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2章 城壁都市アドラーブル
19話 わかっていたけど簡単なお仕事じゃなかった
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ラトーナ商会が、一介の商人からアドラーブル第三位の商会まで登りつめる事が出来たのは鉱物資源だった。
元々鉱物は山師たちが、探索、採掘、運搬、販売を一手に握っていた。というと聞こえはいいが、命がけで採掘し、自力で街まで運搬し、商人や工房に売りさばかなければ生活も出来なかった。
ラトーナ商会は鉱山が発見されればまずそこに窓口を作った。生活物資を運び人を集め、小さな村を作り、そこで発掘した鉱物をすべて買い占めた。山師たちは鉱山の近くで生活ができるようになり、自力で街まで売りに行く必要がなくなった。
そして商会はその鉱山とアドラーブルの流通ルートを独占し、工業都市へ販売を広げた。この国の最も発展した工業都市は当然王都である。そうして王宮御用達の御用商人にまで登りつめた。
夜空には満天の星。この世界にも星座はあるんだろうか。今夜は満月。月が一つだけだとなぜかホッとする。二つも三つもあると本当に異世界に放り込まれたと実感してしまう。
月明かりと星明かり、倉庫街には所々常夜灯のランプが灯っているので夜でも視界は確保できる。
ラトーナ商会の倉庫には表裏二ヶ所の荷物を出し入れする大きな扉がある。全て夜は鍵をかけたまま。俺たち夜回りは隣接する事務所から出て大きな扉の横にある小さな勝手口から出入りする。倉庫の周りと中をフラムさんと手分けして巡回すればいいか。と思っていたのにおばちゃんは俺と一緒に回ってる。その代わりいろんな情報が聞けた。
「最初は他の商会も山師崩れと相手にしなかったのよねえ。鉱山へ買い付けに行かずとも鉱物資源が手に入ると喜んでたよ。そこへ先の大戦が起こった。武器の原料の鉱物資源で大儲けして確固たるいまの地位を築いたというわけ」
戦争成金ってやつかな。先の大戦ということは大きな戦争があって今は戦後。でも戦争の傷跡なんてどこにもない。何年経ったのだろう。もはや戦後ではないというくらい前の話なんだろうか。そもそもどことどこが戦ったんだろう。
そんなことも知らないのかい! と怒られそうなので質問はしなかった。
そういや俺の五ゴルド剣も対戦の末期に作られたとかいってたな。
俺たち二人は勝手口からぐるっと倉庫を一回りして元の場所に戻ってきた。
今度は中の巡回かと勝手口を開ける。倉庫の中には大小の丈夫そうな木箱が大量に積み上げれらており、常夜灯のランプが淡く照らして陰影をつけている。
その淡い光の中に人の気配がする。一瞬ドキッとして剣に手をかけるが、騎士団見習いの三人だった。
「わ、私たちも警備に参加する。外回りは私たちがやる。お前たちは中の警備しろ」
妙に気を張った女騎士さんがぶっきらぼうに言った。
「身体は大丈夫なんですか」
「こんなものなんでもない。少し油断しただけだ」
と言って外に出て行った。
なんであんなにぶっきらぼうなんだろう。あ、恥ずかしいのか。
残された見習い騎士二人は無言で頭を下げ、女騎士のあとを追って外へ出ていく。
そういや三人の名前も教えてもらっていない。
同じ見習いでも騎士団の見習いは身分の違いでそういうもんなのだろうと思ったがそうでもなかった。
「礼儀を知らないのかねえ、最近の若い子は。まああれだけ恥をかけば仕方のないことか。騎士団も落ちたもんだわ」
一人呆れているフラムのおばちゃん。
あんたは何もやってないでしょ。
その夜は何も起こらないまま、やがて日の出を迎えた。
何もないのに文句はないのだが……暇だ。夜中に夜食を食べたあとはホントに暇だ。
夜食は黒パンに焼いた肉らしきものとチーズらしきものを挟んだものと野菜スープ。思った以上に美味しかった。
人数分よりはるかに大量にあるので、帰りにもらって帰ろう。一食分がうく。
結局見習い女騎士さんとは一言も話さなかった。
倉庫街は日の出と共に人が集まり、夜中の静寂が嘘のように活気にあふれる。
ラトーナ商会の倉庫も扉を大きく開けて荷馬車に荷物の積み込みが始まる。
また一日が始まる。
昼間の警備はいらないのかとも思ったが、重たそうな荷物を片手で担ぎ上げ働いている従業員たちの屈強な身体を見たらそんな心配はいらないなあと思った。
雇い主のディオネさんといい働く人たちといい、商会の人たちの戦闘力は異常に高そうだ。俺っていらないんじゃないの?
