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14【舞台の四年前に】
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そして晴れて九月になり、私は前世ぶりに女子学生に戻ったのだ。本名を偽って、ギルドカードに登録してある、平民冒険者の〈トヨコ〉に。
私は学園に入学してびっくりした、なんとフェルゼンも平民特待生の入学枠で学生をしていたのだ。平民冒険者の〈ケンイチ〉として。飛び級はしてないけどね。
と言うことは、あの乙女ゲームのパッケージのメインの攻略対象と、悪役令嬢が登場しないわけよね?
これはもう、ゲームとは違う世界ね!これで、聖女(=主人公)が現れなければ完璧じゅやない?
そもそも、私はあの顔になるのかしら。あ、ドリルヘアと分厚いお化粧ね。
ただ、あのゲームは聖女の名前は決まっていなくて、プレイヤーの名前を入れるのだ。だから、四年後に入学する者の中のどの子が聖女になるのかは、まだわからないのだ。
「トヨコ」
「ケンイチ先輩」
「ハルキア学園にようこそ。中等部へ入学おめでとう」
むぎゅっ
日本人じゃないケンイチは前世に比べたらかなり積極的だ。
やっぱり中にフェルゼン成分が入っているのじゃないの?
私まだ九歳なんだけど?
大丈夫?あのゲーム年齢制限ないよね。
「それにしても一緒の制服になるの四回目だな」
「そうね、中々ないわよね」
私たちは、小学生の時も、公立らしい簡単な制服があったわ。中学は古い学校だったから、学ランとセーラー服。だから一緒ではないけど、お揃いの校章が胸ポケットに刺繍されていたかな。
高校は、ほぼペアルックのブレザースーツだったわね。
今回は乙女ゲームならではのキラキラした縁取りなどのある制服だ。
そこへ私は二つのおさげに度のない眼鏡という、悪役令嬢からかけ離れたスタイルでいる。がり勉チビって感じね。
そこが実は健一に受けていた。
「それにおさげ!久しぶりー」
なんだかうれしそうに私の髪を掴んでフリフリしている。
「なあに?」
「お前、バレエやってたから中三ぐらいまでずっとロングヘアで、学校の時はこうやってたじゃん」
「そう言えばそうね。今日も自分で三つ編みにしたわ」
「これも似合うよー。おさげに触ってみたかったんだー。付き合いだしたときはもう習い事やめてたから、髪の毛を切ってただろう?」
そう言いながら私のおさげの髪の先で自分の頬を撫でている。
ほんとに、遠慮ないわね。
そもそも、あの時と私は全然顔が違うわよ。特にこのおさげなんて朱いし、目も朱いし。顔立ちはヨーロッパだし。
会話をしているうちに私もフェルゼン殿下じゃなくて健一にしか見えなくなっているけど。だから正式な場で間違えて呼びかけそうになって慌てることがあるのよ。
「おいおいケンイチ。その子は誰なんだい?
芋臭いけど、ちっちゃくて可愛い子じゃないか」
学園の校庭で見境なくベタベタしてくる健一の向こうから見覚えのある顔がやってきた。
「これは、ナルシオ殿下」
といいながら私を背に庇ってくれる。
「特待生で上がってきた平民のくせに、女といちゃついてるなんて。なかなかやるねえ」
え?お兄様ってこんなキャラだったっけ。あ、チャラい系か。
私の髪色がお母様と同じって気づいていないのかあ。観察力をもう少し鍛えなくちゃだめだよ。
「こ、この子は幼馴染でして、この子の親からも、学園で世話するように言われているんです。それで、案内を」
わあ、おどおどした平民のふりうまいなあ。
じゃあ、私も。
「ケンイチ兄ちゃん、このかたは?」
「兄ちゃん?うっ。コホン
ナルシオ殿下、この子はトヨコ。俺の幼馴染なんです。
トヨコ、この方は、ナルシオ ディアナ王子殿下。
お隣のディアナ王国の第二王子さまだよ」
「トヨコちゃんっていうの?私はナルシオだよ。よろしくね」
「・・・トヨコです。あの、よろしくおねがいします」
手を出してくる兄様を振り切って。ぴゃと健一の後ろに隠れてみる。
手袋をしているから握手はしたくないもん。
「へえ、こういう子ってなんだか新鮮」
「殿下の周りには肉食女子ばっかりだから」
そうなんだ。ナルシオ兄様も攻略対象だし一応王族だもんね。
思わず後ろから健一の袖の裾を引っ張ってみる。
もちろん私の手は料理の時以外は手袋に包まれたままだ。
「あの、ケンイチ兄ちゃん、そろそろあたし」
「そうだ、入学式が始まるな。こっちだよ。
じゃあ、殿下また」
しばらく廊下を歩いて、お兄様から随分離れたところで、こそこそと会話をする。
「健一、演技上手いんじゃない?」
「豊子こそ、おとおどした感じがうまく出てたよ」
なにこれ、役者の舞台裏の会話みたい。うふふ。
二人はさっそく邂逅してしまったナルシオ兄様に、ばれずにやり過ごせて手ごたえを感じるのだった。
私は学園に入学してびっくりした、なんとフェルゼンも平民特待生の入学枠で学生をしていたのだ。平民冒険者の〈ケンイチ〉として。飛び級はしてないけどね。
と言うことは、あの乙女ゲームのパッケージのメインの攻略対象と、悪役令嬢が登場しないわけよね?
