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一章 四人の勇者と血の魔王

21話 今明かされる衝撃の過去に一同愕然……

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 どこまで話したっけか?えーっと。

 母は俺を産んで死に、採掘師の親父一人の手によって俺は育てられた。とは言っても、採掘師の都合上鉱山で連勤することが多く、俺の家には俺一人しかいない時間が多かった。
 幸運だったのは─────隣の家の住人が、『剣聖』だったことだ。

 あの頃のアイツは、今よりずっとずっと高圧的な態度だった。

「……変なヤツだけど、一応お隣さんだものね。あたしルリマ。あんたの名前は?」

 まるで自分が世界の中心とでも思っているかのような……そんな彼女の口調、生き方がなんとも、気に食わなかったのが幼少期の俺だ。俺はこんなに寂しい思いをしているのに、親が凄いというだけで幸せそうだと。

 でもしかしだが。ヤツは可愛かった。純情な俺はイチコロで恋に落ちるというかもう飛び込んだ。


「あははは!馬鹿じゃないの?あたしがあんたに胸触らせるわけないでしょ!なのに目を瞑ってって言ったら鼻息荒くして従っちゃうし、適当にカエル触らせたのに興奮してるし……あははは!」

 1人きりの時間を持て余す俺はルリマに構い続け、揶揄ったし揶揄われた。ルリマの方はキツい性格のせいでまともに友達が出来ず、一人にならないためには俺とつるむしかないという惨めな状況だった事もあり、大分仲良くなっていた。

「こらルリマ。またロクト君に意地悪したのかい?」

 ルリマは父親譲りだったのだな、とすぐ分かる赤い髪。剣聖の名は伊達ではないと理解してしまう筋肉と身体中の傷跡。
 クルグ・グリードア……ルリマの父であり、世界に名を轟かせる剣聖であり、親父がいない時によく俺の面倒を見てくれた恩師だ。

「素直な娘じゃなくてごめんな、いつも迷惑だろう」

 成功した側の人間。それなのに──────剣聖はいつもくたびれたような顔つきだった。文字やこの世界の常識を勉強させてくれたり、まるで本当の息子のように接してくれた。共に食卓を囲んだ。三人で寝た。

 何より、彼は俺に剣を教えてくれた。その事があって、俺は彼の事を『先生』と呼ぶようになった。

「どうせ採掘師になるような奴に剣術なんて教えて何になるわけ?」

 そんな事は俺も分かっていた。親父の後を継ぎ、自分の天職たる採掘師として人生を歩んでいく事はもうあの頃から決まっていたようなものだった。
 それなのに先生は俺に稽古をつけてくれた。

「採掘師だって体力は使うだろ?親父さん……ストックさんも結構な筋肉してるじゃないか」

 剣を振るのは割と楽しかった。もしかしたら、冒険者という道もあるんじゃないかという……採掘師しかありえないはずの俺の人生に、一筋の光が差し込んだ瞬間だった。

 だが、実際にはその光はヒビだったのかもしれない。

「これであたしの49戦49勝。あのさ、これ意味あるの?」

 勝てないんだ。圧倒的『才能』には何をしても勝てない。努力不足?それはそうだろう。努力が理論上どこまでも行けるものだとしても、ルリマは努力の天才でもあったのだから。

「はは……娘に超えられるのは情けないから嫌だったんだが……思ったより速く来そうだ」

 先生もそう言うほど、ルリマは強かった。歴代剣聖の中でもトップクラスの実力者になれるんじゃないか、とか。

 別に悔しくないわけじゃなかった。ムカついたし普通に隙をついてぶん殴ってやりたかった。でも、なんていうか、隣に住んでる美少女とか好きにならないのが無理ってもんじゃねえか?っていうのはもう言ったか。
 だから、そういうことだった。

