幼馴染とマッチポンプ

西 天

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第4章

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 僕に彼女(フリ)がいると知れ渡ったら…。恋人のフリをすると決まった時点でいずれは誰かに知られてしまうのは覚悟はしていたんだけど…
 よりよって副会長の高柳さんとは,それでもって朝からかよ。
 
 どこの学校にもヒエラルキーというものは存在する。この雪が丘学園とてそうである。学園内における部活や勉学そして人間性を総じ知らず知らずに生徒は皆,自分以外に順列をつけている。これがまた厄介だ。階層が上に行くほどその人の行動に影響されやすく,言動においては上層の生徒が噂を流せば不思議とその人よりランクが低い生徒は噂に根拠などなくとも真実だと思い込みやすくなる。会社も同じことが言えるのだろう。そう考えるとこういったカーストやヒエラルキーというのは必須科目ともいえるのかもしれない。
 そのヒエラルキーのトップ階層に値する副会長の高柳さんに知られてしまった。彼女が面白がって朝の事を話そうものならその話は瞬く間にほとんどの生徒に知れ渡ってしまうかもしれない。
 どんなに目立たない生徒でも彼氏,彼女がいるとなるとある程度上の階級に位置付けをされる。故に彼女がいないさらに友達も少ない僕はただただ目立たない生徒でしかなく下級に居座ることができていた。まあそれでも上位階級に位置付けられている相沢と一緒にいるから最下層ではなかったんだけど。

 高柳さんとは同じクラスなので嫌でも会うことにあるし,会うも何も僕の左隣の席が彼女なのだから接触は避けられない。ついでに言うと相沢は僕の後ろの席である。教室の一番後ろ,廊下側に位置するのが相沢。その前に僕。さらにその横が副会長。知らない人よりは幾分いいが今日に限って言うと席替えをしてほしい。しかし一学期初日に席決めをしてからは二年生が終わるまではこの席で過ごさなくてはいけないのがわが校の不思議なポイントだ。これでは友達ができないではないか。
 
 ブルーな感情が僕を蹂躙しそうになる。このまま早退してしまいたい。今日はなるべく一人でいたい。幸い相沢はサッカー部の朝練でまだ教室にはいないようだ。
 ガラ―
 教室の後ろのドア開く。彼女が教室に入った瞬間ほとんどの人が彼女の美貌に一度は目をやるだろう―教室に入ってきたのは持ち物チェックを終えた高柳さんだった。
 彼女は僕を見るなり温柔に笑い話しかけてきた。
「さっき振りね。かなり可愛い彼女をお持ちの陽葵君」
 今日の彼女はいつもより棘があるし,クラスのみんながいる前でなんてことを言うんだ。
 しかし幸いにして生徒も少なく誰も聞いてはいないようだった。
「聞こえてたらどうするんだ。ヤギさんがその話をしたら僕は学園生活を平穏に送れなくなる」
 僕は彼女の事を役職で言ったりもするが役職も苗字も文字数が多い,なにより彼女がよく生春巻きを食べているのでこんな呼び方をしている。
「なんで? こんな面白い話題話さない方が狂気の沙汰っていうもんだよ」
「その思考が狂気の沙汰ですがね。とにかくしばらくは黙ってて下さい」
「せっかくあんな可愛い子と付き合ってるのにぃ。そこまで隠す理由がわからん。でも陽葵君がそこまで言うんならしばらくは話さないでおくよ」
 何か含み持った言い方だったのが気がかりだが一応は口留めは出来たみたいだ。
 しばらくすると相沢も朝練が終わり教室に入ってきた。今この場においてはいつも通りの時間がようやく始まった。
 相沢が昨日の事で何か聞いて来ると思っていたが,なぜか昨日の事は触れられなかった。

 放課後まで無事に過ごすことが出来て今日のところは一先ず安堵する。しかしこれがこれから毎日ともなるとやっていけるのだろうか。そもそも柚葉が言い寄ってくる男が多いということでこんなことになっている。いつか必ず盾として扱われる日が来る。
 それまではいつも通りに日常を送っていいものだろうか? 
 柚葉の近くにいなくてはそもそも盾としての効果がないのではないのだろうか?
 そんな利己にも似た考えを巡らせる。例え告白されても振ってしまえば終わりかもしれない。振るという行為自体を人より多く経験していても,それを慣れているということには結びつかない。人の気持ちを考えれる柚葉なら殊更だ。柚葉自身も少なからず心に痛みを覚えるだろう。
 だからと言って僕と恋人のフリをするというのはいかがなものかとも思うが、柚葉は大きな心の痛みを二年前に味わっているのも事実。これ以上負担をかける訳にはいかないのでは。
 ウソの彼氏でなくあくまで幼馴染として考えていると自然と,事が始まったニュートンの前にいた。
 今日も今日とて疲労困憊。つかの間の休息,昨日食べれなかったモンブランそして紅茶でもすすり明日への英気を養うか。
 店内に入ると見慣れたハニーブラウンの髪色をした女性がすでに座っていた。
 疲労困憊だといっているだろうに。これだから神なんていないと思えてしまう。つかの間も許してくれない神などかみではない。
 
 
 
 

 
 
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