74 / 89
最終章 決戦! 天樹の塔
第8話 炸裂! 新たな力
しおりを挟む
ミランダとイザベラさんの対決は一層激しさを増していた。
ミランダは黒鎖杖による打撃と黒炎弾のコンビネーションで攻め立て、イザベラさんは聖光透析で強化された身体能力を駆使して応戦する。
まだ2人ともそれほど多くの手の内を見せていないにも関わらず、戦闘は苛烈なものとなっていた。
それを示す様にミランダのライフは残り60%近くまで減り、イザベラさんのライフも残り70%を切っている。
だけど戦闘が中盤に差し掛かると、イザベラさんがミランダを押し込む場面が増えてきた。
ミランダは防御にシフトして何とかこれを乗り切っていたけれど、そんなミランダに猛攻撃をかけるイザベラさんの顔は興奮と
恍惚の入り混じった表情に彩られていた。
怒濤のラッシュを懸命に防ぎ切ったミランダはさすがに肩で息をし始めている。
それも仕方ない。
あれだけの猛攻を受けるだけで体力が消耗してしまう。
ミランダのライフはいよいよ半分近くまで減ってしまっていた。
一息つくように後方に素早く離れて間を取ったイザベラさんを深追いすることなく、ミランダは小休止して呼吸を整える。
イザベラさんは両手を広げてミランダを称える言葉を口にした。
「すばらしい。さすがミランダ。こんなにも本気で戦ったのは初めてですわ。そしてあなたはまだまだ戦える。その強さには感動を覚えます」
「チッ。いちいちうるさい女ね。まだまだ足りないっつうの。もっと全身全霊でかかってきなさい」
「ええ。そうさせてもらいましょう」
そう言うとイザベラさんは金環杖を振り上げて高らかに叫ぶ。
「天使生誕」
イザベラさんの体を包み込んでいた光が次々と空中に散布され、それが人の形を成していく。
あ、あの技は……模擬戦で見せたイザベラさんの上位スキルだ。
光は十数体の小さな天使たちに変わっていく。
彼らはイザベラさんの周囲を遊ぶように飛び回り、ミランダに狙いを定めて口を開く。
彼らの小さな口が光を帯び始めた。
く、来るぞ。
模擬戦では彼らが口から放つ光線の集中砲火を浴びて、ミランダは敗北してしまったんだ。
「さあ。これをどう回避しますか? ミランダ」
そう言って涼やかに微笑むと、イザベラさんはミランダに小天使たちをけしかけた。
小天使たちは次々とミランダに襲いかかり、口から光線を浴びせかける。
超高速の光線は撃たれてからの回避はほぼ不可能だけど、ミランダは冷静に射線を先読みしながらこれをかわしていく。
それでも小天使たちはさまざまな角度からミランダに攻撃を仕掛ける。
非常に危険な状況だ。
光線はミランダの体のほぼスレスレを通っていく。
少しでも体の位置がずれたら、腕や足を撃ち抜かれてしまうだろう。
焦る僕だけど、そこでミランダの表情を見て気が付いた。
彼女は眉ひとつ動かさずに冷静な顔で小天使たちの光線をかわしている。
見切っているのか?
もしかしてギリギリのところで光線を避けられるよう位置取りしているのかもしれない。
せわしなく宙を飛び回りミランダを狙う小天使らの光線はことごとく命中しない。
そんなミランダの様子を訝しんでいたイザベラさんはやがて納得したように頷いた。
「……なるほど。私のクセを見抜いたのですか。やりますわね。たった一度の対戦でそこまで見抜かれるとは」
クセ?
