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第一章 王国編第一部(初等部)
エピソード54 緊急事態と救援
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「「……イヴ……クライヴ!」」
オレはモーガンとフィーネの声で意識を取り戻した。
どれぐらい時間が経ったのだろうか?
身体を起こそうとするが左腕に激痛が走った。
「痛ってぇ」
「とりあえず、副え木で固定をしているけど歩けそうかい?」
モーガンが心配そうに声をかけてくる。
「あぁ、もう大丈夫。みんな助かったよ」
「おめぇがいけるんなら大丈夫じゃろ」
「おい! 誰のせいでクライヴに負担をかけたと思っているんだ!」
「ワシのせいか! ワシャ素人やぞ! 初めての事だらけじゃ動けるわけなかろうが!」
「だったら! ぼくの指示通りに動いてたら君はオオトカゲの注意を引きつける事ができたのではないか!」
「何で、女のおめぇに指示されないかんのじゃ!」
「関係ないだろそんな事! クライヴは大怪我をしたんだぞ……ぼく達の責任が大きいんだ……」
「…………知っとるわ……じゃけん悔しいんじゃワシ自身に……」
リアナとショーンは言い合いをしているが、二人ともオレを想ってのことなんだな……そうやって絆は深まっていくんだよ若造達よ。
「はいはい、それじゃクライヴも復活したし、王都に戻ろう! 今から戻れば門限には間に合うよ」
いつものようにモーガンがみんなに声をかけて、オレ達は王都に向かった。
帰り道の三十分間、モーガンが万が一の事を考えてみんなに伝えた。
「敵が現れた時は、クライヴが怪我をしているから、みんなクライヴを取り囲むように陣形を組もうショーンが前衛、サイドはボクとリアナ、後衛はフィーネに任せたよ」
モーガン……その発言はフラグ…………
その時、先程の集落から北の位置から王都に向かって一台の馬車が急いでいた。馬に騎乗した護衛兵も二十名程度いるが何かと闘っているようだった。
王都まで残り四百メートル付近の所で馭者が操る馬の足が止まった。
「馬車の馬が投げ槍のような物で殺されたわ……」
フィーネは深刻そうに言った。
それはオレが今一番聞きたくない言葉だった。
「この距離なら王都から援軍が来るんじゃないのか?」
オレが震える声で言うとモーガンは首を振った。
「気づいていたらね……それに直ぐには駆けつけれないよ。それまで間に合うかどうか……」
「でも、クライヴが怪我してるし、アタシは……王都の衛兵さんに任せる方がいいと思うわ」
フィーネはオレの心配をしてくれた。
王都と馬車の間を目指して歩くが、みんなは馬車の人を助けるかオレの安全かで悩んでいるようだった。
「そもそも、あれだけの護衛兵がいて、ボク達で闘えるかどうかも分からない……むしろ足手まといになるかもしれない……」
モーガンは冷静に現状を分析した。
少しずつ、近づくと徐々に馬車の様子が遠くから見えてきた。
「フィーネ」
「うん」
しばらくフィーネは集中して馬車や何かと闘う護衛兵の様子を見ていた。
「クライヴ、ゴブリンが十匹とその後ろにはオークが三匹いたわ」
「えっ、オーク…………あの魔物の?」
オレの驚いた声にみんなが反応した。
「「オークだって!」」
「オークってすげぇんか?」
モーガンとリアナも驚き、なおさら助けに行くのを躊躇していた。
オークは中級冒険者レベルで、普段は聖グランパレス皇国の西の森に住み、結界で出てこれないはずだ。そんな魔物がここ王都周辺にいた。
「モーガン。もしかすると、この前の依頼書のヤツか?」
「いや、あの依頼は達成されていたはずだ。はぐれオークだと思うよクライヴ」
オークに気付かれないように王都と馬車の間を歩き続けて、馬車がはっきりと目視できる位置まできた………………ゴブリン達とオーク二匹は退治できたようだが二十名いた護衛兵は怪我をして負った五名だけだった。
残りの十五名は、誰かも判別つかない塊、跡形もなく防具だけ転がっていたり、馬車は血に染まって悲惨な状況だった。
オークもある程度怪我を負っているようだが、人間に比べると二回りぐらい身体の大きさが違いすぎる。
二メートルから三メートル近くある太った身体はとても力強く、塊となった護衛兵の斧を拾って強靭なパワーと速度で投げつけていた。
そして……また一人の護衛兵が失われた……
