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旧友
しおりを挟む「やっほー、レンくん。あれ、もしかしてひとり?」
突然、目の前に人が立った。
重い頭を上げると、大嫌いな顔がそこにいた。
"北村 朝日"
名札にはそうかかれている。レンの小学校時代を荒らした主格の1人だ。外見は完璧な美少女。性格に難アリ。
荒れ始めた日から今日この日まで執念にレンに漬け込んでなにかしら理不尽を振りまくサイコキラー。手に付けられないほど陰湿であり、周りを巻き込んでは楽しそうに笑っているのが常だ。
「レンくんは、地味で卑屈でなーんにも喋らないから、初日から一人ぼっちなんでしょ?知ってるよ、ワタシ。」
周りに聞こえないように耳元で罵るアサヒにレンは思わず顔を背けた。
「あっちいって。邪魔。」
酷く低い声で罵り返すと、アサヒはバカにしたように笑った。
「とーぜん。お前と同じクラスじゃなくてよかった~!いじれないのさみしいけど、呪いも半減だし、プラマイゼロだよね~。」
「…うるせえっつってんだろ、いい加減にしろよ。」
「そうやって強がるだけなの超ダサいよ、力や竜馬には声もあげないくせに。じゃあね~、一生1人な呪いかけといてあげる。」
前髪を強引に鷲掴みして、無理やりレンと目を合わせた。元隣吏小生徒は「こういう奴」と認識せざるおえず、彼女に逆らうことは許されない。頭の良いアサヒは小学校でも優等生扱いで、隠れ主犯となり、いじめの出停もほぼ受けていない。
その状態を予め把握していた学校側は、レンと、それに関わる重要人物のクラスを離したが、こんなふうに自由に出入りできるようでは元も子もない。
「……最悪。」
中学生活開幕からアサヒに釘を刺され、ぼそっと声を吐き出すレン。
同じクラスでないのが不幸中の幸いだが、これでも現役と比べればまだ軽い方。メグと手を組み声を上げた日から身体的ないじめはされなくなった。レン自身も自分に対するいじめに慣れてしまっている面があり、最近はアサヒのことを鬱陶しい奴、としか認知していない。
チャイムが鳴り、生徒たちが一斉に席へ座り出した。
メグやリリカも教室に入ってきた。
スーツに身を包んだ男性教員が入ってくる。担任のようだ。
「今日からこのクラスを担任する工藤 昌也といいます。担当教科は理科。中学生活でわからないことがあったらなんでもきいてくださいね。」
知的で賢そうな印象を受けた。
入学式を終え、教室に戻ったあとも、オリエンテーションがあったり、教科書が配られたり。中学生はやることも持つものも多いらしい。
「新しいクラスで知らない人もいると思うから、簡単に1人ずつ自己紹介と、中学生になって頑張りたいことを発表しましょう。」
担任の提案で1人ずつ立って挨拶をすることになった。メグも恐る恐る立って挨拶をした。
「さ、佐々木 芽久です。桜小からきました。えっと……中学で頑張りたいことは、部活です。部活は、テニス部に入ろうと思います。よろしくお願いします。」
そういうことがあまり得意でないメグは少々手こずったものの、なんとか終えることが出来た。
リリカやワカナも、持ち前の明るさで乗り切った。特にワカナは容姿端麗なこともあるのか、桜小出身の男子生徒から高い評価を受けていた。
「…松田 蓮です、よろしく。」
一方レンは、工藤の話を無視して一言で終わった。目線も下を向いて、合わせようとしない。工藤先生はなにも口出しをしなかった。事情もなにも知らない桜小学校上がりの生徒たちはなんだなんだと話し始めた。
「はい、静かに。じゃあ次は仲良くなるレクリエーションをしよう。近くの人と二人組を作って。」
レクリエーションのあいだも参加はせず、ずっと机に突っ伏したままだ。人数の関係で1人余るも、3人で組むようにと命じられる。クラスメイトのざわつきも大きくなるなか、今日は下校時間となった。
(おかしい……このまえ遊んだ時と明らかに様子が違う……)
休日に遊んだ経験があるメグはレンの様子を比べた。明らかに違った様子に疑問を感じたメグは、帰りの会のあと、話しかけることにした。
「'ここじゃだめ。外で。'」
机の近くまでいこうとするとレンにテレパシーで止められる。
レンの指示に従って、場所をかえることにした。人気のない倉庫裏までくると、無表情を貫いていたレンの顔がぱっと明るくなった。
「なに?話??」
「い、いや……」
あまりのギャップに思わず引いてしまうメグである。
「レン、人違いすぎない?中の人入れ替わってない??」
「入れ替わってないよ、起きてるよ。」
キラキラした笑顔でレンは微笑む。
「あと、教室内で話すのは禁止にしよ。」
「なんで……??」
「えー、だって、オレと話すとメグが変な目で見られちゃうし。」
「い、いいよ、私の事なんてそんな。」
「オレはずっとあのキャラでいいの。担任もなんもいってこなかったし、強制じゃないみたいで安心した。」
教室の姿とは打って変わってペラペラとはなしをするレン。楽しそうだ。
きけば、教室の環境はまだ抵抗があるらしく、小学校も保健室通いか、席には座るもずっと非参加型だった模様。
「教室に入れるようになったし、これでも成長したんだよ、授業2/3はきいてないけど。」
「ほぼきいてないじゃん、なんか、板書?も沢山あるっていってたよ、先生。」
「それはテスト前になんとかすればいい話。メグ字綺麗でしょ、みせてよ。」
「いやです~!ちゃんときいてノートとってください!」
ケラケラ笑うレンを手で払いながら適当に流す。明日も学校きてよね、そういって、この日は帰路についた。
教室内では別人と化するレンに違和感を抱きながらも、暇な時間を見つけては、人気のない場所で話をする毎日を送った。
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