イザベラさんの言葉に僕は思い出した。
模擬戦の時に小天使たちを使ったイザベラさんの様子を。
イザベラさんは小天使を駆使する際、あまり動かなくなり、小天使たちの動きを目で追うようになる。
それは彼女が小天使たちを全て同時に自分の意思で操っているからだった。
その攻撃のクセを見抜いているから、ミランダはあんなギリギリで光線を回避できたのか。
「ですが、それならばこれはどうです?」
イザベラさんがそう言うと小天使たちの動きに変化が生まれた。
それまでは連携して動いていた小天使たちが、まるで縄から解き放たれたかのように好き勝手に動き出した。
それはまったく不規則な動きで、しかも口から光線を放つかと思われた小天使が放つのをやめたり、かと思えばイザベラさんの背後から顔を出した小天使がいきなり光線を放ったりと多彩かつ無秩序だった。
そしてイザベラさんは先ほどまでのように小天使らの動きを目で追っていない。
もしかして彼女は小天使らの制御を放棄し、彼ら自身に任せたのかもしれない。
「チッ!」
それまでギリギリのところで避けてきた光線が、ミランダの黒衣や髪の毛を掠める。
あ、危ない。
好き勝手に動く小天使たちの動向を先読みしきれず、ミランダは忌々しげに舌打ちする。
彼女はすぐに魔力で空中に上昇し、高速で吹き抜けの中を旋回する。
そんな彼女に向けて小天使たちが次々と光線を放った。
だけどミランダの飛行速度が上がり、それらは当たらない。
さらにミランダは飛びながら連続で黒炎弾を撃ち下ろす。
「ハァァァァァッ!」
黒く燃え盛る火球が爆音を響かせて床を次々と焼く。
気合いの入ったその猛攻撃を受けて、小天使が2人ほど犠牲になった。
もちろんイザベラさんはすぐに小天使を補充召喚して、ミランダへの攻撃を続ける。
「この限られた空間の中ではそう逃げ切れるものではありませんよ」
次々と放たれる小天使らの光線が吹き抜けの中をくまなく突き抜け、これを避け切れずにひとすじの光線がミランダの足を掠めた。
ミランダは苦痛に顔を歪め、飛行するその軌道がわずかにブレる。
「くうっ!」
「ミランダ!」
それでもミランダは黒炎弾による攻撃を止めない。
鳴り止まない轟音は、絶対に相手を倒すという彼女の決意の叫びのように僕には思えた。
ミランダはいつも以上に激しく黒炎弾を撃ちまくっていく。
彼女の魔力は底無しだから、そう簡単に尽きることはないけれど、その勢いは激し過ぎる。
焦っているのかムキになっているのか分からないけど、冷静さを欠いていたとしたらマズい。
僕が思わず心配になったその時、地上近くにいた小天使が次々と黒炎弾に被弾した。
ミランダの乱れ撃ちが攻を奏したのかと思ったけれど、そうじゃなかったんだ。
ミランダは頭上から黒炎弾を撃ち下ろしていたんだけど、2体の小天使たちを直撃した火球はほぼ真横から飛んできた。
そこで僕は初めて気付いた。
「あ、あれは……」
いつの間にか2階回廊の欄干の上に黒い人影が立っていたんだ。
な、何だ?
僕は目を凝らす。
それは小さな子供のような姿だけど、ミランダと同じ黒衣に身を包み、黒くて短い杖を持ったまま傲然と仁王立ちしている。
そしてその子供は1人だけじゃなかった。
次々と同じような子供が一定間隔を置いて欄干の上に立ち、それは2階の回廊をぐるりと一周するほどになった。
全部で30人近くはいる。
その姿に僕は思わず息を飲んだ。
「ミ、ミランダだ……」
そう。
その小さな子供たちは、顔も髪の毛も目の色も全てミランダと同じ特徴を備えていた。
まるでミランダが幼くなった姿そのものだ。
僕は頭上を見上げる。
そこには黒炎弾を放つのをやめて、満足げに広場を見下ろしているミランダの姿があった。
「小魔女謝肉祭」
小魔女謝肉祭……聞いたことのない技だ。
あれは魔法なんだろうか。
じゃああの小さなミランダたちは魔力で実体化されたってことか。
前にミランダは言っていた。
今回、いつもの悪神解放とは別に上位スキルとして実装してきた秘密の新魔法があると。
これがそうなんだ。
イザベラさんの使う天使生誕と同じ種類の魔法だ。
だからミランダは模擬戦の時はこれを使わなかったんだ。
あの場で使うのは芸がないとか言って。
それにしてもミランダの作りだした小魔女たちは数が多い。
イザベラさんの小天使たちの2倍近くはいるんじゃないだろうか。
「……謀りましたね。ミランダ。黒炎弾を煙幕代わりに使うとは」
イザベラさんは厳しい顔つきでミランダを見上げてそう言った。
そうか。
ミランダがあんなにしゃにむになって黒炎弾を撃ち続けたのは、イザベラさんと小天使たちの注意をそらし、その隙に小魔女たちを配置するためだったんだ。
僕の心配は杞憂に終わった。
ミランダは至って冷静だ。
「二番煎じとは恐れ入りました。ミランダ」
そう言ってミランダを挑発するイザベラさんだけど、ミランダはこれを鼻で笑う。
「フン。言っておくけど私の小魔女たちはアンタの小天使どもとは精度が違うわ。後発品のほうが出来がいいってことを思い知らせてあげる」
ミランダがそう言うと小さな魔女たちは欄干から身を乗り出し、一斉に広場の中央にいる小天使らに向けて黒炎弾を放射した。
彼女らのそれは本家ミランダのものと比較しても遜色ない威力だ。
またたく間に広場は火球が飛び交い、小天使たちは反撃もままならないまま次々と炎の餌食となって消えていく。
イサベラさん自身も無数に降りかかる火球を金環杖や強化した手で払うの忙しく、新たに小天使を呼び出すことが出来ない。
爆風と高温の渦巻く広場は完全にミランダのペースとなっていた。
小魔女たちの猛攻によって小天使らの数が見る見るうちに減っていく。
そこで僕は気が付いた。
先ほどまで頭上の空中に陣取っていたミランダの姿がいつの間にか消えていることに。
ど、どこに……ハッ!
