44 / 54
弟: セレス編 〜鉄壁ツンデレ魔術師は、おねだりに弱い〜
鉄壁ツンデレ魔術師は、警告する
しおりを挟む
「いや、でもフィンレー、明らかに怒ってるじゃん。なぁ、こっち向いてって」
フィンレーの両肩を掴んでこっちを向かせようとして見たけど、凍りつくような目で一瞥された。
「触るなと言っている」
「なぁ、ごめんって! そんなに怒ると思ってなかったんだよ。機嫌直してさ、ちゃんと二人で一緒に祝おう」
「……」
フィンレーが深い深いため息をつく。
「……本当に怒っていない。頼むから触らないでくれ」
「フィンレー……」
なんかもう悲しくなってきた。
だってフィンレーの魔力、さっきから青から赤、ピンク、それが混ざって変な色、って目が回りそうなくらい目まぐるしく色が変わってる。形だって俺に向かって伸びてくる魔力、それを押さえつける魔力、その一方で俺を押し返そうとする魔力がぐねぐねと入り乱れてめちゃくちゃ混乱してる。
半年間一緒に居て、フィンレーの魔力がこんなに荒れたことなんてなかった。なのに、表情も口調も一切感情を断ったみたいに平坦なのが逆に怖い。
そもそも何がフィンレーの感情をそんなにぐちゃぐちゃにしてるのかが分かってないのが問題なんだよな。だからどうにも対処できない。
帰ってきた時は普通だった。つうかむしろ嬉しそうだったし魔力だって楽しい黄色とかオレンジで、ご機嫌だなって思ったんだよ。
なのに風呂から上がってきたらコレだ。俺がCランクのお祝いを蹴って遊びに出てくってのが、そんなに嫌だったのか? それとも娼館ってのが、潔癖そうなフィンレーには許せなかったのか? 分からねぇ。
「セレス聞いてる? 疲れてるからもう寝たいんだ。頼むから離れてくれ」
急に、フィンレーが微笑んで見せる。その顔に俺はむしろ戦慄した。嫌だけど、どうしても話さなきゃいけない相手にするみたいな作った笑顔を、フィンレーが俺に向けてる。
離れろって言われても、離れられるわけがなかった。
ここまで半年、仲良くやってきたのに。いい相棒だって言い合ってたのに。この手を離した途端、フィンレーが嫌がって触らせもしない有象無象の他のヤツらみたいに、その視界に入らなくなるんじゃないかって思ったら、怖くて逆に指に力が入った。
フィンレーが、またため息をつく。
「僕は散々警告した……」
「えっ?」
俯いて、フィンレーが小さな声で呟いた。
「触るな、離れてくれって、何度も警告した」
「う、うん、ごめん、でも」
「もう無理」
「うわっ!?」
なんの前触れもなくフィンレーに押し倒されて、オレは思わず間抜けな声をあげる。
「な、なんだよもー! いきなり……」
油断してたからって魔法剣士の俺が、高身長とはいえヒョロの代名詞の筈の魔術師に押し倒されるなんて、はっきり言って屈辱だ。
唇を尖らせて文句を言ってやろうと見上げたら、いつもの冷めきったアイスブルーの瞳が、なんか肉食獣みたいにギラギラ光ってた。
「え、なに? オレなんか悪いことした?」
その目が意外すぎて、つい口からそんな言葉が転がり出た。
もちろん失言だ。俺がなんかやらかしてフィンレーを怒らせてるのは分かってるんだ。ただ、どこが怒りに触れたかが分かってないだけで。
「覚えがないとでも? 毎日毎日こっちの気も知らないで、ベタベタベタベタ触ってきて……! なぁセレス、いい加減責任を取ってくれないか?」
「ご、ごめん」
毎日毎日って……今日、今の話じゃなく?
混乱しつつ、でもそれなら確かに思い当たるフシしかないと思った。
人嫌いで触られるのなんかもってのほかだって力説するフィンレーに、あえてスキンシップを多めにしていたのは認める。
いや、でもだって、人馴れしないとって思ったんだよ。冒険者なんてみんなで酒盛りするのなんて普通だしさ、そうなりゃ肩の一つや二つ組んだりするじゃん。
フィンレーみたいな美形が氷レベルの冷たい顔で「触るな」とか言ったらみんな引くじゃん! 俺だってさっき言われた時は心に傷を負ったレベルだぞ!?
言い返したいけど、迫力の美形がめっちゃ至近距離で怖い笑顔を浮かべてるから言えない。
ていうか、もしかしてフィンレー、我慢してただけで俺から触られるのも本当はめっちゃ嫌だったって事なのか? さっき様子がおかしかったのは、我慢の限界がきたとか、そういう事だったりするんだろうか。
そう思うとめちゃくちゃ悲しい。
ベッドに転がったままそっとフィンレーを見あげたら、フィンレーは何かをぐっと堪えるような顔をして、俺をぎゅっと抱きしめてきた。
えっ。
なんで?
なんでこの話の流れでハグ???
あ、でも。
「ていうかめっちゃ触れるようになったんだな。ハグできるって凄い進歩じゃん」
「そうだな、お前限定だがな」
「え、あ、そうなの? ……って、あれ?」
さすがにこの体勢でのハグは気まずくて、話をそらしている間に拘束を逃れようと思ったら、動けなかった。
え、なんで?
