元夫婦のきずなはゲームの運命を超えるのか~ファミリーリインカーネーション~

前野羊子

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20【平民の級友】

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 高等部の生活が始まった。
 私は四年もスキップして授業に参加しているので、お姉さん同級生にゲームとは別な視点で虐められたり揉めたりしないよう、注意深く過ごしていた。基本、お姉さんには母性本能をつつくように可愛く甘えるのが良いみたい。中身は若くない記憶があるのでやりにくいんだけどね。

 それでも平民クラスの皆は朗らかだし、おしゃべりや噂好きも多かったので、結構貴重な情報もいきかっている。
 そばかすが可愛い私とはまた違った色合いの赤毛のブリックが声をかけてくる。彼女も二つの三つ編みにしていて、一緒にお揃いを楽しんでいる。

 「トヨコちゃん、昨日ケンイチと冒険者の依頼を受けていたんでしょう?」
 そう、こっちでは私は冒険者活動で生活を稼ぎながら学園に特待生として入学していることを皆が知っている。
 「うん。パーティーだからね。ほかに二人も一緒よ」
 「すげーなトヨコ、そのパーティーの一人は騎士爵のイガニス様だろ?A級の」
 同じく掛け持ち冒険者のグリーも会話に加わってくる。ブリックが昨日の私の行動を知ってるはコイツのせいね
 「そう、あの人はミミおねえちゃんの彼氏だから」
 私は初期の設定どおりディアナ王国の屋敷の侍女見習いと冒険者を掛け持ちしながら、学園に通っていることになっているから、パーティーのメンバーに同じ侍女のミミがいても不自然ではない。そして、なんとイガニスとミミもめでたくお付き合いを開始したのだ。これで攻略対象が一人減ったという事でもある。
 だから昨日は冒険活動というダブルデートだった。
 「俺、トヨコとパーティー組んでみたいのに」
 「グリー、トヨコとなんだって?」
 「げ、ケンイチ」
 ケンイチが私の後ろから抱き着くように会話に加わってきた。
 「ちょっと、ケンイチ」

 「相変わらず、トヨコちゃんにべたべたねーアツイアツイ」
 ブリックが手で扇ぐようにしながらつぶやく。

 「ねえ、それよりトヨコちゃん、新しく中等部に入ったサクラって子のこと知ってる?」
 ブリック!私は今その情報が欲しいの。
 「あまり、隣の国の聖女様ということしか」
 「あんなのが聖女様なんて、俺ら庶民の夢や憧れをずたずたにしてくれるよなー」
 「グリーも知ってるんだ。見たのか?」
 やはり健一も気になっている。
 「なんでも、生徒会の貴族の女子に突っかかったらしい」
 「えーっと確か、生徒会長のナルシオ殿下に、なぜこの国のフェルゼン王子が生徒会長じゃないのか直接聞いてて」
 「うんうん」
 思わず健一をチラ見する。
 「ナルシオ殿下はできるだけ穏やかに説明していたけど、納得できないと叫んでいたんだって」
 「へえ」
 「あまりの言動に耐え切れず、副会長のロビン公爵令息が窘めていたんだけど、それにも切れたらしくて」
 「そうそう、なぜロビン様は王子じゃなくて公爵令息なの?って言ってたらしいぜ」
 「あちゃー。ロビン様はフェルゼン王子の従弟なんだよな。
 それにしても高位の貴族令息の身分のことを、たかが男爵の養女がそんなこと聞くか?」
 健一の呆れたような言葉に頷く。
 サクラさんすごいわね。それに
 「やっぱり切れた」
 「でも一応聖女様だから、中等部の学年長というポジションをあてがって、生徒会に入れたらしい」

 小中高の一環の学園だから全体を仕切る生徒会の役員は高等部の学生にしかなれない。
もともとのゲームでも主人公は中学で入学して、生徒会役員に加わるのではなくて、乙女ゲームでは年齢のバラツキのある対象を攻略していくのだ。
 フェルゼン王子の場合、聖女(主人公)から見て、王子という立場と年上の魅力があって、それに対して攻略していくわけだけど、まだ中学生のサクラは対等で突撃するつもりだったのか。中身は結構年上の人かもしれないわね。
 私だってこのゲームをやってたのは、太一が高校生の時だったからおばさんだったけど、ゲームをやりだしたら、気持ちは少女だったのにね。

 肉食ってことは、逆にもう少し中身は若いかもしれないけどね。
 
 「ねえ、ケンイチ、ロビン様は・・・」
 「大丈夫あいつの好みも絶対さくら様ではない」
 「そうだといいけど」
 主人公補正とかありませんように。ないか、あったらもう少しまともな聖女なんじゃない?
 
 
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