その悲惨な状況からオレ達は戦意を削がれて逃げ出そうとした……………………が、オレはあの馬車の紋章が気になった。
(どこかで見たような気が………………)
モーガン達が逃げる中、オレは考え事をしていた為みんなの声に気づく事ができず一人出遅れてしまった。
そんなオレの顔の横三十センチの所を槍が飛んできた………………振り向くとオレは既にオークに気づかれていた………………
「オイ! 少年早く逃げないか! ギャャァァ」
オークは両手に槍と斧を持ち、護衛兵は槍で串刺しにされてしまった。槍で貫かれた護衛兵は小刻みに震えて、すぐに動きが止まった。
護衛兵は残り三人となった…………
「クライヴ、早く!」
遠くでモーガンの声が聞こえるが、オークに気付かれたらモーガン達も危ない。
「もう無理だモーガン! 王都に急げ! 助けを呼んでくれ!」
それだけでモーガンはオレが時間稼ぎをする事に気づいたが……より生存確率の高い方を選んでみんなと王都へ走っていった。
オレは振り返らず馬車に向かった。
馬車内の人が無事かどうか確認すると中には、ランパード辺境伯の息子のテリー様ぐらいの年齢の細い身体の男性が女性の使用人と共に震えていた。男性は茶髪のロングヘアーに茶色の目をしておりメガネをかけている。
(貴族か……身なりからして……面倒な事にならなければ良いが…………)
「すみませんがお二人とも、ここから外に出た方が安全ですので私について来てくれませんか?」
「な、な、何を言ってるんだい君は! 怪我をしている君について来いだと、どうやってオークから逃げるんだ!」
「仲間達が王都へ向かっていますので助けが来るはずです。そこまで逃げれば安全でしょう」
「ゲロロロ」
突然、男性は馬車内で嘔吐した……余程怖いのか……分からんでもない。
オレも今もらいゲロをしそうだからな!
「そんな目で見るな、僕は元々乗り物酔いをするんだ」
涙目で男性はオレに言い、嘔吐のおかげで男性は少し冷静さを取り戻していた。
「まずは使用人を安全に逃げさせたい。その為には囮もしくは護衛兵と共に戦闘に加わる必要があるが、僕は闘う事ができない……君は闘う事はできるか?」
男性はオレを子ども扱いせず真っ直ぐオレの目を見ている。
「一秒半だけなら、護衛兵ぐらいは闘う事ができます」
オレは正直に答えると、男性は視線を落とした。
「そうか……さすがに君みたいな若い命を犠牲にして、逃げるのは……」
良い貴族なんだろう。罪悪感に駆られているようだった。
「一人ではありません。ぼくも闘わせていただきます」
「君は?」
「リアナと申します」
「ヘンダーソン子爵家の」
「私は父から勘当された身ですので、ただのリアナでございます」
男性はオレとリアナを見てから一つ提案をした。
「僕も含めて三人とも囮になるのはどうかな?」
「「いや」」
オレのリアナの声がハモった。
さすがに逃げれる状況じゃないから、腹を括るよ。オレは大きく深呼吸をして膝の震えを止める。
「クライヴと護衛の方に加勢しようと思います」
「リアナと闘います。撹乱ぐらいはできると思うので」
リアナとオレの覚悟は決まっていた。
「「二人とも馬車から出てオークに気付かれぬようゆっくりと王都に進んで下さい」」
そして、オレとリアナは馬車から外に出ると、また護衛兵は一人亡くなっていた。
闘える護衛兵は所々傷を負った軽傷の護衛兵と、口から血が出ている重傷の護衛兵しかいなかった…………
「グオオオオ!」
オークは叫びながら槍を横に薙ぎ払い、重傷の護衛兵は大きく吹き飛ばされた。
「「加勢します」」
「仲間達が王都に助けを呼びに行ってます。それまで耐えましょう」
オレは護衛兵に助けが来る事を伝えた。
「あぁ」
護衛兵はあまりにも若いオレ達が時間稼ぎとして加勢にきた事に申し訳なさそうな顔をして、状況を伝えてくれた。
「坊主ども、オークの右眼は深い斬り傷で見えてないはずだ。それと、両脚にも所々傷があるだろう?
ある程度ダメージは蓄積しているはずだ。背後か顔か心臓を狙えたら良いんだが、こっちも人数が少なくなり、全く歯が立たなくなっちまった」
「クライヴ、オークは脂肪が分厚いから中々攻撃は通らない。今の状態でいけるか!」
リアナはオレならオークを倒せるはずと信じている………………ちょっと困る……オレも救援来るまで逃げ回る作戦のつもりだったから…………
オレはモーガンとフィーネの声で意識を取り戻した。
どれぐらい時間が経ったのだろうか?
