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第四章 城下町紛争狂騒曲
第6話 ミランダの手紙 僕が知らなかった真実
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目の前に暗闇が広がっている。
自分の肉体を認識する感覚はなく、暗闇に同化しているような気がした。
これが死ってやつなのかな。
どこからか声が聞こえてくる。
「よくぞ災厄の魔女たるミランダを倒してくれました。あなたの功績は永遠にたたえられることでしょう。感謝の言葉もありません」
それは他ならぬ僕自身の声だった。
そのセリフを口にすることが僕の最大の仕事だったんだ。
漆黒の闇の中で僕はミランダが玉座に残した手紙のことを思い返していた。
彼女の手紙は僕に宛てたものではない。
そこには彼女のこれまでの思いがつづられていて、その宛先はミランダ自身だった。
『○月○日。初期化されてから2日目の朝。いつものように玉座から手紙を発見した。そして私は思い出す。これまでの日々と見張り役のあいつのことを。こうして手紙を見つける作業もあいつと初めて話すようになってからもう56度目のことだった』
『○月○日。5日目の夜。ようやくあいつと会話が出来た。マヌケな顔でボーッとしているところにいきなり話しかけた時のあいつの慌てっぷりは毎度笑える。あいつは全部きれいさっぱり何もかも忘れてるけど、仕方ない。あいつはあいつ』
『○月○日。あいつと記念撮影した。別にただの退屈しのぎで深い意味なんてない。娯楽の少ないこの洞窟に四六時中いるんだから、あいつをイジッて遊ぶくらいしかない』
『次のアップデートの際はあいつも一緒に連れて行こう。私の武勇伝をすぐ近くで見て後世に語り継ぐ役をあいつにやらせよう』
その手紙は何十枚にも及び、中身は同じことの繰り返しだった。
そう。
僕とミランダはこの前初めて仲良くなったわけじゃなかったんだ。
僕はそれよりもずっと前から何度もミランダとコミュニケーションをとっていたんだ。
だけどミランダがプレイヤーに倒されて初期化されるたびに僕の記憶も消えてしまい、ミランダとの思い出は失われていったんだ。
でもミランダは初期化された後の自分が見つけられるように、この手紙を毎回玉座に残していた。
自分自身に宛てたその手紙を。
忘れた記憶を取り戻すために、そのきっかけとなる手紙を。
僕だけが何も知らずにのうのうと過ごしていたんだ。
そして僕がその手紙を見たときに何よりも驚いたのは、彼女があの日のジェネットとの戦闘に負けた時に即座に手紙をインプットしていたことだった。
『○月○日。憎たらしいことに尼僧に負けた。ああ、また最初からやり直しか。この手紙を玉座に送っておかないと。それにしてもあいつめ。何が、よくぞミランダを倒してくれました、だ。よりにもよってあんな尼僧にそんなことを言うなんて。たまには私の味方をしろ。よくもミランダを倒してくれたなってあの尼僧を怒鳴りつけてやれ。そう言いたいけど、あいつの泣きそうな顔に免じて許してやるか』
そうだったんだ。
ミランダは僕に味方してほしかったんだ。
世界で誰一人として彼女の味方をする者はいなかった。
たった一人、暗い洞窟の奥底で戦い続けたミランダ。
そんな彼女の一番近くにいたはずなのに、それなのに僕は何も気付いてあげられなかった。
王城の兵士という役割に縛られて、お決まりのセリフを言うことしか出来なかった僕は、そんな自分自身を恥じた。
もちろんそうすることしか出来なかったのは事実だけど、仕方なかったでは済ませたくない。
僕はミランダに寄り添ってあげたかった。
嫌われ者で誰からも理解されない魔女ミランダは、本当はけっこうかわいい女の子なんだっていうことを知っているのは多分、僕だけだったから。
死にたくない。
今まで死という概念を持っていなかった僕が初めて迎えた命の終わり。
僕は今、生きることへの強い熱望を感じていた。
こんなことは生まれて初めてだった。
今ここで死ぬわけにはいかない。
ミランダとジェネットの力にならなきゃいけないんだ!