これはもう、ゲームとは違う世界ね!これで、聖女(=主人公)が現れなければ完璧じゅやない?
そもそも、私はあの顔になるのかしら。あ、ドリルヘアと分厚いお化粧ね。
ただ、あのゲームは聖女の名前は決まっていなくて、プレイヤーの名前を入れるのだ。だから、四年後に入学する者の中のどの子が聖女になるのかは、まだわからないのだ。
「トヨコ」
「ケンイチ先輩」
「ハルキア学園にようこそ。中等部へ入学おめでとう」
むぎゅっ
日本人じゃないケンイチは前世に比べたらかなり積極的だ。
やっぱり中にフェルゼン成分が入っているのじゃないの?
私まだ九歳なんだけど?
大丈夫?あのゲーム年齢制限ないよね。
「それにしても一緒の制服になるの四回目だな」
「そうね、中々ないわよね」
私たちは、小学生の時も、公立らしい簡単な制服があったわ。中学は古い学校だったから、学ランとセーラー服。だから一緒ではないけど、お揃いの校章が胸ポケットに刺繍されていたかな。
高校は、ほぼペアルックのブレザースーツだったわね。
今回は乙女ゲームならではのキラキラした縁取りなどのある制服だ。
そこへ私は二つのおさげに度のない眼鏡という、悪役令嬢からかけ離れたスタイルでいる。がり勉チビって感じね。
そこが実は健一に受けていた。
「それにおさげ!久しぶりー」
なんだかうれしそうに私の髪を掴んでフリフリしている。
「なあに?」
「お前、バレエやってたから中三ぐらいまでずっとロングヘアで、学校の時はこうやってたじゃん」
「そう言えばそうね。今日も自分で三つ編みにしたわ」
「これも似合うよー。おさげに触ってみたかったんだー。付き合いだしたときはもう習い事やめてたから、髪の毛を切ってただろう?」
そう言いながら私のおさげの髪の先で自分の頬を撫でている。
ほんとに、遠慮ないわね。
そもそも、あの時と私は全然顔が違うわよ。特にこのおさげなんて朱いし、目も朱いし。顔立ちはヨーロッパだし。
会話をしているうちに私もフェルゼン殿下じゃなくて健一にしか見えなくなっているけど。だから正式な場で間違えて呼びかけそうになって慌てることがあるのよ。
「おいおいケンイチ。その子は誰なんだい?
芋臭いけど、ちっちゃくて可愛い子じゃないか」
学園の校庭で見境なくベタベタしてくる健一の向こうから見覚えのある顔がやってきた。
「これは、ナルシオ殿下」
といいながら私を背に庇ってくれる。
「特待生で上がってきた平民のくせに、女といちゃついてるなんて。なかなかやるねえ」
え?お兄様ってこんなキャラだったっけ。あ、チャラい系か。
私の髪色がお母様と同じって気づいていないのかあ。観察力をもう少し鍛えなくちゃだめだよ。
「こ、この子は幼馴染でして、この子の親からも、学園で世話するように言われているんです。それで、案内を」
わあ、おどおどした平民のふりうまいなあ。
じゃあ、私も。
「ケンイチ兄ちゃん、このかたは?」
「兄ちゃん?うっ。コホン
ナルシオ殿下、この子はトヨコ。俺の幼馴染なんです。
トヨコ、この方は、ナルシオ ディアナ王子殿下。
お隣のディアナ王国の第二王子さまだよ」
「トヨコちゃんっていうの?私はナルシオだよ。よろしくね」
「・・・トヨコです。あの、よろしくおねがいします」
手を出してくる兄様を振り切って。ぴゃと健一の後ろに隠れてみる。
手袋をしているから握手はしたくないもん。
「へえ、こういう子ってなんだか新鮮」
「殿下の周りには肉食女子ばっかりだから」
そうなんだ。ナルシオ兄様も攻略対象だし一応王族だもんね。
思わず後ろから健一の袖の裾を引っ張ってみる。
もちろん私の手は料理の時以外は手袋に包まれたままだ。
「あの、ケンイチ兄ちゃん、そろそろあたし」
「そうだ、入学式が始まるな。こっちだよ。
じゃあ、殿下また」
しばらく廊下を歩いて、お兄様から随分離れたところで、こそこそと会話をする。
「健一、演技上手いんじゃない?」
「豊子こそ、おとおどした感じがうまく出てたよ」
なにこれ、役者の舞台裏の会話みたい。うふふ。
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