男女比1対999の異世界は、思った以上に過酷で天国

てりやき

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25話 厄介

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 帝都が襲われた。

 そう聞いて、皇帝戦争開催に合わせて十二家のどこかが兵を動かし、クーデターでも起こしたのかと思ったが、どうやらそれは違ったようだ。

「帝都を襲ったのは巨大な木です。巨大な木が一晩で帝都の全てを覆ってしまったんです。私達は外周部にいたので、運良く逃げ出せましたが、帝都にいた他の人は皇帝陛下も含め、その中で……」

 衛兵さんは信じられないでしょうがと、帝都が襲われた情報を話してくれたが、信じるしかないんじゃないかな。
 そんなことを起こせる存在が、一つ思い当たるから。


《ユノ、どう思う? 世界樹を消滅させたエルフの仕業か?》

《ん~、そうねえ》

 ユノが世界樹消滅の犯人ではないと思っている俺は、ユノに話をふってみる。
 
 正直に言うと、ユノと会って戦闘になった時、彼女が世界樹を消滅させた犯人かと思った。
 しかし戦闘中の彼女の話からは、彼女が犯人や共犯者と想像出来ず、判断に迷った。

 そしてそれは、この同居状態になってもしばらく続いたが、今は結論が出ている。

 その結論が出た理由は、魂の状態で接しているせいか、何となくだが分かったからだ。

 ああ、もう一つ分かったことがある。
 ユノのアイリさんへの感情だ。
 ユノがあそこまで嫌悪したのは、あまりにも強過ぎる憧れの結果なんだよな。

 まあ、この同居生活が大変なことになるから、それは本人には言わないけけど。

 
《木で帝都全てを覆い人々を閉じ込める……人が出来る芸当ではないわよね。エルフでも一晩でっていうのは、ちょっと難しいわ。何か強力な力を補助に使えば別だけど》

《世界樹とか?》

《そうね。それで? どうするの?》

《エルフ関連なら、なおさら行くに決まってる》

《あっそ》



 ★★★



 帝都から逃げてきた来た人達を、また帝都に連れて行くわけにはいかない。
 だから彼女達には旧サジタリウスの街の方へと向かってもらい、俺達は急ぎ帝都へと出発した。

 そして翌日、帝都を確認出来る場所へとやって来たが、想像以上に大変なことになっている。

 遠方から皇帝戦争を見に来たが帝都に入れない人達が、ウネウネと曲がりながら帝都を飲み込んだ巨大な木の周りに、何千人といるのだ。

 そしてそれは、ちょっと厄介なことを表している。

 帝都を囲む人達の中には、皇帝戦争に参加する家の人間が見えないんだが、それは俺達のようにギリギリ到着ではなく、早めに帝都入りしているからだろう。
 つまり今帝都の中には、皇帝の兵やそれらの家の戦力が閉じ込められているんだが、それらの戦力をもってしても、木を破壊して出て来れないっていうこと。


《……ちょっと、あれ》

 世界樹が関連していたら、俺の収納スキルで収納は出来ない可能性がある。
 だからその場合に備え、他の作戦を考えようとすると、ユノの驚いた声が。

《ん~何か見えるのか? 俺には分からないが》

《見えるでしょ、あれだけ大きいのよ》

《大きい? ああ、木のことか? 確かに巨大過ぎだが、それが?》

《分からないの? あれ、普通の木じゃないわよ》

《まあ、普通じゃないな。厄介そうだし》

《はぁ、厄介そうとかじゃないわよ。気付かない? あれ、世界樹よ》

 ………………そりゃあ、確かに厄介どころじゃないな。



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