身体を起こそうとするが左腕に激痛が走った。
「痛ってぇ」
「とりあえず、副え木で固定をしているけど歩けそうかい?」
モーガンが心配そうに声をかけてくる。
「あぁ、もう大丈夫。みんな助かったよ」
「おめぇがいけるんなら大丈夫じゃろ」
「おい! 誰のせいでクライヴに負担をかけたと思っているんだ!」
「ワシのせいか! ワシャ素人やぞ! 初めての事だらけじゃ動けるわけなかろうが!」
「だったら! ぼくの指示通りに動いてたら君はオオトカゲの注意を引きつける事ができたのではないか!」
「何で、女のおめぇに指示されないかんのじゃ!」
「関係ないだろそんな事! クライヴは大怪我をしたんだぞ……ぼく達の責任が大きいんだ……」
「…………知っとるわ……じゃけん悔しいんじゃワシ自身に……」
リアナとショーンは言い合いをしているが、二人ともオレを想ってのことなんだな……そうやって絆は深まっていくんだよ若造達よ。
「はいはい、それじゃクライヴも復活したし、王都に戻ろう! 今から戻れば門限には間に合うよ」
いつものようにモーガンがみんなに声をかけて、オレ達は王都に向かった。
帰り道の三十分間、モーガンが万が一の事を考えてみんなに伝えた。
「敵が現れた時は、クライヴが怪我をしているから、みんなクライヴを取り囲むように陣形を組もうショーンが前衛、サイドはボクとリアナ、後衛はフィーネに任せたよ」
モーガン……その発言はフラグ…………
その時、先程の集落から北の位置から王都に向かって一台の馬車が急いでいた。馬に騎乗した護衛兵も二十名程度いるが何かと闘っているようだった。
王都まで残り四百メートル付近の所で馭者が操る馬の足が止まった。
「馬車の馬が投げ槍のような物で殺されたわ……」
フィーネは深刻そうに言った。
それはオレが今一番聞きたくない言葉だった。
「この距離なら王都から援軍が来るんじゃないのか?」
オレが震える声で言うとモーガンは首を振った。
「気づいていたらね……それに直ぐには駆けつけれないよ。それまで間に合うかどうか……」
「でも、クライヴが怪我してるし、アタシは……王都の衛兵さんに任せる方がいいと思うわ」
フィーネはオレの心配をしてくれた。
王都と馬車の間を目指して歩くが、みんなは馬車の人を助けるかオレの安全かで悩んでいるようだった。
「そもそも、あれだけの護衛兵がいて、ボク達で闘えるかどうかも分からない……むしろ足手まといになるかもしれない……」
モーガンは冷静に現状を分析した。
少しずつ、近づくと徐々に馬車の様子が遠くから見えてきた。
「フィーネ」
「うん」
しばらくフィーネは集中して馬車や何かと闘う護衛兵の様子を見ていた。
「クライヴ、ゴブリンが十匹とその後ろにはオークが三匹いたわ」
「えっ、オーク…………あの魔物の?」
オレの驚いた声にみんなが反応した。
「「オークだって!」」
「オークってすげぇんか?」
モーガンとリアナも驚き、なおさら助けに行くのを躊躇していた。
オークは中級冒険者レベルで、普段は聖グランパレス皇国の西の森に住み、結界で出てこれないはずだ。そんな魔物がここ王都周辺にいた。
「モーガン。もしかすると、この前の依頼書のヤツか?」
「いや、あの依頼は達成されていたはずだ。はぐれオークだと思うよクライヴ」
オークに気付かれないように王都と馬車の間を歩き続けて、馬車がはっきりと目視できる位置まできた………………ゴブリン達とオーク二匹は退治できたようだが二十名いた護衛兵は怪我をして負った五名だけだった。
残りの十五名は、誰かも判別つかない塊、跡形もなく防具だけ転がっていたり、馬車は血に染まって悲惨な状況だった。
オークもある程度怪我を負っているようだが、人間に比べると二回りぐらい身体の大きさが違いすぎる。
二メートルから三メートル近くある太った身体はとても力強く、塊となった護衛兵の斧を拾って強靭なパワーと速度で投げつけていた。
そして……また一人の護衛兵が失われた……
その悲惨な状況からオレ達は戦意を削がれて逃げ出そうとした……………………が、オレはあの馬車の紋章が気になった。
(どこかで見たような気が………………)
