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決定日〈別視点ver.〉
しおりを挟む「いや、人すごすぎ……」
「こんなもんよ、初日なんて。」
座り込み驚愕するレンを他所に、ソウタは周りを取り囲む女子の集団に手を振った。
「…嫌。」
「え?」
「…やだ走りたくない。」
「え…いいよ大丈夫だよ、3人一気に走るし。まあお前がぶっちぎるのは目に見えてるけど。がんばれー。」
「はあ……まじか。」
聞こえるか聞こえないかの音量でボソボソと話すレンの背中をぽんぽんと叩く。
「爆弾魔が本気だしたって言われるだけだわ、そんな気にすることねえ。」
「…。」
「1組の爆弾よがんばれよ、空気変えてやれ。少しでもプラスにみてもらえるほうが今後レンもきつくないと思うぞ。」
弟がそう呼ばれていることを知ってるソウタはわざと口にする。カチンときたレンはソウタの横に立ち、詰め寄った。
「…ねえその呼び方やめて。次言ったら殺す。」
「はーいはい。やっと立ったね、はやく走っておいで。」
上手くあしらわれて、コースに立たされる。
表にでるのは嫌いだが、兄に釘を刺されたら否が応でもでるしかない。これで不発弾とかいわれたら溜まったもんじゃない。
今回走るのは運動場の兼ね合いもあって100m、縦に一直線。隣は桜小の男子と知らないどこかの校区の男子。初めに走った方がいいからと兄の助言で1番前に持ってこさされた。
「ではこれよりタイム測定を開始する」
顧問と数人のマネージャーがストップウォッチを持って100m先にみえる。
爆弾魔がコース上に現れた時点で場内はさっきよりも声は静まり息を飲む。空気を変えてやれ、そう言われた通り唯ならぬ緊張感が場内を駆け巡った。
周りの目線よりも、見るのは100m先。吹き抜ける風が頬にあたる。体は小さいけれど、速さなら負けない、いける。確信をついて走り出した。
「なんか流れ変わったな」
みていた2年女子がそういった通り、レンがコースにたった瞬間、なにか唯ならぬ殺気を感じた。
(あんな顔はじめてみた。)
マネージャーが準備をし始め、手を上げる。
「え?!いや速っ!」
測定が始まった瞬間にどよめく場内。
2人と大差をつけあっという間に走りきっていた。
―…みえた。
そう思った。
合図をきくや否やすぐに足は動いた。周りをみる余裕もなく、風を味方にしてただただ突っ走った。
気づいたらゴール手前だった。本当にそれだけだった。ゴール先には兄が待っていて、線を跨いだ瞬間に駆け寄ってきて受け止めてくれた。
その2秒か3秒か後に残りの2人も走り切った。
「みた?!弟の勇姿みた?!ちょ~カッコよかったよ!レン!!頑張ったな!!」
飛び上がって喜ぶソウタ。そのまま、がしがし頭を撫でられる。息が切れて声も出す余裕もない。兄に体を任せることしか出来ず頭から突っ伏す。
「ソウタ喜びすぎ……あと急に止めたら心臓止まっちゃうよ。」
「あ、そうか!大丈夫か?!?よし、大丈夫だな!」
生存の確認方法が大雑把だが、段々落ち着いてきてむくりと体を起こした。そこには兄の喜ぶ姿があった。周りの人もなにやら嬉しそうだ。
レンのタイムを測っていた顧問が驚愕しながら記録を伝えに来てくれた。
11秒68 。陸上部初日に爪痕を残しすぎたと反省した。
「すげえだろ~、俺より速いんだぜ。」
兎にも角にも兄が褒め倒してくれたのは覚えてる。家に帰ってからもその話ばかり。さほど嬉しかったのだろう。あまりにも繰り返すソウタに、何回同じこと言うの、と笑ってしまったレンだった。
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