「ねぇロクト。王立聖徒学園って知ってるでしょ?」

 200戦200敗とかそれくらいまで来てしまった年……15、6歳くらいの頃だったはずだ。ルリマがそう言ったのは。

 王立聖徒学園は魔法協会とナルベウス王国が協力して設立した、次世代の勇者、または勇者の仲間を育てるという……なんとも壮大な目標を掲げている学園だ。

「もちろんあたしは入学するけど、あんたはこれからどうするの?」

 ルリマが聖徒学園に入る理由。……ちょうど魔王レナ・ブレイヴ・ラグナフォートの政策に反して魔界の侵攻が始まった頃だったが、それが原因ではない。
 勇者になるため。ルリマは異常なほど勇者という存在に固執していた。

「……まさかあんた、ついて来るの?」

 好きな娘と一緒に過ごしたいという気持ちは確かにあった。だけどあの時の俺の中にあったのは……ルリマに対する怒り、苛立ち、憤り。今までずっと剣を振ってきた。勝てないと分かっていてもあいつに立ち向かった。超えることは出来なくとも、同じ分野で並び立てなくとも……ルリマを支えたいと思っていた。察してくれないあいつに勝手にイライラしてたなんて、女々しくてしょうがないな。




「おおお!あれが剣聖の娘……!」

「ルリマ・グリードア……!」

 入学試験のルリマの人気と言ったら、凄まじいものだった。受験者も教師もみんなしてルリマに注目して。
 嫉妬と誇らしさが入り混じった感情は中々体験出来ない。

「……本当に受かったのね」

 結果が発表された時、ルリマは真っ先に俺の元へ来た。自分が合格することはとっくに分かっていて、俺の合否の方が気になっていたようだった。
 俺は確かに受かったが……かなりギリギリだった。数年間剣聖に稽古をつけてもらってやっとの事で合格。……自分の才能の無さを再び実感した。

 それも、かなり卑怯な戦い方をした。

「ロクト、せっかく採掘師の才能があんだからよ、採掘師になんねぇとしても技術だけは活かせるんじゃねぇか?」

 親父が言った、採掘師のみに許されたスキル。次元魔法の亜種──────【アイテムボックス『鉱石』】だ。
 普通の袋や箱に使用する事で、鉱石類など限定で無限に収納できるようになる。

 そしてそのスキルを試合形式の試験で見事に活用させてもらった。

「なっ!?どこからそんな石ころを……な、投げるなっ!」

 剣のぶつかり合いに相手がしびれを切らし、距離を取って魔法を唱えようとした時に使うのが一番効果的だった。詠唱とかしちゃってる間に投げれば効果的。詠唱短縮ができるヤツはいたけども、サヴェルみたいに無詠唱でポンポン打てるヤツなんてそうそういない。

「あの汚ったない戦法、父さんに教わったの?ならストックさん?……そう、自分で考えたの。なら良かったわ。……いや、良くないわよ。もっと正々堂々戦いなさいよ!……じゃないと、あんたの隣にいるのが恥ずかしくなるじゃない─────」

 あんな卑怯な手を先生が教えるわけがないだろって思ったが……そういう質問をしてしまうのも無理はなかったかもしれない。ルリマにはその戦法を使ったことが無かったからだ。どうせ通じないと思って試さなかったが……もしかしたら、あれを使えば一勝くらいは出来たのかもしれない。

 やらなかったのは、心の中でどこか──────俺なんかに負けるルリマを見たくなかったからなんだけど。それに気づくのは随分後になってからだ。

「あたしは当然金紋。あんたは……ま、青銅よね」

 なんとも厳しい事にこの学園、制服の紋章で実力が分かってしまうのだ。ルリマの制服は金。その下が銀、銅……そんで青銅だ。つまり金は一番上で青銅が一番下。
 分かり切っていた結果だ。だが……どうやら青銅紋はなんとか試験は通過したものの銅の実力はどう考えてもない、という微妙な能力の生徒が配属されるらしかった。そして聖徒学園は寮制度。……俺はそんな奴らと学園生活を過ごしていく事となった。