とりあえず倉庫番のお仕事の初日が終わる。報酬は後払いらしい。やばい……
ディオネさんや事務員さんじゃなかった支配人さんに挨拶をしてラトーナ商会を後にした。
これがあと九日も続くのか。楽は楽なんだけど、なんか暇つぶし考えなくちゃ。
外回りならまだマシなんだが中の警備だと暇で暇で。眠たくて仕方がない。そうか訓練をすればいいのか。
フラムのおばちゃんは暇つぶしはいらないだろう。だって夜食を食べたあと朝まで荷物にもたれて寝てたし。
騎士見習いさんたちも騎士団から使いが来て、今日は騎士団に帰るのか事務所で身支度を整えていた。
『銀のパイプ亭』に帰って、これからギルドへ仕事を探しに行く冒険者に混ざって朝食を取る。俺にとっては夕食だけど。
部屋に戻るために鍵をもらおうとしたら、小太りなおかみさんが鍵を人質にしてニヘラニヘラとのたまった。
「宿代どうする?」
そうか、もう10日たったのか。倉庫番のお仕事が決まっててよかったあ。
「そうそう、百日分借りたら長期割引で二割引きなるけど?」
「……十日分で」
二ゴルド七シルド払った。
商魂たくましいおかみさんから鍵をもらって、二階の五号室に入る。
本当に残金がやばいことになっている。働けど働けど我が暮らし楽にならず。じっと家計簿を見る。
まあ、10日分の宿代は払った。朝食と夕食も確保できている。夜食もついている。
まだ大丈夫。
よしあとは……明日考えよう。
ベッドに座ってゆっくりしようと思ったらいつの間にか寝てしまった。
やはり始めての職種で気疲れがあったらしい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
冬馬の家計簿
入金
0
支出
宿代10日分 2ゴルド7シルド
残金2ゴルド1シルド8ペンド
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夢は見なかった。
早めに起きてサウナへ入って洗濯をして宿を出る。
今度は遅刻しないようにと、昨日もらったというか勝手に持って帰った夜食のサンドイッチを食べながらラトーナ商会へ向かう。
日没までに集合ということは日没と同時に仕事が始まるんだ。それまでに準備万端にしておかなくては。日当がいいので首にならないように印象を良くしようというのもある。
まあ、日の出と共に仕事は終わらないけど。
倉庫街に着き、店仕舞いを始めているラトーナ商会の事務所まで来ると、また何やらざわついてる。
「そういう連絡は来てないですが」
「だから今言ってるわけだ。いや本当に恥をさらして申し訳ない。あいつらは騎士団の方できっちりと再教育をする。その代わり俺たちが粛々と護衛の任務をこなすから」
「まあそうおっしゃるならこちらとしては文句はありませんが……」
事務所内には騎士団の鎧を着た人が3人。それと支配人さん。そして椅子に座ってお茶を飲んでるフラムのおばちゃん。また揉め事だろうか?