「言っておくがその場所からは動けない。縛ってある」
「魔術ずるいじゃん!」
「剣士に力で対抗しようとしても無駄だからな」
にやりと笑う相棒がちょっと怖くなってきた。
フィンレーの両肩を掴んでこっちを向かせようとして見たけど、凍りつくような目で一瞥された。
「触るなと言っている」
「なぁ、ごめんって! そんなに怒ると思ってなかったんだよ。機嫌直してさ、ちゃんと二人で一緒に祝おう」
「……」
フィンレーが深い深いため息をつく。
「……本当に怒っていない。頼むから触らないでくれ」
「フィンレー……」
なんかもう悲しくなってきた。
だってフィンレーの魔力、さっきから青から赤、ピンク、それが混ざって変な色、って目が回りそうなくらい目まぐるしく色が変わってる。形だって俺に向かって伸びてくる魔力、それを押さえつける魔力、その一方で俺を押し返そうとする魔力がぐねぐねと入り乱れてめちゃくちゃ混乱してる。
半年間一緒に居て、フィンレーの魔力がこんなに荒れたことなんてなかった。なのに、表情も口調も一切感情を断ったみたいに平坦なのが逆に怖い。
そもそも何がフィンレーの感情をそんなにぐちゃぐちゃにしてるのかが分かってないのが問題なんだよな。だからどうにも対処できない。
帰ってきた時は普通だった。つうかむしろ嬉しそうだったし魔力だって楽しい黄色とかオレンジで、ご機嫌だなって思ったんだよ。
なのに風呂から上がってきたらコレだ。俺がCランクのお祝いを蹴って遊びに出てくってのが、そんなに嫌だったのか? それとも娼館ってのが、潔癖そうなフィンレーには許せなかったのか? 分からねぇ。
「セレス聞いてる? 疲れてるからもう寝たいんだ。頼むから離れてくれ」
急に、フィンレーが微笑んで見せる。その顔に俺はむしろ戦慄した。嫌だけど、どうしても話さなきゃいけない相手にするみたいな作った笑顔を、フィンレーが俺に向けてる。
離れろって言われても、離れられるわけがなかった。
ここまで半年、仲良くやってきたのに。いい相棒だって言い合ってたのに。この手を離した途端、フィンレーが嫌がって触らせもしない有象無象の他のヤツらみたいに、その視界に入らなくなるんじゃないかって思ったら、怖くて逆に指に力が入った。
フィンレーが、またため息をつく。
「僕は散々警告した……」
「えっ?」
俯いて、フィンレーが小さな声で呟いた。
「触るな、離れてくれって、何度も警告した」
「う、うん、ごめん、でも」
「もう無理」
「うわっ!?」
なんの前触れもなくフィンレーに押し倒されて、オレは思わず間抜けな声をあげる。
「な、なんだよもー! いきなり……」
油断してたからって魔法剣士の俺が、高身長とはいえヒョロの代名詞の筈の魔術師に押し倒されるなんて、はっきり言って屈辱だ。
唇を尖らせて文句を言ってやろうと見上げたら、いつもの冷めきったアイスブルーの瞳が、なんか肉食獣みたいにギラギラ光ってた。
「え、なに? オレなんか悪いことした?」
その目が意外すぎて、つい口からそんな言葉が転がり出た。
もちろん失言だ。俺がなんかやらかしてフィンレーを怒らせてるのは分かってるんだ。ただ、どこが怒りに触れたかが分かってないだけで。
「覚えがないとでも? 毎日毎日こっちの気も知らないで、ベタベタベタベタ触ってきて……! なぁセレス、いい加減責任を取ってくれないか?」
「ご、ごめん」
毎日毎日って……今日、今の話じゃなく?
混乱しつつ、でもそれなら確かに思い当たるフシしかないと思った。
人嫌いで触られるのなんかもってのほかだって力説するフィンレーに、あえてスキンシップを多めにしていたのは認める。
いや、でもだって、人馴れしないとって思ったんだよ。冒険者なんてみんなで酒盛りするのなんて普通だしさ、そうなりゃ肩の一つや二つ組んだりするじゃん。
フィンレーみたいな美形が氷レベルの冷たい顔で「触るな」とか言ったらみんな引くじゃん! 俺だってさっき言われた時は心に傷を負ったレベルだぞ!?
言い返したいけど、迫力の美形がめっちゃ至近距離で怖い笑顔を浮かべてるから言えない。
ていうか、もしかしてフィンレー、我慢してただけで俺から触られるのも本当はめっちゃ嫌だったって事なのか? さっき様子がおかしかったのは、我慢の限界がきたとか、そういう事だったりするんだろうか。
そう思うとめちゃくちゃ悲しい。
ベッドに転がったままそっとフィンレーを見あげたら、フィンレーは何かをぐっと堪えるような顔をして、俺をぎゅっと抱きしめてきた。
えっ。
なんで?
なんでこの話の流れでハグ???
あ、でも。
「ていうかめっちゃ触れるようになったんだな。ハグできるって凄い進歩じゃん」
「そうだな、お前限定だがな」
「え、あ、そうなの? ……って、あれ?」
さすがにこの体勢でのハグは気まずくて、話をそらしている間に拘束を逃れようと思ったら、動けなかった。
え、なんで?
「言っておくがその場所からは動けない。縛ってある」
「魔術ずるいじゃん!」
「剣士に力で対抗しようとしても無駄だからな」
にやりと笑う相棒がちょっと怖くなってきた。
33
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる