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強面の三十路兵士団長 × 若きエリート騎士団副長
7.兵士団長 × 騎士団副長(完)
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「アンタは例の症状で困ってる、ってのに……。オレはアンタの身体で楽しんでたんだ。……悪いな。」
モナイが顔を赤らめた理由を、ナンディは誤解したのだろう。
一瞬、普段は強い意思を見せる瞳を伏せる。
だが再び視線を上げた時のナンディは、余計な葛藤を何処かに捨てて来たような表情をしていた。
その顔に。怖いと称される事が多い、その顔に。
言葉を発せず、モナイは見惚れた。
「ヨーナ副長、アンタに触りたい。……抱きたい。」
告げられる低い声がゾクリとして心地良い。
腹の辺りが切なくなったモナイから、意識しないままに溜息が零れる。
「オレが触れるのは、症状を緩和する為に必要な、出来るだけ最小限に抑える。下心があるオレにされるのは嫌だろうが、アンタは目を瞑って我慢してるだけでいい。」
溜息を吐いた事も、先程のナンディの誤解を助長したようだ。
葛藤は捨てても欲情は捨てていない目をしたナンディは、心情を曝け出した上でモナイの返答を待った。
「症状が治まったら……ヨーナ副長がもう充分だと判断したなら、その時点で止める。……ように、する。約束する。だから…」
単なる対処療法を求めているだけの、モナイの意思を尊重したい。
そう思った気持ちは嘘ではなかったが。
止める。と言い切れないのは、ナンディがモナイに対する欲をハッキリと認識してしまったからだ。
言い切った方が良いという事は分かっている。言い切れる自信が無かった。
らしくもなく口籠り、終いには声を途切れさせるナンディを、モナイは呆然とした表情で見ていた。
もちろん、ナンディにショックを受けたからではない。
ナンディが「止める」と言った時に、それを寂しく思う感情に気が付いたからだ。
「……マサラー、団長。」
そうであれば。
巧く利用出来そうな状況にありながら、ナンディがそうしなかったように。彼が自らの不利になるような事を告白したように。
自分もナンディに告げなくてはならない。
「貴方も、私を……買い被っているのでは……?」
これを言えば自分の方こそ軽蔑されるかも知れない。
そう思ったら口が渇き、無意識で唇を舐めた。
ゴクリと咽喉を鳴らしたナンディと、視線が絡み合う。
「対処療法を求めていたのは、その通りだが。……相手は誰でも良かったのだ。上司や部下である騎士でさえなければ、誰でも。」
今度はナンディが、驚いたように目を見開く番となった。
あのエリート第二騎士団副長がセックスの相手を『誰でも良い』などとは、とても考えられない。
「マサラー団長を選んだのは、頼みを聞き入れて貰えそうな『下地』があった事と……団長という立場上、私との事を言いふらさないだろうという、計算をしたからだ。……私も充分、酷かろう?」
「それは……仕方ねぇ、だろ。」
ぎこちなく慰めるナンディの言葉に頭を振る。
掴んでいた枕を離し、シーツに手を付いて四つん這いになった。
うつ伏せで膝を立てているのは変わらないものの、上体を枕に預けていた時よりもナンディが近くなったように感じて、モナイは唇に弧を描いた。
「症状を緩和する為に仕方なく、と思っていたのは最初だけだ。……私だって…、高潔な人物ではない。」
言いながらモナイは、目的の所へと片手を伸ばす。
行き着く先をナンディに気が付かれる前に、モナイはそれに指を絡めた。
息を呑むナンディがこれ以上無く動揺するのを、喜んでモナイは咽喉奥で笑う。
「団長が指であんなに嬲るから……。もう…っ、足りない……コレが、欲しい。」
「っ…くぅ……。」
モナイに掴まれた屹立が、ドクッドクと脈打つ。
直に触られる以上の興奮をナンディは感じていたし、モナイの瞳にも欲情の色が見えた。
「もう、誰でも良くはない。私は……貴方が良い。」
「ヨーナ副長……。本当にいいんだな?」
「貴方が……。貴方に、抱いて欲しい。」
ナンディから目を逸らさずにモナイは頷く。
それを確認したナンディは今度こそ、慎重に、大胆に、モナイの身体を割り開いた。
時間を掛けて馴染ませたモナイの尻穴は、異物感が全く無いとまでは言わないものの、痛み無くナンディを受け入れ。異物感を大きく上回る初めての快楽を残しつつ、対処療法としての目的を達成した。
* * *
「ヨーナ副長、症状の方はどうだ?」
「問題無く治まったようだ。これでしばらくは保つ……と良いのだが。」
全てが終わった頃には相当な深夜になっていた。
流石に翌朝、兵士団長が第二騎士団副長の部屋から出るのも拙い為、ナンディは自室に戻る為に身支度をする。
カッチリした出で立ちの彼は、誰が何処からどう見ても、強面の兵士団長だ。
シャワーを済ませて寝間着を纏ったモナイは、それを見ながら呟いた。
「ナルホド。……治療薬の開発が進まないわけだ。」
治療という建前で、あれだけ気持ちの良い事が出来るのだから……。
魔術師も治療術師も熱心にならない『本当の理由』が分かった気がする。
「なんつーか、どれぐらいかは分からねぇけどよ……。」
「……ん?」
「もし、また症状が出たら、オレに頼れ。……あ、あんまり多数に知られたくねぇだろ?」
「そっ……そ、そうだな…もし、……良ければ。」