「なんかあったんですか?」
「昨日の見習い騎士三人が警備をクビになったんだとさ。騎士団の恥さらしだって。代わりに来たのがあの三人らしいねえ」
俺はフラムさんに近づいてそれとなく説明を求める。興味なさそうにお茶をグビリと飲みながら答えるフラムさん。お酒の匂いはしない。本当にお茶らしい。
「いやあ君たちにも迷惑かけたね。まったくとんだ恥さらしだよあの見習い連中は」
くだんの三人がやってきた。ということは見習いじゃないのかこの人たちは。
「二級騎士のアエロ・クロフという。こっちがバナレッド・ランテでこっちがサリュート・ダノンだ。今日から護衛の任務に就く。よろしく頼む」
「あ、こちらこそ。俺は見習い冒険者のトーマです。こっちがフラムさんです」
「元宮廷魔術師だよ」
「おおそれはこころ強い」
なんと腰の低い人達なんだろう。さすがに二級騎士……ってどれくらいの地位か知らないけれど。多分一級より下で三級より上なんだろう。ま、見習いではないということで。
ガタイのでかいおっさんのA、中肉中背の影の薄いBとCでいいか。統一された銀の鎧を着て慇懃無礼に笑ってる。
「さあ、時間は過ぎてますよ。護衛任務に着いてください」
支配人さんの号令で仕事につく。今日も長くて退屈な夜回りが始まる。
倉庫の周りを巡回する俺たち二人。いつの間にか中は騎士団の人たち、外は俺たちと役割分担が決まっていた。喧騒に埋もれた日中とちがって夜の倉庫街は静かだ。
何度目かの巡回。夜も更けてくる。残念ながら今日は月は雲間に隠れ、星もポツポツとしか見えない。空気は冷たくて気持ちいいけど。
そういや季節はどうなってるんだろう。夏とか冬とかあるんだろうか。雪が降ってる中での倉庫番なんて地獄だろうなあ。とか考えながら歩く俺たちを常夜灯が淡く照らしてる。
隣を見ると歩きながらフラムさんは杖を両手で持って盛んに体を動かしてる。
「寒いんですか?」
「ううん、準備体操。あんたもそろそろ準備しな」
「準備?」
「来るよ!」
チリチリと、毎度おなじみ首筋の産毛が逆立ち始める。
ヒュンヒュンヒュン!と暗闇から矢が飛んでくる。
「わあっ!」
俺は慌てて避ける。
ガツンと壁に刺さる矢とカンカンと杖で矢を叩き落とすフラムさん。
暗闇から武装した人たちがわらわらと湧き出てくる。
「やっとお出ましかい。トーマ、ここはいいから倉庫の中へ」
「ええっ?」
「中にも賊が入り込んでるはず。ここはあたしに任せな」
「じゃ、こいつらは…… 盗賊?」
「ぼけっとするんじゃないよ! 早く行きな!」
フラムさんは強引に俺を突き飛ばすと盗賊たちに杖を振りかぶって突っ込んでいく。
魔法は?
元々鉱物は山師たちが、探索、採掘、運搬、販売を一手に握っていた。というと聞こえはいいが、命がけで採掘し、自力で街まで運搬し、商人や工房に売りさばかなければ生活も出来なかった。
ラトーナ商会は鉱山が発見されればまずそこに窓口を作った。生活物資を運び人を集め、小さな村を作り、そこで発掘した鉱物をすべて買い占めた。山師たちは鉱山の近くで生活ができるようになり、自力で街まで売りに行く必要がなくなった。
そして商会はその鉱山とアドラーブルの流通ルートを独占し、工業都市へ販売を広げた。この国の最も発展した工業都市は当然王都である。そうして王宮御用達の御用商人にまで登りつめた。
夜空には満天の星。この世界にも星座はあるんだろうか。今夜は満月。月が一つだけだとなぜかホッとする。二つも三つもあると本当に異世界に放り込まれたと実感してしまう。
月明かりと星明かり、倉庫街には所々常夜灯のランプが灯っているので夜でも視界は確保できる。
ラトーナ商会の倉庫には表裏二ヶ所の荷物を出し入れする大きな扉がある。全て夜は鍵をかけたまま。俺たち夜回りは隣接する事務所から出て大きな扉の横にある小さな勝手口から出入りする。倉庫の周りと中をフラムさんと手分けして巡回すればいいか。と思っていたのにおばちゃんは俺と一緒に回ってる。その代わりいろんな情報が聞けた。
「最初は他の商会も山師崩れと相手にしなかったのよねえ。鉱山へ買い付けに行かずとも鉱物資源が手に入ると喜んでたよ。そこへ先の大戦が起こった。武器の原料の鉱物資源で大儲けして確固たるいまの地位を築いたというわけ」
