終末の世界で

雨宮 叶月

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第4話 勇敢

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エリスは、たくさんの花が美しく咲き乱れる地に丁寧に弔った。

誰も何も言わなかった。

ずっとここにいるわけにもいかないということで、とりあえず移動することにした。

ギルドの受付嬢から勧められた場所を目指して、試行錯誤しながら地図に沿って歩く。


やがて、ロイたちは高くそびえ立つ木と、崩れかけた塀に囲まれた場所を通った。


雨の後の、少し濁った匂いがした。


ところどころ、白い壁と壊れたベッドや棚などの一部が見える。

その光景は、まさに 『廃墟』だった。




「……あとどれくらいで着くのだろう……。」

「……この道を真っ直ぐ行って、えっと、左?いや、右に行けば着く、と地図には書いています。」

「…40分はあると思う」

少し話をしていた、その時だった。



「グルウゥゥゥッ…!」

「え…」


魔物の声がして、咄嗟《とっさ》に身構える。

しかし、その姿を見てロイたちは唖然とした。


…黒狼・フェンリス。


古くから『災いをもたらす獣』とされ、出会ったら生き残れないとされている。

全長は馬車の2倍ほど。
瞳は紅く燃え、呼吸のたびに黒い霧がゆらりと立ちこめる。

一歩踏み出しただけで地面が沈み込む。


「何でこんなところにいるんだよ…!」

カイルが剣を取り出しながらフェンリスを睨む。

「でも……戦うしかないよなぁ!じゃあ行くぞ!」

カイルの合図に続き、ロイたちも飛び出した。


「…グルゥ」

しかし、フェンリスは手強かった。

剣は届く前に躱《かわ》され、魔法は打ち返される。逃げようとしても道を塞がれる。
いくら強化しても、倒せるまでの道のりは遠い。


そんなことは、みんな分かっていた。

やがて飽きてきたのか、フェンリスが反撃を始める。

「ぐっ…………はぁっ、はぁっ」

防御もあまり意味はなく、3人同時に致命傷を負う。


容赦なく飛んでくる攻撃。
ロイは、怪我がひどく動けないアイリーンを庇《かば》った。



「……っ俺は、生き伸びるんだよ!仲間と一緒に!」


それでも血が止まらないアイリーンを見かねて、カイルが再度フェンリスに突っ込む。


しかし、その途中でガクンと膝が下がった。


3人はもう限界だった。

ロイはなんとかして立ち上がる。

「私は、絶対に諦めない…」


すると、カイルがふっと微笑んだ。

「……ロイ、お前はアイリーンを連れて逃げろ。俺が囮になる。」

この殺風景な景色と、その優しい笑顔があまりにも対照的で、周りの景色が見えなくなった。


「…何言ってるんですか、カイル」


フェンリスは楽しむように目を細めている。


「…俺はもうダメだ。だから、アイリーンと逃げろ。……じゃなきゃ、俺の護衛役の意味なんてないだろ?」


「そんな、囮には私がなるから…!」

ロイはカイルを止めようとした。
しかしカイルは強い意志を持った瞳で答える。

「ダメだ。ロイ、お前は『緑の大地』を見つけるんだろ?」

カイルの声が震える。

「……ロイと、アイリーンと、…エリスといられて、楽しかった。ありがとう。」


そう言ってくるっと回り、ロイたちに背を向ける。

「カイル……」

「行け」

カイルはぼろぼろになった剣を構え直す。

ロイは唖然としたままアイリーンを背負う。

フェンリスが跳びあがる。

「行け!」

その声を聞き、ロイは駆けだした。



「……お前の見る景色を、俺も見たかった」


消え入るような、でもはっきりとしたその言葉は、ロイに届いたかどうか分からない。


カイルは口角を上げる。

そして、フェンリスに向かって叫んだ。


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