「君さ!ロクト・マイニングだよね!?」

 まず絡んできたのは黒髪のひょろっちぃ身体つきの男。名前は……あれ、なんて言ったっけか。結構仲良かったのに。

「僕見たんだよ。君の入学試験の時の卑怯な戦い方!あれ凄いよ!もう卑怯すぎて……」

 褒めてるんだか貶してるんだかよく分からなかったが、それがきっかけでよく話すようになった。

「ふふ。君って面白いんだねぇ。私リーンっていうの!よろしくね」

 そこまで仲良くすることはなかったが、リーンともそこで出会った。

 学園での俺は、親父みたいな……俺自身の素を出していく言動をするように心がけた。ガサツというか、お調子者というか。今の俺みたいな感じだ。それが一番馴染めるんじゃないかという判断だったが、正解だった。
 おかげで青銅紋の卑怯者という噂を聞き付けた銀紋や銅紋の奴らの何人かとも仲良くなれた。

 ……だが。

「うわちょ、ロクトそれはやばいってぇ!パンツ見るためだけに金紋の風魔法使いに頼みに行くってやばすぎ!……え、ほんとに行くつもりなの?」

「ねぇ、ちょっといいかしら」

「はいはいどちら様……ってうぇぇえ!?る、ルリマ・グリードア……!?」

 入学して少し経ったある日、ルリマが俺達青銅紋の教室にやってきた。
 当然、教室中大騒ぎだ。俺を冷やかしに銅や銀の連中は来ても、金紋はプライドが許さないのか知らないが一度も来たことが無かった。廊下ですれ違った時見下すような視線を送られるくらいだ。恐らく貴族が多い事も理由の一つだろう。
 そんな奴らの中で一番ヤバい奴である剣聖の娘が突然やってきた。ルリマと幼馴染な事は誰にも言ってなかったんだ。
 それを言ってしまえば、今仲が良い奴らとの関係性が崩れてしまうかもしれないと思ったから。

「悪いけど、ちょっとコイツ借りるわね」

「え、あ……どっどーぞ!こんなやつ借りたいのならどんどん借りちゃって!」

 今思えば黒髪もやしのアイツ、入学したばっかなのに結構俺に慣れ慣れしかったな……。

「いいからさっさと歩きなさいよ。見られてるのよ?」

 ルリマは俺の手を強引に引っ張り、好奇の目をかき分けていく。廊下を抜け、学園の中心の庭を通り……ようやく人目の付かない場所で止まった。
 意味が分からなかった。わざわざ隠れるくらい視線を集めるのが嫌なら目立つような道を通らなければいいのに。

「……勘違いしないで。あたしに寄って来る男達がしつこいのよ。そいつらを騙すため!」

 実は……盲点だった。ルリマが他の男に取られる可能性。全く考慮していなかった。そもそも俺のものなんかじゃないのに取られるというのもおかしな言い方だが─────とにかくそれは嫌だった。

 ルリマが誰かとくっつくなら、俺か、聖人すぎてそいつを信仰する宗教が出来ても良いくらいの死ぬほど優しいやつかじゃないと納得出来なかった。

「は?告白は確かにされたけど……少なくとも金紋の連中なんかと交際する気はないわよ」

 だが、嬉しくもあった。学園中のやつらにルリマに彼氏がいると知れ渡り……学園中のやつらに青銅紋の卑怯者が剣聖の娘と手を繋いでいたと知れ渡ったのだ。

 ……まぁ、それによるデメリットも確かにあった。
 青銅紋、銅紋に銀紋の連中が俺を通じてルリマに好かれようとしてきたり、金紋の気取った奴らが俺に決闘を申し込んできたり。
 ───────なんだかんだ、楽しい学園生活ではあったかな。

 でも、何にだって終わりは訪れる。

「ねぇ、聞いた?岩の聖剣が出現したって!」

 ナルベウスが保有する聖剣、岩の聖剣が岩で閉ざしていた扉を開き、姿を現した。それが何を意味するかというと……聖徒学園の選りすぐりが「試練」に挑戦する。
 試練といっても単純で、岩に突き刺さった聖剣を抜く事。その単純な事が何よりも難しかった。抜けないんだ。堅すぎて。でも力で何とかなる問題じゃない。聖剣に認められた者でないといくら引っ張っても抜けない。そして多くの者が一度挑戦しただけで心を折られる────今思えば、これは岩の聖剣の拒絶のせいだったんだな。