戦争成金ってやつかな。先の大戦ということは大きな戦争があって今は戦後。でも戦争の傷跡なんてどこにもない。何年経ったのだろう。もはや戦後ではないというくらい前の話なんだろうか。そもそもどことどこが戦ったんだろう。
そんなことも知らないのかい! と怒られそうなので質問はしなかった。
そういや俺の五ゴルド剣も対戦の末期に作られたとかいってたな。
俺たち二人は勝手口からぐるっと倉庫を一回りして元の場所に戻ってきた。
今度は中の巡回かと勝手口を開ける。倉庫の中には大小の丈夫そうな木箱が大量に積み上げれらており、常夜灯のランプが淡く照らして陰影をつけている。
その淡い光の中に人の気配がする。一瞬ドキッとして剣に手をかけるが、騎士団見習いの三人だった。
「わ、私たちも警備に参加する。外回りは私たちがやる。お前たちは中の警備しろ」
妙に気を張った女騎士さんがぶっきらぼうに言った。
「身体は大丈夫なんですか」
「こんなものなんでもない。少し油断しただけだ」
と言って外に出て行った。
なんであんなにぶっきらぼうなんだろう。あ、恥ずかしいのか。
残された見習い騎士二人は無言で頭を下げ、女騎士のあとを追って外へ出ていく。
そういや三人の名前も教えてもらっていない。
同じ見習いでも騎士団の見習いは身分の違いでそういうもんなのだろうと思ったがそうでもなかった。
「礼儀を知らないのかねえ、最近の若い子は。まああれだけ恥をかけば仕方のないことか。騎士団も落ちたもんだわ」
一人呆れているフラムのおばちゃん。
あんたは何もやってないでしょ。
その夜は何も起こらないまま、やがて日の出を迎えた。
何もないのに文句はないのだが……暇だ。夜中に夜食を食べたあとはホントに暇だ。
夜食は黒パンに焼いた肉らしきものとチーズらしきものを挟んだものと野菜スープ。思った以上に美味しかった。
人数分よりはるかに大量にあるので、帰りにもらって帰ろう。一食分がうく。
結局見習い女騎士さんとは一言も話さなかった。
倉庫街は日の出と共に人が集まり、夜中の静寂が嘘のように活気にあふれる。
ラトーナ商会の倉庫も扉を大きく開けて荷馬車に荷物の積み込みが始まる。
また一日が始まる。
昼間の警備はいらないのかとも思ったが、重たそうな荷物を片手で担ぎ上げ働いている従業員たちの屈強な身体を見たらそんな心配はいらないなあと思った。
雇い主のディオネさんといい働く人たちといい、商会の人たちの戦闘力は異常に高そうだ。俺っていらないんじゃないの?
とりあえず倉庫番のお仕事の初日が終わる。報酬は後払いらしい。やばい……
ディオネさんや事務員さんじゃなかった支配人さんに挨拶をしてラトーナ商会を後にした。
これがあと九日も続くのか。楽は楽なんだけど、なんか暇つぶし考えなくちゃ。
外回りならまだマシなんだが中の警備だと暇で暇で。眠たくて仕方がない。そうか訓練をすればいいのか。
フラムのおばちゃんは暇つぶしはいらないだろう。だって夜食を食べたあと朝まで荷物にもたれて寝てたし。
騎士見習いさんたちも騎士団から使いが来て、今日は騎士団に帰るのか事務所で身支度を整えていた。
『銀のパイプ亭』に帰って、これからギルドへ仕事を探しに行く冒険者に混ざって朝食を取る。俺にとっては夕食だけど。
部屋に戻るために鍵をもらおうとしたら、小太りなおかみさんが鍵を人質にしてニヘラニヘラとのたまった。
「宿代どうする?」
そうか、もう10日たったのか。倉庫番のお仕事が決まっててよかったあ。
「そうそう、百日分借りたら長期割引で二割引きなるけど?」
「……十日分で」
二ゴルド七シルド払った。
商魂たくましいおかみさんから鍵をもらって、二階の五号室に入る。
本当に残金がやばいことになっている。働けど働けど我が暮らし楽にならず。じっと家計簿を見る。
まあ、10日分の宿代は払った。朝食と夕食も確保できている。夜食もついている。
まだ大丈夫。
よしあとは……明日考えよう。
ベッドに座ってゆっくりしようと思ったらいつの間にか寝てしまった。
やはり始めての職種で気疲れがあったらしい。
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冬馬の家計簿