僕は心の底からそう思った。
それは心そのものが絶叫しているような願いだった。
その声のおかげかは分からないけれど、驚くべき変化が僕の前に訪れた。
暗闇の彼方にひとすじの光が差したんだ。
自分の肉体を認識する感覚はなく、暗闇に同化しているような気がした。
これが死ってやつなのかな。
どこからか声が聞こえてくる。
「よくぞ災厄の魔女たるミランダを倒してくれました。あなたの功績は永遠にたたえられることでしょう。感謝の言葉もありません」
それは他ならぬ僕自身の声だった。
そのセリフを口にすることが僕の最大の仕事だったんだ。
漆黒の闇の中で僕はミランダが玉座に残した手紙のことを思い返していた。
彼女の手紙は僕に宛てたものではない。
そこには彼女のこれまでの思いがつづられていて、その宛先はミランダ自身だった。
『○月○日。初期化されてから2日目の朝。いつものように玉座から手紙を発見した。そして私は思い出す。これまでの日々と見張り役のあいつのことを。こうして手紙を見つける作業もあいつと初めて話すようになってからもう56度目のことだった』
『○月○日。5日目の夜。ようやくあいつと会話が出来た。マヌケな顔でボーッとしているところにいきなり話しかけた時のあいつの慌てっぷりは毎度笑える。あいつは全部きれいさっぱり何もかも忘れてるけど、仕方ない。あいつはあいつ』
『○月○日。あいつと記念撮影した。別にただの退屈しのぎで深い意味なんてない。娯楽の少ないこの洞窟に四六時中いるんだから、あいつをイジッて遊ぶくらいしかない』
『次のアップデートの際はあいつも一緒に連れて行こう。私の武勇伝をすぐ近くで見て後世に語り継ぐ役をあいつにやらせよう』
その手紙は何十枚にも及び、中身は同じことの繰り返しだった。
そう。
僕とミランダはこの前初めて仲良くなったわけじゃなかったんだ。
僕はそれよりもずっと前から何度もミランダとコミュニケーションをとっていたんだ。
だけどミランダがプレイヤーに倒されて初期化されるたびに僕の記憶も消えてしまい、ミランダとの思い出は失われていったんだ。
でもミランダは初期化された後の自分が見つけられるように、この手紙を毎回玉座に残していた。
自分自身に宛てたその手紙を。
忘れた記憶を取り戻すために、そのきっかけとなる手紙を。
僕だけが何も知らずにのうのうと過ごしていたんだ。
そして僕がその手紙を見たときに何よりも驚いたのは、彼女があの日のジェネットとの戦闘に負けた時に即座に手紙をインプットしていたことだった。
『○月○日。憎たらしいことに尼僧に負けた。ああ、また最初からやり直しか。この手紙を玉座に送っておかないと。それにしてもあいつめ。何が、よくぞミランダを倒してくれました、だ。よりにもよってあんな尼僧にそんなことを言うなんて。たまには私の味方をしろ。よくもミランダを倒してくれたなってあの尼僧を怒鳴りつけてやれ。そう言いたいけど、あいつの泣きそうな顔に免じて許してやるか』
そうだったんだ。
ミランダは僕に味方してほしかったんだ。
世界で誰一人として彼女の味方をする者はいなかった。
たった一人、暗い洞窟の奥底で戦い続けたミランダ。
そんな彼女の一番近くにいたはずなのに、それなのに僕は何も気付いてあげられなかった。
王城の兵士という役割に縛られて、お決まりのセリフを言うことしか出来なかった僕は、そんな自分自身を恥じた。
もちろんそうすることしか出来なかったのは事実だけど、仕方なかったでは済ませたくない。
僕はミランダに寄り添ってあげたかった。
嫌われ者で誰からも理解されない魔女ミランダは、本当はけっこうかわいい女の子なんだっていうことを知っているのは多分、僕だけだったから。
死にたくない。
今まで死という概念を持っていなかった僕が初めて迎えた命の終わり。
僕は今、生きることへの強い熱望を感じていた。
こんなことは生まれて初めてだった。
今ここで死ぬわけにはいかない。
ミランダとジェネットの力にならなきゃいけないんだ!
僕は心の底からそう思った。
それは心そのものが絶叫しているような願いだった。
その声のおかげかは分からないけれど、驚くべき変化が僕の前に訪れた。
暗闇の彼方にひとすじの光が差したんだ。
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