 もちろんルリマは試練に挑戦しようとしていた。

「剣聖になるんじゃないのかって?……あのさ、普通に考えてあんな父親みたいになりたいと思う?あぁ、あんたは尊敬してるかもだけど……。あたしは剣聖では終わりたくない。もっと上を、上になりたいのよ──────」

 俺と剣を振っている時の先生はとても真剣だった。なんどもしごかれたしとてつもない量の汗を流した。だが、普段の先生は疲れたような表情だ。ずっと。生活習慣もだらしなくて、いつもルリマに叱られていたっけな。
 ……魔剣の『代償』だろうか?

「試練まであと数週間。聖剣が認める基準は何も分からないから、ひたすら訓練するしかないわね。……は?帰省?嫌なわけじゃないけど、このタイミングで?いやちが、あんたが帰ろうと私はどうでもいいのよ!別に寂しくなんか……え?私も?」

 俺が一緒に家に帰ろうと伝えると、ルリマはまるで意味が分からないという表情だった。

「試練が近いのよ!?どう考えても万全な状態にしておくべきじゃない!」

 だからこそ、と俺は伝えた。
 その頃のルリマはいつになくピリピリしていた。それもそのはず、聖剣は一度拒んだ相手には二度と心を開かないという話が結構広まってたから。もし岩の聖剣を抜けなかったら、魔王と勇者の出現周期的に次に聖剣が現れるのは俺達が死んだ後。もし生きているうちに聖剣がまた現れたとしても別の国の聖剣を狙わなければいけない。一生に一度しかないチャンスというわけだ。
 それに失敗すれば、勇者への道は途絶える。

 そうなれば父の道を辿るしかないとか、考えてたんだろう。
 俺はルリマに落ちついて試練に挑んでほしかった。焦りや不安を抱えた状態では聖剣が認めるとは思えないし、家に帰れば剣聖である先生から良いアドバイスも貰えるかもしれない。