入金
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支出
宿代10日分 2ゴルド7シルド
残金2ゴルド1シルド8ペンド
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夢は見なかった。
早めに起きてサウナへ入って洗濯をして宿を出る。
今度は遅刻しないようにと、昨日もらったというか勝手に持って帰った夜食のサンドイッチを食べながらラトーナ商会へ向かう。
日没までに集合ということは日没と同時に仕事が始まるんだ。それまでに準備万端にしておかなくては。日当がいいので首にならないように印象を良くしようというのもある。
まあ、日の出と共に仕事は終わらないけど。
倉庫街に着き、店仕舞いを始めているラトーナ商会の事務所まで来ると、また何やらざわついてる。
「そういう連絡は来てないですが」
「だから今言ってるわけだ。いや本当に恥をさらして申し訳ない。あいつらは騎士団の方できっちりと再教育をする。その代わり俺たちが粛々と護衛の任務をこなすから」
「まあそうおっしゃるならこちらとしては文句はありませんが……」
事務所内には騎士団の鎧を着た人が3人。それと支配人さん。そして椅子に座ってお茶を飲んでるフラムのおばちゃん。また揉め事だろうか?
「なんかあったんですか?」
「昨日の見習い騎士三人が警備をクビになったんだとさ。騎士団の恥さらしだって。代わりに来たのがあの三人らしいねえ」
俺はフラムさんに近づいてそれとなく説明を求める。興味なさそうにお茶をグビリと飲みながら答えるフラムさん。お酒の匂いはしない。本当にお茶らしい。
「いやあ君たちにも迷惑かけたね。まったくとんだ恥さらしだよあの見習い連中は」
くだんの三人がやってきた。ということは見習いじゃないのかこの人たちは。
「二級騎士のアエロ・クロフという。こっちがバナレッド・ランテでこっちがサリュート・ダノンだ。今日から護衛の任務に就く。よろしく頼む」
「あ、こちらこそ。俺は見習い冒険者のトーマです。こっちがフラムさんです」
「元宮廷魔術師だよ」
「おおそれはこころ強い」
なんと腰の低い人達なんだろう。さすがに二級騎士……ってどれくらいの地位か知らないけれど。多分一級より下で三級より上なんだろう。ま、見習いではないということで。
ガタイのでかいおっさんのA、中肉中背の影の薄いBとCでいいか。統一された銀の鎧を着て慇懃無礼に笑ってる。
「さあ、時間は過ぎてますよ。護衛任務に着いてください」
支配人さんの号令で仕事につく。今日も長くて退屈な夜回りが始まる。
倉庫の周りを巡回する俺たち二人。いつの間にか中は騎士団の人たち、外は俺たちと役割分担が決まっていた。喧騒に埋もれた日中とちがって夜の倉庫街は静かだ。
何度目かの巡回。夜も更けてくる。残念ながら今日は月は雲間に隠れ、星もポツポツとしか見えない。空気は冷たくて気持ちいいけど。
そういや季節はどうなってるんだろう。夏とか冬とかあるんだろうか。雪が降ってる中での倉庫番なんて地獄だろうなあ。とか考えながら歩く俺たちを常夜灯が淡く照らしてる。
隣を見ると歩きながらフラムさんは杖を両手で持って盛んに体を動かしてる。
「寒いんですか?」
「ううん、準備体操。あんたもそろそろ準備しな」
「準備?」
「来るよ!」
チリチリと、毎度おなじみ首筋の産毛が逆立ち始める。
ヒュンヒュンヒュン!と暗闇から矢が飛んでくる。
「わあっ!」
俺は慌てて避ける。
ガツンと壁に刺さる矢とカンカンと杖で矢を叩き落とすフラムさん。
暗闇から武装した人たちがわらわらと湧き出てくる。
「やっとお出ましかい。トーマ、ここはいいから倉庫の中へ」
「ええっ?」
「中にも賊が入り込んでるはず。ここはあたしに任せな」
「じゃ、こいつらは…… 盗賊?」
「ぼけっとするんじゃないよ! 早く行きな!」
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魔法は?
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