魔力は体で感じるタイプです

竜也りく

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兄:ミジェ編 〜魔術室長の魔術セクハラが酷いんですけど!?〜

互いに高めあえる関係……?

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氷まで入れてくれるとか気が利くなぁ、と思ったら。

「えっ……うわぁ……」

氷を中心に、ルルシュの赤い色がみるみるオレンジへと変化していく。

「うわ! え、なに、なにコレ! 色が!!」

「ふふ、その色がかわったところ、飲んでごらん」

「えー? まさか」

味が変わるのか!?

期待を胸にグラスに口をつける。オレンジ色の酒が口に入ってきた瞬間。

「……!!!」

オレは目を見開いた。口の中で広がるのは、酸味。

さっきまではとろりとした、舌に纏わりつくような濃厚な甘さだけだった。それが、今は甘みの中にほのかな酸味が加わって、抜群にバランスがいい。香りまでが爽やかさを感じるフルーティーなものへと変わった。

「すげえ……! 全然違う!」

「面白いだろう?」

「面白いっつうか、純粋にすげーよ! 味も色も全然別物みたいに変わった」

「色の境目がきれいだけれど、混ぜたらまた違う味が楽しめるよ」

「え、マジ?」

手早く混ぜて口に含めば、確かに味わいが違う。目で見て、味が変わって、こんなにも楽しめる酒は初めてだ。

「この酒は人気がでそうだなぁ」

「温度で味や色が変わるそうだよ。酸味のある果汁を混ぜたら色が変わる酒、というのは見たことがあったけど、温度だけでこんなに劇的に変化するのは私も初めて見たんだ」

満足げに微笑むチェイス室長を見ながら、オレの頭の中には新しいひらめきが生まれていた。

「温度で味や色が変わる……それって、魔道具にもなんか活かせるかも……!」

慌てて席を立って工房の机に向かった俺は、アイディアノートに今浮かんだアイディアを書き留める。開発のタネはこうしていつだって降ってきた瞬間に受け止めないと逃げちゃうからな。

ひらめきをちゃんと文字にして落ち着いたオレは、ついでに机の上にあった魔道具を手にしてチェイス室長の待つテーブルへと戻った。

「すいません、急に。魔道具のアイディアが浮かんだから、つい」

「いや。思いついたものは残さないとね。君の仕事の役に立てたようで嬉しいよ」

急に席を外したってのに、本当になんら気を悪くした風でもない。こういうちょっとした時にチェイス室長って懐がでかいよな、って感じるんだよな。

「私も君の魔道具から魔術のアイディアをもらうことが多いんだ。こうやって互いに刺激しあい高めあえる関係になれるのは嬉しいね。それは極めて稀有なものだから」

互いに、高めあえる関係……?

オレの魔道具が、チェイス室長みたいなエリートの刺激になってるだなんて思ってもみなかった。
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