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34【クッキーを寄付】
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翌日の放課後、お屋敷で一度着がえた私は馬車に乗って、ナルシオお兄様と王宮に出かけた。
「グラル殿下」
「ナルシオ殿下、そしてマリー姫!」
サクラはやめてしまったけれど、学園に籍があるグラル殿下は、先日の聖女の活動に、フェルゼンも付いてきたことについての礼に来た。というのは表向きで、私が作ったクッキーを取りに来てもらったのだ。
「このクッキーに対して一つ注意があるのだ」
「なんでしょうフェルゼン殿下」
「このクッキーはあくまで、栄養が足りていない干ばつの被害者の民のためのものだ」
「はい、ありがとうございます」
「このクッキーの特徴は高カロリー高蛋白質なの。だから、貴族が沢山食べると病気になるかもしれないわよ」
「カロリー?タンパク質?」
「そうだ。聖女の施しだからと貴族に取られぬようにな」
「もちろんです!」
品質を保持する魔法を施した箱にクッキーを詰め込んで、それを馬車に乗せ、グラル殿下はすぐに帰国してしまった。
あの干ばつだもの、あちらで作物が実って食べられるようになるまで、他より早くても一か月以上はかかるでしょう。それまでになんとかあのクッキーが糧になってくれれば。
「追加の輸送も用意しているのでしょう?健一」
「もちろんだよ」
数日後、私の元にサクラから手紙が来た。
ー--------
豊子さん、いえ、新しい聖女のマリー姫。
先日、グラン殿下が、マリー姫とハルキア王后陛下が焼いたというクッキーを、難民に配る活動に参加しました。
丁寧に小分けされたクッキーをみて、衝撃を受けました。小分け作業にはお后さまやそのお友達の貴族のご婦人も奉仕活動として行われたそうですね。
日本人なら、災害のときにどうすればいいか、どう動けばいいのか、実際に行動した経験がなくともわかっていたのに、私は自分のことばかりで何もしていなかった。
あなたを恵まれた境遇だと羨んでばかりいた自分がほんとうにはずかしいわ。
養女として迎え入れてくれた貴族は、借金の返済を王家が持つのが条件で私を引き取ったそうです。だから、私が聖女かどうかはそんなに気にならないと言ってくれました。
もちろん聖女だったほうが、家が富むだろうし、名誉な事だっただろうと。だが、これで王家に家名を少しでも印象付けられたし、そのまま養女としておいてくれるそうです。
そもそも、自分の領地が飢饉で大変だったから財産を放出して借金を作って領民を助けた貴族だったの。すごく領民思いの貴族でしょ?そういう人の養女になれたことは良かったと思うわ。
これからは心を入れ替えて、受け入れて下さった養父を助けたいし、もちろん生みの親も健在だもの。そちらにも孝行をしなければね。
まだこれから何ができるか分からないけれど、そうね、私、大学は教育学部だったのよ。資格だけ取って、先生になるつもりは全然なかったけれど、子供はそんなに嫌いじゃないし、そっちに進んでも良いかもしれないわね。
とはいっても、私自身は今は子供だもの、この世界のことを勉強して出直すわ。
少ない女の転生者同士ですもの、なにか相談があったら気軽に言ってね。助けになることはあまり出来ないかもしれないけれど。
じゃあ、無理をせずに聖女様をしてください。
佐倉理沙
ー--------
人ってこんなに変わるものなのね。
サクラじゃなくてリサちゃんだったのね。
私は手紙を健一や太一に見せると、二人もサクラの心境の変化に喜んでいたわ。
そんな喜びもつかの間、お母さまから聖女に関する資料がどっさり届いたわ。もちろん太一や健一が集めていた、ハルキア王国にもある資料と重なるものも半分はあったんだけど、どうしてディアナ王国に聖女の資料が多かったのかしらっておもったら、私たち王族の先祖にも聖女がいたらしいの。
そりゃあ、聖女は王家と結婚するパターンがあるんだからそうだろうとは思うんだけど、ハルキア王国のご先祖様にも聖女様はいらっしゃるんでしょ?