モーガン達が逃げる中、オレは考え事をしていた為みんなの声に気づく事ができず一人出遅れてしまった。
そんなオレの顔の横三十センチの所を槍が飛んできた………………振り向くとオレは既にオークに気づかれていた………………
「オイ! 少年早く逃げないか! ギャャァァ」
オークは両手に槍と斧を持ち、護衛兵は槍で串刺しにされてしまった。槍で貫かれた護衛兵は小刻みに震えて、すぐに動きが止まった。
護衛兵は残り三人となった…………
「クライヴ、早く!」
遠くでモーガンの声が聞こえるが、オークに気付かれたらモーガン達も危ない。
「もう無理だモーガン! 王都に急げ! 助けを呼んでくれ!」
それだけでモーガンはオレが時間稼ぎをする事に気づいたが……より生存確率の高い方を選んでみんなと王都へ走っていった。
オレは振り返らず馬車に向かった。
馬車内の人が無事かどうか確認すると中には、ランパード辺境伯の息子のテリー様ぐらいの年齢の細い身体の男性が女性の使用人と共に震えていた。男性は茶髪のロングヘアーに茶色の目をしておりメガネをかけている。
(貴族か……身なりからして……面倒な事にならなければ良いが…………)
「すみませんがお二人とも、ここから外に出た方が安全ですので私について来てくれませんか?」
「な、な、何を言ってるんだい君は! 怪我をしている君について来いだと、どうやってオークから逃げるんだ!」
「仲間達が王都へ向かっていますので助けが来るはずです。そこまで逃げれば安全でしょう」
「ゲロロロ」
突然、男性は馬車内で嘔吐した……余程怖いのか……分からんでもない。
オレも今もらいゲロをしそうだからな!
「そんな目で見るな、僕は元々乗り物酔いをするんだ」
涙目で男性はオレに言い、嘔吐のおかげで男性は少し冷静さを取り戻していた。
「まずは使用人を安全に逃げさせたい。その為には囮もしくは護衛兵と共に戦闘に加わる必要があるが、僕は闘う事ができない……君は闘う事はできるか?」
男性はオレを子ども扱いせず真っ直ぐオレの目を見ている。
「一秒半だけなら、護衛兵ぐらいは闘う事ができます」
オレは正直に答えると、男性は視線を落とした。
「そうか……さすがに君みたいな若い命を犠牲にして、逃げるのは……」
良い貴族なんだろう。罪悪感に駆られているようだった。
「一人ではありません。ぼくも闘わせていただきます」
「君は?」
「リアナと申します」
「ヘンダーソン子爵家の」
「私は父から勘当された身ですので、ただのリアナでございます」
男性はオレとリアナを見てから一つ提案をした。
「僕も含めて三人とも囮になるのはどうかな?」
「「いや」」
オレのリアナの声がハモった。
さすがに逃げれる状況じゃないから、腹を括るよ。オレは大きく深呼吸をして膝の震えを止める。
「クライヴと護衛の方に加勢しようと思います」
「リアナと闘います。撹乱ぐらいはできると思うので」
リアナとオレの覚悟は決まっていた。
「「二人とも馬車から出てオークに気付かれぬようゆっくりと王都に進んで下さい」」
そして、オレとリアナは馬車から外に出ると、また護衛兵は一人亡くなっていた。
闘える護衛兵は所々傷を負った軽傷の護衛兵と、口から血が出ている重傷の護衛兵しかいなかった…………
「グオオオオ!」
オークは叫びながら槍を横に薙ぎ払い、重傷の護衛兵は大きく吹き飛ばされた。
「「加勢します」」
「仲間達が王都に助けを呼びに行ってます。それまで耐えましょう」
オレは護衛兵に助けが来る事を伝えた。
「あぁ」
護衛兵はあまりにも若いオレ達が時間稼ぎとして加勢にきた事に申し訳なさそうな顔をして、状況を伝えてくれた。
「坊主ども、オークの右眼は深い斬り傷で見えてないはずだ。それと、両脚にも所々傷があるだろう?
ある程度ダメージは蓄積しているはずだ。背後か顔か心臓を狙えたら良いんだが、こっちも人数が少なくなり、全く歯が立たなくなっちまった」
「クライヴ、オークは脂肪が分厚いから中々攻撃は通らない。今の状態でいけるか!」
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