変な事を考えていた所為か。
自分でも分かるくらい、冷静なエリート第二騎士団副長らしからぬ返答をしてしまうモナイだった。
――― 完
モナイが顔を赤らめた理由を、ナンディは誤解したのだろう。
一瞬、普段は強い意思を見せる瞳を伏せる。
だが再び視線を上げた時のナンディは、余計な葛藤を何処かに捨てて来たような表情をしていた。
その顔に。怖いと称される事が多い、その顔に。
言葉を発せず、モナイは見惚れた。
「ヨーナ副長、アンタに触りたい。……抱きたい。」
告げられる低い声がゾクリとして心地良い。
腹の辺りが切なくなったモナイから、意識しないままに溜息が零れる。
「オレが触れるのは、症状を緩和する為に必要な、出来るだけ最小限に抑える。下心があるオレにされるのは嫌だろうが、アンタは目を瞑って我慢してるだけでいい。」
溜息を吐いた事も、先程のナンディの誤解を助長したようだ。
葛藤は捨てても欲情は捨てていない目をしたナンディは、心情を曝け出した上でモナイの返答を待った。
「症状が治まったら……ヨーナ副長がもう充分だと判断したなら、その時点で止める。……ように、する。約束する。だから…」
単なる対処療法を求めているだけの、モナイの意思を尊重したい。
そう思った気持ちは嘘ではなかったが。
止める。と言い切れないのは、ナンディがモナイに対する欲をハッキリと認識してしまったからだ。
言い切った方が良いという事は分かっている。言い切れる自信が無かった。
らしくもなく口籠り、終いには声を途切れさせるナンディを、モナイは呆然とした表情で見ていた。
もちろん、ナンディにショックを受けたからではない。
ナンディが「止める」と言った時に、それを寂しく思う感情に気が付いたからだ。
「……マサラー、団長。」
そうであれば。
巧く利用出来そうな状況にありながら、ナンディがそうしなかったように。彼が自らの不利になるような事を告白したように。
自分もナンディに告げなくてはならない。
「貴方も、私を……買い被っているのでは……?」
これを言えば自分の方こそ軽蔑されるかも知れない。
そう思ったら口が渇き、無意識で唇を舐めた。
ゴクリと咽喉を鳴らしたナンディと、視線が絡み合う。
「対処療法を求めていたのは、その通りだが。……相手は誰でも良かったのだ。上司や部下である騎士でさえなければ、誰でも。」
今度はナンディが、驚いたように目を見開く番となった。
あのエリート第二騎士団副長がセックスの相手を『誰でも良い』などとは、とても考えられない。
「マサラー団長を選んだのは、頼みを聞き入れて貰えそうな『下地』があった事と……団長という立場上、私との事を言いふらさないだろうという、計算をしたからだ。……私も充分、酷かろう?」
「それは……仕方ねぇ、だろ。」
ぎこちなく慰めるナンディの言葉に頭を振る。
掴んでいた枕を離し、シーツに手を付いて四つん這いになった。
うつ伏せで膝を立てているのは変わらないものの、上体を枕に預けていた時よりもナンディが近くなったように感じて、モナイは唇に弧を描いた。
「症状を緩和する為に仕方なく、と思っていたのは最初だけだ。……私だって…、高潔な人物ではない。」
言いながらモナイは、目的の所へと片手を伸ばす。
行き着く先をナンディに気が付かれる前に、モナイはそれに指を絡めた。
息を呑むナンディがこれ以上無く動揺するのを、喜んでモナイは咽喉奥で笑う。
「団長が指であんなに嬲るから……。もう…っ、足りない……コレが、欲しい。」
「っ…くぅ……。」
モナイに掴まれた屹立が、ドクッドクと脈打つ。
直に触られる以上の興奮をナンディは感じていたし、モナイの瞳にも欲情の色が見えた。
「もう、誰でも良くはない。私は……貴方が良い。」
「ヨーナ副長……。本当にいいんだな?」
「貴方が……。貴方に、抱いて欲しい。」
ナンディから目を逸らさずにモナイは頷く。
それを確認したナンディは今度こそ、慎重に、大胆に、モナイの身体を割り開いた。
時間を掛けて馴染ませたモナイの尻穴は、異物感が全く無いとまでは言わないものの、痛み無くナンディを受け入れ。異物感を大きく上回る初めての快楽を残しつつ、対処療法としての目的を達成した。
* * *
「ヨーナ副長、症状の方はどうだ?」
「問題無く治まったようだ。これでしばらくは保つ……と良いのだが。」
全てが終わった頃には相当な深夜になっていた。
流石に翌朝、兵士団長が第二騎士団副長の部屋から出るのも拙い為、ナンディは自室に戻る為に身支度をする。
カッチリした出で立ちの彼は、誰が何処からどう見ても、強面の兵士団長だ。
シャワーを済ませて寝間着を纏ったモナイは、それを見ながら呟いた。
「ナルホド。……治療薬の開発が進まないわけだ。」
治療という建前で、あれだけ気持ちの良い事が出来るのだから……。
魔術師も治療術師も熱心にならない『本当の理由』が分かった気がする。
「なんつーか、どれぐらいかは分からねぇけどよ……。」
「……ん?」
「もし、また症状が出たら、オレに頼れ。……あ、あんまり多数に知られたくねぇだろ?」
「そっ……そ、そうだな…もし、……良ければ。」
変な事を考えていた所為か。
自分でも分かるくらい、冷静なエリート第二騎士団副長らしからぬ返答をしてしまうモナイだった。
――― 完
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