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兄:ミジェ編 〜魔術室長の魔術セクハラが酷いんですけど!?〜
もう限界だ
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ヤバい。もう限界だ……!
何がヤバいって体がヤバい。率直に言ってムラムラが止まらない。
それもこれもチェイス室長のせいだ。
初めてチェイス室長の魔力が添い寝に訪れてからずっと……昨日も一昨日もその前も、計四日間ずっと! チェイス室長の魔力は夜になっちゃあ添い寝に来ている。明け方に来る時もあれば、寝た時はいなかったのにいつのまにか纏わりついてる日もあった。とりあえず朝起きたらいつもチェイス室長の魔力に抱きしめられているのだ。
これは困る。
めっちゃ困る。
相変わらずチェイス室長の魔力はぎゅっと抱きしめて来るだけで何にもしない。すこぶる品行方正で、なんならこの状況はそもそもオレが求めていた状況なんじゃないかと思う。
たださ。優しくて気持ちいい魔力だからつい触っちゃうし、チェイス室長に会えない寂しさも相俟って抱きしめちゃうし、そうこうしてるうちに変な気分になってくるわけだ。
朝の爽やかな光の中トイレに駆け込んで、スッキリした後自己嫌悪に陥るこっちの身にもなってほしい。念のため窓を全開にすると朝の喧騒がひときわ胸をえぐる。
祭りも終盤だもんな、そりゃ賑やかにもなる筈だ。
仰々しいパレードや式典なんかがおおむね終わったから、後の二日は出店と大道芸が主になる。前半は王宮主催、後半は庶民が思い思いに祭りを盛り上げるんだ。
今日と明日で祭りも終わり。そうしたらチェイス室長も少しはゆっくりできるんだろうか。魔力が添い寝してくれるのは嬉しいけど、やっぱり本体に会いたいし、話したい。それに、こんな毎日モンモンとさせられると真面目に欲求不満なんだけど。
オレ、自分は淡白な方だと思ってたよ……。
朝も早くから連れ立って楽しそうに市場の方に向かう親子連れや恋人達を窓越しに眺めていたら、道の向こうからなんかすごい勢いでこっちに走ってくる男がいて、オレの目は釘付けになった。
もう市場で大量に買い物したんだろうか、めちゃめちゃ大量な荷物を抱えている。
あれ前見えてんのかなぁ、なんて思ってたら案の定前から来たおっさんにぶつかってよろめいた。ポロッとこぼれた果実が空中にフワッと浮いて、オレは思わず目をパチパチと瞬く。
え、あのシルエット……まさか。
目が釘付けになっているうちに果実はフワフワと浮いてひとりでに紙袋の中に戻っていった。あんなことできるの、あの人しかいないだろ!!
「チェイス室長!!!」
叫んで、オレは次の瞬間には扉をぶち開けて外に飛び出していた。
「その声! まさかミジェ?」
「まさかはこっちのセリフだよ!」
腕に積み上がってる紙袋を取り上げたら、やっとチェイス室長の優しげな顔が見えた。二人で荷物を分けあって持ち俺の工房兼住居に辿り着くと、テーブルにその品々を並べる。
「どうしたんだよ、こんなに。ていうかチェイス室長、こんなとこにいていいのかよ」
「大丈夫、大丈夫。各国の要人も全部帰ったし王宮主催のものは全て終わったからね。王宮魔術室は今日、明日は休みでね」
「そ、そうなんだ」
「随分久しぶりに休みだから、ミジェが好きそうな物を買い込んできたんだ。ほら、これこの前美味しいって言ってた酒と、あとしっかり食事として食べられそうな物もたくさん買って来たから、忙しいならまた夜にでも来るよ。置いていくから食べて」
「いやいや、せっかく来たのに帰らないで! 大丈夫だから」
オレ、自営業で良かった!
「結構このところ早めに仕事進めてたから、一日、二日くらい休んだって問題ないくらいには余裕があるんだ。それよりもチェイス室長こそ、ずっと激務だったじゃん。休んどかなくていいの?」
「それがこのところ夢見が良くて。短時間でも幸せな目覚めでね。意外にも元気なんだよ」
「……」
オレの肩がピクリと動いた。
買ってきてくれた物を皿に盛り付けていた俺の手が止まったのを見て、チェイス室長が不思議そうに俺を見る。その視線を感じて勝手に顔が赤くなっていくのが分かるのに、止める事が出来ない。
は、恥ずかしい……!