「いや、どうやら建国の王が、聖女をやっていた女王らしくて、権力を掌握した後は逆ハーレムだったらしい」
太一が健一と一緒にいる時に打ち明けてくれた。
「そんな史実は一応王家の禁書庫のさらに地下に封印してあってね、マリー姫には見せたくないし」
えー、見たいなぁ。
「なんだかそれも乙女ゲームっぽい設定ね」
「げ。そう言うのあるの?怖い」
「ゲームは知らないけど、小説であったような。男の人が夢見るように女にもハーレムにあこがれる人がいたと思うの。サクラもそういうことを言ってたわ」
「豊子!俺は豊子一筋だよ!」
「ふふふ、知ってるわ、私も健一以外知らないもの」
「だよねだよね!あー良かった」
「ははは、必死なフェルゼンって面白い」
「これ、太一、息子を揶揄わないの」
「はーい」
ふふふ、こうやって三人で他愛のない時間を過ごすのが一番よ。
「グラル殿下」
「ナルシオ殿下、そしてマリー姫!」
サクラはやめてしまったけれど、学園に籍があるグラル殿下は、先日の聖女の活動に、フェルゼンも付いてきたことについての礼に来た。というのは表向きで、私が作ったクッキーを取りに来てもらったのだ。
「このクッキーに対して一つ注意があるのだ」
「なんでしょうフェルゼン殿下」
「このクッキーはあくまで、栄養が足りていない干ばつの被害者の民のためのものだ」
「はい、ありがとうございます」
「このクッキーの特徴は高カロリー高蛋白質なの。だから、貴族が沢山食べると病気になるかもしれないわよ」
「カロリー?タンパク質?」
「そうだ。聖女の施しだからと貴族に取られぬようにな」
「もちろんです!」
品質を保持する魔法を施した箱にクッキーを詰め込んで、それを馬車に乗せ、グラル殿下はすぐに帰国してしまった。
あの干ばつだもの、あちらで作物が実って食べられるようになるまで、他より早くても一か月以上はかかるでしょう。それまでになんとかあのクッキーが糧になってくれれば。
「追加の輸送も用意しているのでしょう?健一」
「もちろんだよ」
数日後、私の元にサクラから手紙が来た。
ー--------
豊子さん、いえ、新しい聖女のマリー姫。
先日、グラン殿下が、マリー姫とハルキア王后陛下が焼いたというクッキーを、難民に配る活動に参加しました。
丁寧に小分けされたクッキーをみて、衝撃を受けました。小分け作業にはお后さまやそのお友達の貴族のご婦人も奉仕活動として行われたそうですね。
日本人なら、災害のときにどうすればいいか、どう動けばいいのか、実際に行動した経験がなくともわかっていたのに、私は自分のことばかりで何もしていなかった。
あなたを恵まれた境遇だと羨んでばかりいた自分がほんとうにはずかしいわ。
養女として迎え入れてくれた貴族は、借金の返済を王家が持つのが条件で私を引き取ったそうです。だから、私が聖女かどうかはそんなに気にならないと言ってくれました。
もちろん聖女だったほうが、家が富むだろうし、名誉な事だっただろうと。だが、これで王家に家名を少しでも印象付けられたし、そのまま養女としておいてくれるそうです。
そもそも、自分の領地が飢饉で大変だったから財産を放出して借金を作って領民を助けた貴族だったの。すごく領民思いの貴族でしょ?そういう人の養女になれたことは良かったと思うわ。
これからは心を入れ替えて、受け入れて下さった養父を助けたいし、もちろん生みの親も健在だもの。そちらにも孝行をしなければね。
まだこれから何ができるか分からないけれど、そうね、私、大学は教育学部だったのよ。資格だけ取って、先生になるつもりは全然なかったけれど、子供はそんなに嫌いじゃないし、そっちに進んでも良いかもしれないわね。
とはいっても、私自身は今は子供だもの、この世界のことを勉強して出直すわ。
少ない女の転生者同士ですもの、なにか相談があったら気軽に言ってね。助けになることはあまり出来ないかもしれないけれど。
じゃあ、無理をせずに聖女様をしてください。
佐倉理沙
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人ってこんなに変わるものなのね。
サクラじゃなくてリサちゃんだったのね。
私は手紙を健一や太一に見せると、二人もサクラの心境の変化に喜んでいたわ。
そんな喜びもつかの間、お母さまから聖女に関する資料がどっさり届いたわ。もちろん太一や健一が集めていた、ハルキア王国にもある資料と重なるものも半分はあったんだけど、どうしてディアナ王国に聖女の資料が多かったのかしらっておもったら、私たち王族の先祖にも聖女がいたらしいの。
そりゃあ、聖女は王家と結婚するパターンがあるんだからそうだろうとは思うんだけど、ハルキア王国のご先祖様にも聖女様はいらっしゃるんでしょ?
「いや、どうやら建国の王が、聖女をやっていた女王らしくて、権力を掌握した後は逆ハーレムだったらしい」
太一が健一と一緒にいる時に打ち明けてくれた。
「そんな史実は一応王家の禁書庫のさらに地下に封印してあってね、マリー姫には見せたくないし」
えー、見たいなぁ。
「なんだかそれも乙女ゲームっぽい設定ね」
「げ。そう言うのあるの?怖い」
「ゲームは知らないけど、小説であったような。男の人が夢見るように女にもハーレムにあこがれる人がいたと思うの。サクラもそういうことを言ってたわ」
「豊子!俺は豊子一筋だよ!」
「ふふふ、知ってるわ、私も健一以外知らないもの」
「だよねだよね!あー良かった」
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「はーい」
ふふふ、こうやって三人で他愛のない時間を過ごすのが一番よ。
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