火球が雨あられと降り注ぐ中央広場の床の上、イザベラさんの背後にミランダは立っていたんだ。
それに気付いたイザベラさんが振り返ると同時に、ミランダの指から本家本元の黒炎弾が放たれた。
「くっ!」
イザベラさんは咄嗟にこれを手で払いのけるけれど、至近距離から撃たれた黒炎弾の勢いに押されてわずかに腰が浮き上がる。
「隙ありっ!」
ミランダの声と共に黒鎖杖から4本の鎖が伸びて、イザベラさんの両手両足を縛り上げた。
「し、しまっ……」
身動きが取れなくなったイザベラさんの背中に小魔女たちが放った黒炎弾が次々と命中していく。
すでに小天使たちは小魔女らに掃討されていた。
「きゃあっ!」
黒炎弾の集中砲火がイザベラさんの体に直撃し、そのライフがどんどん減っていく。
そして……イザベラさんの真正面にいるミランダの指に黒い炎が宿った。
「こいつで仕上げよっ!」
ミランダの渾身の魔力が込められた黒炎弾が放たれ、それがイザベラさんの胸に直撃し、黄金の胸当てを吹き飛ばす。
「くはっ……」
イザベラさんのライフがついに尽きた。
ゲームオーバーだ!
イザベラさんはガックリとその場に膝をつくと、前のめりに倒れて動かなくなる。
そして彼女の頭上に3つ連なる光の輪のうち、1番上の輪から光が消えた。
ミランダは黒鎖杖による打撃と黒炎弾のコンビネーションで攻め立て、イザベラさんは聖光透析で強化された身体能力を駆使して応戦する。
まだ2人ともそれほど多くの手の内を見せていないにも関わらず、戦闘は苛烈なものとなっていた。
それを示す様にミランダのライフは残り60%近くまで減り、イザベラさんのライフも残り70%を切っている。
だけど戦闘が中盤に差し掛かると、イザベラさんがミランダを押し込む場面が増えてきた。
ミランダは防御にシフトして何とかこれを乗り切っていたけれど、そんなミランダに猛攻撃をかけるイザベラさんの顔は興奮と
恍惚の入り混じった表情に彩られていた。
怒濤のラッシュを懸命に防ぎ切ったミランダはさすがに肩で息をし始めている。
それも仕方ない。
あれだけの猛攻を受けるだけで体力が消耗してしまう。
ミランダのライフはいよいよ半分近くまで減ってしまっていた。
一息つくように後方に素早く離れて間を取ったイザベラさんを深追いすることなく、ミランダは小休止して呼吸を整える。
イザベラさんは両手を広げてミランダを称える言葉を口にした。
「すばらしい。さすがミランダ。こんなにも本気で戦ったのは初めてですわ。そしてあなたはまだまだ戦える。その強さには感動を覚えます」
「チッ。いちいちうるさい女ね。まだまだ足りないっつうの。もっと全身全霊でかかってきなさい」
「ええ。そうさせてもらいましょう」
そう言うとイザベラさんは金環杖を振り上げて高らかに叫ぶ。
「天使生誕」
イザベラさんの体を包み込んでいた光が次々と空中に散布され、それが人の形を成していく。
あ、あの技は……模擬戦で見せたイザベラさんの上位スキルだ。
光は十数体の小さな天使たちに変わっていく。
彼らはイザベラさんの周囲を遊ぶように飛び回り、ミランダに狙いを定めて口を開く。
彼らの小さな口が光を帯び始めた。
く、来るぞ。
模擬戦では彼らが口から放つ光線の集中砲火を浴びて、ミランダは敗北してしまったんだ。
「さあ。これをどう回避しますか? ミランダ」
そう言って涼やかに微笑むと、イザベラさんはミランダに小天使たちをけしかけた。
小天使たちは次々とミランダに襲いかかり、口から光線を浴びせかける。
超高速の光線は撃たれてからの回避はほぼ不可能だけど、ミランダは冷静に射線を先読みしながらこれをかわしていく。
それでも小天使たちはさまざまな角度からミランダに攻撃を仕掛ける。
非常に危険な状況だ。
光線はミランダの体のほぼスレスレを通っていく。
少しでも体の位置がずれたら、腕や足を撃ち抜かれてしまうだろう。
焦る僕だけど、そこでミランダの表情を見て気が付いた。
彼女は眉ひとつ動かさずに冷静な顔で小天使たちの光線をかわしている。
見切っているのか?