「ミジェ?」
「えっと……その、このところさ、チェイス室長さ……その、毎晩来るじゃん?」
「えっ!?」
もじもじしつつ、でも勇気を出して言ったのに、チェイス室長がビックリした顔をするもんだからこっちがビックリしてしまった。
「なんで驚いてんの? ここ四日くらい毎日さ、魔力だけ添い寝に来てたじゃん……?」
「え? え? え? あれは夢ではなく……?」
チェイス室長の顔色は目まぐるしく赤くなったり青くなったり忙しい。
「あれ、意識してやってたんじゃないの?」
「幸せな夢だと、思っていた……!」
「魔力の制御の訓練してるっぽかったし、遠隔で魔力を扱えるようになったのかと思ったんだけど。添い寝っていうか抱きしめてくるだけで……その、色々触ってくるわけでも、なかったし……」
オレの言葉を聞いて、チェイス室長は明らかにホッとした顔をする。自分でも自分の魔力の動きに自信がなかったんだろう。
「良かった……いや、勝手に魔力だけ訪問して抱きついている時点でアウトだ……!」
チェイス室長が分かりやすく崩れ落ちた。
何がヤバいって体がヤバい。率直に言ってムラムラが止まらない。
それもこれもチェイス室長のせいだ。
初めてチェイス室長の魔力が添い寝に訪れてからずっと……昨日も一昨日もその前も、計四日間ずっと! チェイス室長の魔力は夜になっちゃあ添い寝に来ている。明け方に来る時もあれば、寝た時はいなかったのにいつのまにか纏わりついてる日もあった。とりあえず朝起きたらいつもチェイス室長の魔力に抱きしめられているのだ。
これは困る。
めっちゃ困る。
相変わらずチェイス室長の魔力はぎゅっと抱きしめて来るだけで何にもしない。すこぶる品行方正で、なんならこの状況はそもそもオレが求めていた状況なんじゃないかと思う。
たださ。優しくて気持ちいい魔力だからつい触っちゃうし、チェイス室長に会えない寂しさも相俟って抱きしめちゃうし、そうこうしてるうちに変な気分になってくるわけだ。
朝の爽やかな光の中トイレに駆け込んで、スッキリした後自己嫌悪に陥るこっちの身にもなってほしい。念のため窓を全開にすると朝の喧騒がひときわ胸をえぐる。
祭りも終盤だもんな、そりゃ賑やかにもなる筈だ。
仰々しいパレードや式典なんかがおおむね終わったから、後の二日は出店と大道芸が主になる。前半は王宮主催、後半は庶民が思い思いに祭りを盛り上げるんだ。
今日と明日で祭りも終わり。そうしたらチェイス室長も少しはゆっくりできるんだろうか。魔力が添い寝してくれるのは嬉しいけど、やっぱり本体に会いたいし、話したい。それに、こんな毎日モンモンとさせられると真面目に欲求不満なんだけど。
オレ、自分は淡白な方だと思ってたよ……。
朝も早くから連れ立って楽しそうに市場の方に向かう親子連れや恋人達を窓越しに眺めていたら、道の向こうからなんかすごい勢いでこっちに走ってくる男がいて、オレの目は釘付けになった。
もう市場で大量に買い物したんだろうか、めちゃめちゃ大量な荷物を抱えている。
あれ前見えてんのかなぁ、なんて思ってたら案の定前から来たおっさんにぶつかってよろめいた。ポロッとこぼれた果実が空中にフワッと浮いて、オレは思わず目をパチパチと瞬く。
え、あのシルエット……まさか。
目が釘付けになっているうちに果実はフワフワと浮いてひとりでに紙袋の中に戻っていった。あんなことできるの、あの人しかいないだろ!!
「チェイス室長!!!」
叫んで、オレは次の瞬間には扉をぶち開けて外に飛び出していた。
「その声! まさかミジェ?」
「まさかはこっちのセリフだよ!」
腕に積み上がってる紙袋を取り上げたら、やっとチェイス室長の優しげな顔が見えた。二人で荷物を分けあって持ち俺の工房兼住居に辿り着くと、テーブルにその品々を並べる。
「どうしたんだよ、こんなに。ていうかチェイス室長、こんなとこにいていいのかよ」
「大丈夫、大丈夫。各国の要人も全部帰ったし王宮主催のものは全て終わったからね。王宮魔術室は今日、明日は休みでね」
「そ、そうなんだ」
「随分久しぶりに休みだから、ミジェが好きそうな物を買い込んできたんだ。ほら、これこの前美味しいって言ってた酒と、あとしっかり食事として食べられそうな物もたくさん買って来たから、忙しいならまた夜にでも来るよ。置いていくから食べて」
「いやいや、せっかく来たのに帰らないで! 大丈夫だから」
オレ、自営業で良かった!
「結構このところ早めに仕事進めてたから、一日、二日くらい休んだって問題ないくらいには余裕があるんだ。それよりもチェイス室長こそ、ずっと激務だったじゃん。休んどかなくていいの?」
「それがこのところ夢見が良くて。短時間でも幸せな目覚めでね。意外にも元気なんだよ」
「……」
オレの肩がピクリと動いた。
買ってきてくれた物を皿に盛り付けていた俺の手が止まったのを見て、チェイス室長が不思議そうに俺を見る。その視線を感じて勝手に顔が赤くなっていくのが分かるのに、止める事が出来ない。
は、恥ずかしい……!
「ミジェ?」
「えっと……その、このところさ、チェイス室長さ……その、毎晩来るじゃん?」
「えっ!?」
もじもじしつつ、でも勇気を出して言ったのに、チェイス室長がビックリした顔をするもんだからこっちがビックリしてしまった。
「なんで驚いてんの? ここ四日くらい毎日さ、魔力だけ添い寝に来てたじゃん……?」
「え? え? え? あれは夢ではなく……?」
チェイス室長の顔色は目まぐるしく赤くなったり青くなったり忙しい。
「あれ、意識してやってたんじゃないの?」
「幸せな夢だと、思っていた……!」
「魔力の制御の訓練してるっぽかったし、遠隔で魔力を扱えるようになったのかと思ったんだけど。添い寝っていうか抱きしめてくるだけで……その、色々触ってくるわけでも、なかったし……」
オレの言葉を聞いて、チェイス室長は明らかにホッとした顔をする。自分でも自分の魔力の動きに自信がなかったんだろう。
「良かった……いや、勝手に魔力だけ訪問して抱きついている時点でアウトだ……!」
チェイス室長が分かりやすく崩れ落ちた。
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