「…………分かったわよ。そこまで言うなら……」

 お調子者の俺が珍しく真剣に訴えたのが効果的だったんだろう。気圧されたルリマはそれを隠すようにそそくさと帰省の準備を始めた。

「よく帰ってきてくれたね、二人とも」

 先生はいつも通りくたびれた表情で俺達を迎えてくれた。親父がいないのは残念だったが……久しぶりの家は心にくるものがあったし、何より安心した。

「……岩の聖剣を抜きに行くんだろ?ルリマ」

「当たり前じゃない、そんなこと」

「─────そうか」

 その時の先生の目は、寂しいような嬉しいような感じだった。……と、その時は思うようにしていた。本当は────────。

「ロクトは試練に行くのか?」

「はぁ!?行くわけないじゃない!」

 茶化すつもりなどなさそうな、当たり前のような表情で聞いてきた先生にルリマが俺より速く反応した。

「でもねルリマ、案外聖剣を抜くのは……勇者という存在は、ロクトみたいなやつだったりしそうじゃないか?」

 今度は若干冗談交じりの表情だった。
 それが、ルリマを余計苛立たせたんだと思う。

「……そんなにあたしに勇者になって欲しくない?剣聖になってほしいわけ?」

 食事中にも関わらず、ルリマは立ち上がった。

「だったらそう言えばいいじゃない!父さんみたいにずっとうじうじして情けない態度で、母さんの事引きずって──────あたしは父さんみたいになりたくないの!!」

 叫んだルリマは自分の部屋に戻った。
 俺は────声をかけてやれなかった。

「……ごめんなロクト。あの子の事を思ってここに連れてきてくれたのに……肝心の俺が台無しにしちゃったな」

 夕食を食べ終え、俺と先生は夜風に当たりに散歩しに行った。空気を読まず俺達を照らしていた星々をよく覚えている。

「…………ずっと、続けてきた」

 ──────その時、先生の顔つきが変わった。
 俺と一対一で稽古する時と同じ、真剣なものだ。

「ずっと、剣聖になってはいけないと。魔剣の代償は恐ろしいものだと。大切な人を失う事の恐ろしさを……俺の態度で伝えようとしてきた」

 ルリマの母さんはルリマを産んだ後しばらくして亡くなったという。原因は出産による身体的負担が──────魔剣の瘴気で弱った状態と重なってしまった事だ。先生はその時まで魔剣の瘴気が他人に影響を及ぼす事を知らなかったらしい。

「あいつは俺にずっと剣聖でいてほしかったと言っていた。だから強がって、ずっと俺と一緒にいるせいで、苦しんできたのに──────女一人守れなくて、何が剣聖だ」

 先生は魔剣を封印した。魔剣との契約を完全に断ち、かつての剣聖と呼ばれ栄光を手にした時の力を手放した。

「俺がどんなに剣聖として歩んだ人生の悲惨さを語っても、あの子は戦場に身を置く事を選んだ。それでも、魔剣を手に取る事がないのならまだマシだと思ったんだ……思っていた。ロクト、岩の聖剣の逸話は知っているかい?」

 その言葉を聞いて、俺は自分の心の中を鷲掴みにされたような、暗い部屋のカーテンを急に開けられたような感覚に包まれた。

「岩の聖剣に選ばれて勇者になった者は、皆死期を悟ったかのように自ら聖剣が突き立っていた試練の間に戻り、そして───────聖剣を覆う岩と同化したという、言い伝えを」

 知っていた。

 だからこそ、この家に戻ってくる事で考え直してほしかった。その言い伝えによると、歴代の岩の勇者が岩になった年齢はバラバラ。規則性も無く、老若関係ないようだった。
 本当はルリマに自分を大切にして欲しかった。

「役目を全うした?望んで岩になった?ふざけるな。世界のために戦った勇者の死に方が、そんなものであっていいはずがないだろう。戦いが終わった後は普通の人間として生きてもいいはずだろう!……家に、帰るべきだろう」

 そして先生は俺の肩を掴み─────言ってしまった。

「頼む、ロクト……!」

 本当は、先生はこんな事を言いたくなかったのだと思う。

「ルリマを勇者にさせないでくれ……」

 俺も聞きたくなかった。でも聞いてしまった。

「手段は何でもいい。ルリマに一服盛るでも、試練を邪魔するでも、何でも───」

 我に帰った先生の表情は、自分への失望で染まりきっていた。

「……すまない。忘れてくれ。こんな事……自分の中で留めておくべきだった。よりによってロクトに言ってしまうなんて─────」

 身勝手に子供の夢を折ろうとする上に、その実行を他人に委ねるという行為は褒められた事ではないだろう。

 でも。

 助けたいという思いは────俺も同じだった。

 岩の聖剣の逸話は知っていた。なのにモヤモヤを抱え続けるだけで止められなかった。ルリマの夢を否定したくなかったから。でも─────親である先生がそれをしてしまったというのなら。

 葛藤は結論を出せず、試練の日がやって来た。



「ふぁ……あ、これもしかしてもう1話続くやつか?まだ岩の聖剣登場すらしていないのだが」

なんだよもう1話って。すまん、確かに長くなりすぎたけど……あと少しで終わるよ。

「そうか、ならいい……おや、ようやく冷めたか。これで安心して飲める─────」










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岩の勇者について
ロクトは10代目岩の勇者です。そしてこれまでの9人が全員岩となり死んでいます。この世界は古い情報は何者かによって意図的に抹消されたかのように風化していきますが、勇者が岩になって死亡するという現象はとても衝撃的なため、当時の人々も悲しみと共に強く記憶に刻み込み、後世へ伝わるようにしたのだと考えられています。
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