終末の世界で

雨宮 叶月

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第3話 涙

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それからも引き続き4人は依頼をこなしていった。


遠い地の依頼をよく選び、たまに強化練をする。

ロイはまだ夢を諦めていなかった。3人も、最初は馬鹿にしたり、信じていなかったが、少しずつロイの夢に引きづられていったようだった。



……ロイが荒野を出て、3人と出会って、そしてヌイを失って約2年半がたった。



「……ゴホッ、ゴホッ」



「…エリス、大丈夫?」


咳き込むエリスに、ロイは声をかけた。



4人は、廃墟の街に来ていた。難しいとされていた依頼を達成し、その報酬として得たお金で寄り道をする途中だった。


エリスは最近咳をすることが多くなった。たまに辛そうに目をぎゅっとつむっている。


「……大丈夫大丈夫!ごめんね、ちょっと風邪気味で。」

ぱっと笑顔になり言う。



「…辛かったら言ってくださいね。ちゃんと休むのですよ?」



「ありがとう」


そこで、エリスが髪を耳にかけた。2回。


エリスを除く3人は目配せをする。



……髪を耳に2回かけるのは、エリスが嘘をついた時の癖だ。



ロイたちは大通りに出て、宿を探した。



そして、そこでエリスを強制的に休ませる。



………しかし、エリスの容態は急激に悪くなっていった。



そこでアイリーンが医者を連れてきた。



「………」


「ゴホッ、…」



医者が沈黙した。そして、恐る恐る口を開く。



「………エリスさんは、心臓病です。治療をしても治る見込みはありません」




「…はぁ?」


カイルがイライラした様子で聞き返す。しかし、その声は震えていた。


「…何、言ってんだよ。エリスがそんな、治らないなんて、」


カイルは言葉を続けられなくなる。



「……エリス?」


アイリーンがエリスの様子に気が付く。



エリスも、震えていた。



「…すみません、私は一度退室します。また何かございましたらお呼びください。」



医者が空気を読んだように部屋を出た。




エリスがゆっくりと話し出す。


「……ごめん、ごめんね。心配かけちゃったよね。…ゴホッ……実は、みんなと出会う前から心臓病っていうのは分かってたんだ。もう少し、長く生きれると思ったのにね……。」



「……なんで、……」



「…みんなと、一緒に旅を続けたかった。すごく、楽しかったの。人生で一番。この幸せが、いつまでも続いたらいいのに、って思って。…でも私、もうダメみたい。迷惑かけちゃって、ごめん。」


エリスは、ふにゃりと笑った。





エリスはどんどん衰弱していった。

私たちは毎日花を買ってきた。
フルーツも選んだ。



「…そんな、いいのに。…でも、ありがとう。」


エリスは申し訳なさそうに、でもふわっと笑う。




しかしある日、すでに起き上がれなくなっていたエリスが、泣いていた。



私たちはエリスのもとに集まる。




「……ごめんね。私、もうダメだ。胸のあたりが、すごく痛いの。視界がかすんで見える。」



「そんな弱気なこと言うなよ…!」

カイルが声を上げる。



「ううん。……みんな、今までありがとう。すごく、楽しかった。カイルは、私たちを引っ張ってくれて、アイリーンは、こんな私にも優しくしてくれて、ロイは、希望を見せてくれて………」



話していくうちに、どんどん声が細くなり、震える。


やがて、声を出して泣き始めた。



「うぅ、ぐすっ、っもっと、みんなといたかった…!」


アイリーンが、手を握るのに力を入れる。


「…朝起きて、みんなの声が聞こえて、名前を呼んでくれるのが嬉しかった。夜、あたたかいご飯を食べながら笑い合うのが、幸せだった。…一緒に歩いて、くだらない話して、…それだけで、すごく、すごく嬉しかったの…!」



「エリス……」



カイルは涙を必死に堪えていた。


「…私も、貴方といれて良かった。貴方がいたから、ここまで来れた…!」


アイリーンも腕で涙を拭う。しかし、涙は止まらないようだった。




…ロイも、エリスの枕元に膝をつき、言葉を探していた。
エリスと一緒にいれて嬉しかった。それだけじゃ、伝わらない気がした。



「……エリス、ありがとう。私たちと、旅をしてくれて。…エリスがいたから、夢を信じ続けることができたんだよ。だから…、だから…!」


言葉が続かない。いつの間にか、涙が溢れ出した。止まらない。止まらない。


笑顔でいたかったのに。



「エリス、お前がいなかったら俺たちはダメなんだよ…!」


カイルも目元を赤くしていた。



それでも、誰よりも泣いていたのはエリスだった。



「みんな、ありがとう。…大好きだよ」



そう言うと、エリスは手を上に向かって伸ばした。




夕日の光が照らしたその姿は、とても美しくて、目が離せなかった。


「でも」


表情が変わる。



「……夢を信じてみたかった」



夕日の光がひときわ強くなった。

そして、それに合わせるようにエリスは目を閉じた。


手は元の位置に落ちた。






 



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