もしかしてギリギリのところで光線を避けられるよう位置取りしているのかもしれない。
せわしなく宙を飛び回りミランダを狙う小天使らの光線はことごとく命中しない。
そんなミランダの様子を訝しんでいたイザベラさんはやがて納得したように頷いた。
「……なるほど。私のクセを見抜いたのですか。やりますわね。たった一度の対戦でそこまで見抜かれるとは」
クセ?
イザベラさんの言葉に僕は思い出した。
模擬戦の時に小天使たちを使ったイザベラさんの様子を。
イザベラさんは小天使を駆使する際、あまり動かなくなり、小天使たちの動きを目で追うようになる。
それは彼女が小天使たちを全て同時に自分の意思で操っているからだった。
その攻撃のクセを見抜いているから、ミランダはあんなギリギリで光線を回避できたのか。
「ですが、それならばこれはどうです?」
イザベラさんがそう言うと小天使たちの動きに変化が生まれた。
それまでは連携して動いていた小天使たちが、まるで縄から解き放たれたかのように好き勝手に動き出した。
それはまったく不規則な動きで、しかも口から光線を放つかと思われた小天使が放つのをやめたり、かと思えばイザベラさんの背後から顔を出した小天使がいきなり光線を放ったりと多彩かつ無秩序だった。
そしてイザベラさんは先ほどまでのように小天使らの動きを目で追っていない。
もしかして彼女は小天使らの制御を放棄し、彼ら自身に任せたのかもしれない。
「チッ!」
それまでギリギリのところで避けてきた光線が、ミランダの黒衣や髪の毛を掠める。
あ、危ない。
好き勝手に動く小天使たちの動向を先読みしきれず、ミランダは忌々しげに舌打ちする。
彼女はすぐに魔力で空中に上昇し、高速で吹き抜けの中を旋回する。
そんな彼女に向けて小天使たちが次々と光線を放った。
だけどミランダの飛行速度が上がり、それらは当たらない。
さらにミランダは飛びながら連続で黒炎弾を撃ち下ろす。
「ハァァァァァッ!」
黒く燃え盛る火球が爆音を響かせて床を次々と焼く。
気合いの入ったその猛攻撃を受けて、小天使が2人ほど犠牲になった。
もちろんイザベラさんはすぐに小天使を補充召喚して、ミランダへの攻撃を続ける。
「この限られた空間の中ではそう逃げ切れるものではありませんよ」
次々と放たれる小天使らの光線が吹き抜けの中をくまなく突き抜け、これを避け切れずにひとすじの光線がミランダの足を掠めた。
ミランダは苦痛に顔を歪め、飛行するその軌道がわずかにブレる。
「くうっ!」
「ミランダ!」
それでもミランダは黒炎弾による攻撃を止めない。
鳴り止まない轟音は、絶対に相手を倒すという彼女の決意の叫びのように僕には思えた。
ミランダはいつも以上に激しく黒炎弾を撃ちまくっていく。
彼女の魔力は底無しだから、そう簡単に尽きることはないけれど、その勢いは激し過ぎる。
焦っているのかムキになっているのか分からないけど、冷静さを欠いていたとしたらマズい。
僕が思わず心配になったその時、地上近くにいた小天使が次々と黒炎弾に被弾した。
ミランダの乱れ撃ちが攻を奏したのかと思ったけれど、そうじゃなかったんだ。
ミランダは頭上から黒炎弾を撃ち下ろしていたんだけど、2体の小天使たちを直撃した火球はほぼ真横から飛んできた。
そこで僕は初めて気付いた。
「あ、あれは……」
いつの間にか2階回廊の欄干の上に黒い人影が立っていたんだ。
な、何だ?
