんだったんだ、一体」
夢?なのだろうか。そんな甘い考えは視界に入ってきた倒れている二人の男の姿によって打ち消された。
「あ、そうだ!ひーちゃんは……良かった、いた」
いつの間にか、僕の肩で休んでいた。
「良かった……無事で」
『それはこっちの台詞だよぉ』
「……」
右、左、上、下。
周りにいる人間は倒れた男二人だけ。声は、肩の辺りから発せられているように聞こえる。
『心配したんだからねぇ』
「……疲れてるのかなぁ、僕」
『無理ないよ。今日はもう休んだら?』
「っ!」
間違いない。これは、どう考えても────────
「ひーちゃん!?いつ喋れるようになったの!?」
『え?えぇ??』
今はこんな感じで驚いているけど────こんな力は序章に過ぎなかった。僕がテイマーとして当たり前にしてきた事も、これから僕が出来るようになった事も……普通のテイマーならあり得ないことだったんだ。
これは、そんな僕が気ままに魔物の仲間たちと暮らしていく物語────────。
ではなく。
「それでさぁサヴェルがうわああああんって泣き出して急に水魔法ぶっ放してよォ!あれはヒヤッとしたなぁーっ」
「なぁにを言ってるんですか!それを言うなら大事な手紙を涙と鼻水でぐちょぐちょにしたゴルガスの方が……」
「だから俺では無いのだー!!というかサヴェルくんはともかく聖剣をギルドマスターの部屋で放ったロクトくんには言われたくないぞ!!」
「いやだってあれは災害級の魔物であるルリマの巣だぜ!?ぶっ壊しとかないとなぁ!」
「フハハハハハ!!」
「ガッハハハハハ!!」
「ギャハハハハハハハ!!」
この男たちの物語である。残念ながら。
一方その頃アルマくんは……?
ー ー ー ー ー ー ー
「……はぁ。こんなに泣いたのいつぶりだろ」
悩みの多い人生だったけれど、ロクトさん達と出会ってからは涙を流す事は全然無かった。僕は涙を拭いながら、顔を上げて空を見た。……まだ青い時間帯だ。
「というか、これからどうすればいいんだ……」
ロクトさんみたいにテイマーの僕を迎え入れてくれる冒険者は少ない。というかほぼいないに等しい。
「諦めるしかないのかな……冒険者」
人気のない路地を歩きながら、不安を取り除くために思考を続ける。大口を叩いて出て行った実家に戻るしか──────
「ん?あれは──────」
前方に、三人。
二人は男。いかにもガラの悪い雰囲気で、もう一人を挟むように立っている。
もう一人は……フードを被っている。長い、青い髪が見えるから……女の人?
「おい!見かけねぇ野郎だなぁっておい!綺麗な面してんじゃねえか!」
「ほんとですよアニキ!結構美人さんじゃないですか!」
「……」
……明らかに、絡まれてる。これで絡まれてなくて三人が仲良かったら僕はもうこの世界の全てを信じない。
そんなくだらない考えは捨てて……僕は短剣を取り出す。
「……助けなきゃ」
例え勇者パーティから追放されても。
僕は、勇者に憧れていた子供の頃の僕に嘘を吐きたくない。
目の前の困っている人を助けるのに、迷いは必要ない。
「いける?ひーちゃん」
僕は懐から─────小さな赤い鳥の頭を覗かせる。こう見えて立派な魔物で、僕の最初の相棒だ。
「僕は左の方をやるから、君は右の方を頼む」
『ぴゅい!』
胸元から飛び立ったひーちゃんと共に、真っ直ぐと男二人に向かって走っていく。
ロクトさんの元で培った戦闘経験、活かすべきは今だ──────!
──────次の瞬間。
二人の男は力を失ったように、地面に倒れた。唐突に。何の予兆も無く。
「……え?」
『ぴゅい?』
何が起こった?僕も、ひーちゃんもまだ何も……
「っ!!」
僕の目に入ったのは、外されたフードの中。青く長い髪の上には────魔族の象徴である、立派な黒い二つの角が生えていた。
「ま、魔族……なんでこの街に」
「ちょっと知り合いに会いに来てましてね~」
「なっ!?」
……一瞬にして、魔族の女性は僕の目の前に移動してきた。
『ぴ、ぴゅいぃ!』
「ひ、ひーちゃん……!」
恐れと驚きと焦りで全く動けなかった僕の前に、ひーちゃんが守るように入ってきた。
「……あら。あなた……興味深いですね。ここまで精度の高い使役能力を持ちながら、その力が不完全です」
魔族の女性は両手でひーちゃんを包み、僕の顔を覗き込んだ。
─────駄目だ。身体が動かない……!!
「あぁ、不完全なのは封印が施されているのですね。全く、誰の企みかは知りませんが……困ったものです。解除してあげますよ」
「え……」
そしてその女性は僕の額に手を当てると────────
目の前からいなくなっていた。
「ど、どこに……!」
右、左、上、下。どこを見えても人影はもういなかった。
「……なんだったんだ、一体」
夢?なのだろうか。そんな甘い考えは視界に入ってきた倒れている二人の男の姿によって打ち消された。
「あ、そうだ!ひーちゃんは……良かった、いた」
いつの間にか、僕の肩で休んでいた。
「良かった……無事で」
『それはこっちの台詞だよぉ』
「……」
右、左、上、下。
周りにいる人間は倒れた男二人だけ。声は、肩の辺りから発せられているように聞こえる。
『心配したんだからねぇ』
「……疲れてるのかなぁ、僕」
『無理ないよ。今日はもう休んだら?』
「っ!」
間違いない。これは、どう考えても────────
「ひーちゃん!?いつ喋れるようになったの!?」
『え?えぇ??』
今はこんな感じで驚いているけど────こんな力は序章に過ぎなかった。僕がテイマーとして当たり前にしてきた事も、これから僕が出来るようになった事も……普通のテイマーならあり得ないことだったんだ。
これは、そんな僕が気ままに魔物の仲間たちと暮らしていく物語────────。
ではなく。
「それでさぁサヴェルがうわああああんって泣き出して急に水魔法ぶっ放してよォ!あれはヒヤッとしたなぁーっ」
「なぁにを言ってるんですか!それを言うなら大事な手紙を涙と鼻水でぐちょぐちょにしたゴルガスの方が……」
「だから俺では無いのだー!!というかサヴェルくんはともかく聖剣をギルドマスターの部屋で放ったロクトくんには言われたくないぞ!!」
「いやだってあれは災害級の魔物であるルリマの巣だぜ!?ぶっ壊しとかないとなぁ!」
「フハハハハハ!!」
「ガッハハハハハ!!」
「ギャハハハハハハハ!!」
この男たちの物語である。残念ながら。
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