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爪痕
しおりを挟む部活決定が終わり2週間ほど経ったある日の朝、通学路でリリカと合流した時のことだ、
「ねえメグってさ、同じクラスにいるレン君……?と友達なの……?」
「え、なんで?」
「このまえ、話してるのちらっとみたから。知り合い?」
「う、うーんと、まあそうだね、遠い友達みたいな。」
モゴモゴと隠しながら伝えるとリリカは確信をついてこういった。
「なら、関わるの辞めた方がいいよ。」
「え……」
あまりの勢いにビクリとする。
リリカは続けた。
「だってあの子だよ?なんも喋らないし、なんか気味悪いじゃん。しかも、先生に当たって問題行動ばっか起こしてるんでしょ?隣吏小の子達も、関わらない方がいいっていってたし。喋るの辞めなよ、メグ。」
「うーん、そうかな、喋ってみると案外いい子だったりするよ。」
ここで衝撃の事実が告げられる。
「じゃあ私、メグと関わるの辞めちゃうよ。」
辞めちゃうよ。この言葉がガツンと頭の中に響いた。思わず声が震える。
「そ、そんな……。」
「ワカナちゃんもいってた。危ないからって。何されるかわからないし。クラスでも大分話題だよ。メグがレン君側にいくなら私は離れるよ。」
大事な大親友だったはずのリリカがこんなことで離れるよと言うなんて。あまりにショックで、その日の夜はなかなか眠れなかった。
リリカのことも大切にしたい、でもレンとも仲良くありたい。もしここでレンとの関係を切れば今までの頑張りが水の泡だ。どうしたらいいものか、レンに言ったら「じゃあ無かったことにしよう」と言われてしまいそうで、誰にも相談できないまま、夜が明けた。
次の日。
この日は来月に控えた体育祭の競技決めの日だった。
「じゃあ、リレーの順番を決めよ~、トップバッターとアンカーから先に。」
黒板の前にたつのは、学級委員になったワカナだ。リレーの順番を決めるため、黒板に数字をかいていく。前方の席の前田くんが、トップバッターに立候補した。足が早い前田くんは、桜小時代でも、有力選手だった。
「じゃあトップバッターは前田くんね。アンカーは、んー、レンでいい???」
そういって、ワカナはレンを強制指名した。
そんな彼は今も机に顔を埋めて起きようとしない。
「えー?松田くんはやいの?」
「はやいよ。こいつに任せとけば追い抜いてくれるもん、」
レンのきいていないところで勝手に話が進む。気を使ってか、アサヒが見ていないからか、それでも嫌な顔をしながらワカナはレンの座る後方へ向かった。
「ちょっとレン、起きて?返事してよ、わからないじゃない。」
この3週間で、レンの存在は教室内の闇に変わりつつある。主任にブチ切れ事件、先日は副主任と口論の末学校の窓ガラスを割る、度々の欠席や早退。まだ4月も終わっていないのに、かなりの爪痕を残す彼に事情を知るクラスメイトも、そうでない桜小や他校区出身も近づかなくなっていた。ワカナは恐る恐る、レンの机に手をかけた。
とんとん、
机を叩く。「レン、」と声をかけると急に彼は顔を上げた。尋常ではない雰囲気に静まる教室内。
「嫌。」
ただ一言それだけ言ってワカナをみつめる。
今まで平然を保っていたワカナも動揺した。
「な、なによ…少しくらい協力してくれたっていいじゃない、あんたなんて何も役に立たないんだから。」
「…月野さん。」
「は?黙れ。都合のいいときにだけ利用すんのやめろよ。」
隣吏小以来のヒートアップに、工藤も止めに入る。ハッとしたワカナは口ごもった。
一方、見つめたまま動かなかったレンは先程のワカナの言葉で完全にスイッチが入ってしまったよう。そのままフラフラと教室を出てしまった。
呆気にとられるクラスメイト。
ワカナがため息をした。
「はあ…ごめんね、みんな。」
ワカナの一言でみんなやれやれと肩の力を抜いた。工藤は出ていったレンをおいかけて出ていく。結局その日、レンが教室に戻ることはなかった。
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