僕は目を凝らす。
それは小さな子供のような姿だけど、ミランダと同じ黒衣に身を包み、黒くて短い杖を持ったまま傲然と仁王立ちしている。
そしてその子供は1人だけじゃなかった。
次々と同じような子供が一定間隔を置いて欄干の上に立ち、それは2階の回廊をぐるりと一周するほどになった。
全部で30人近くはいる。
その姿に僕は思わず息を飲んだ。
「ミ、ミランダだ……」
そう。
その小さな子供たちは、顔も髪の毛も目の色も全てミランダと同じ特徴を備えていた。
まるでミランダが幼くなった姿そのものだ。
僕は頭上を見上げる。
そこには黒炎弾を放つのをやめて、満足げに広場を見下ろしているミランダの姿があった。
「小魔女謝肉祭」
小魔女謝肉祭……聞いたことのない技だ。
あれは魔法なんだろうか。
じゃああの小さなミランダたちは魔力で実体化されたってことか。
前にミランダは言っていた。
今回、いつもの悪神解放とは別に上位スキルとして実装してきた秘密の新魔法があると。
これがそうなんだ。
イザベラさんの使う天使生誕と同じ種類の魔法だ。
だからミランダは模擬戦の時はこれを使わなかったんだ。
あの場で使うのは芸がないとか言って。
それにしてもミランダの作りだした小魔女たちは数が多い。
イザベラさんの小天使たちの2倍近くはいるんじゃないだろうか。
「……謀りましたね。ミランダ。黒炎弾を煙幕代わりに使うとは」
イザベラさんは厳しい顔つきでミランダを見上げてそう言った。
そうか。
ミランダがあんなにしゃにむになって黒炎弾を撃ち続けたのは、イザベラさんと小天使たちの注意をそらし、その隙に小魔女たちを配置するためだったんだ。
僕の心配は杞憂に終わった。
ミランダは至って冷静だ。
「二番煎じとは恐れ入りました。ミランダ」
そう言ってミランダを挑発するイザベラさんだけど、ミランダはこれを鼻で笑う。
「フン。言っておくけど私の小魔女たちはアンタの小天使どもとは精度が違うわ。後発品のほうが出来がいいってことを思い知らせてあげる」
ミランダがそう言うと小さな魔女たちは欄干から身を乗り出し、一斉に広場の中央にいる小天使らに向けて黒炎弾を放射した。
彼女らのそれは本家ミランダのものと比較しても遜色ない威力だ。
またたく間に広場は火球が飛び交い、小天使たちは反撃もままならないまま次々と炎の餌食となって消えていく。
イサベラさん自身も無数に降りかかる火球を金環杖や強化した手で払うの忙しく、新たに小天使を呼び出すことが出来ない。
爆風と高温の渦巻く広場は完全にミランダのペースとなっていた。
小魔女たちの猛攻によって小天使らの数が見る見るうちに減っていく。
そこで僕は気が付いた。
先ほどまで頭上の空中に陣取っていたミランダの姿がいつの間にか消えていることに。
ど、どこに……ハッ!
火球が雨あられと降り注ぐ中央広場の床の上、イザベラさんの背後にミランダは立っていたんだ。
それに気付いたイザベラさんが振り返ると同時に、ミランダの指から本家本元の黒炎弾が放たれた。
「くっ!」
イザベラさんは咄嗟にこれを手で払いのけるけれど、至近距離から撃たれた黒炎弾の勢いに押されてわずかに腰が浮き上がる。
「隙ありっ!」
ミランダの声と共に黒鎖杖から4本の鎖が伸びて、イザベラさんの両手両足を縛り上げた。
「し、しまっ……」
身動きが取れなくなったイザベラさんの背中に小魔女たちが放った黒炎弾が次々と命中していく。
すでに小天使たちは小魔女らに掃討されていた。
「きゃあっ!」
黒炎弾の集中砲火がイザベラさんの体に直撃し、そのライフがどんどん減っていく。
そして……イザベラさんの真正面にいるミランダの指に黒い炎が宿った。
「こいつで仕上げよっ!」
ミランダの渾身の魔力が込められた黒炎弾が放たれ、それがイザベラさんの胸に直撃し、黄金の胸当てを吹き飛ばす。
「くはっ……」
イザベラさんのライフがついに尽きた。
ゲームオーバーだ!
イザベラさんはガックリとその場に膝をつくと、前のめりに倒れて動かなくなる。
そして彼女の頭上に3つ連なる光の輪のうち、1番上の輪から光が消えた。
0
あなたにおすすめの小説
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした
暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。
役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。
だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。
倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。
やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。
一方、病の裏で糸を引いていたのは………。
“無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。
欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜
水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。
魔王乱立の時代。
王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。
だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。
にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。
抗議はしない。
訂正もしない。
ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。
――それが、誰にとっての不合格なのか。
まだ、誰も気づいていない。
欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる