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しおりを挟むいつからか、泰生が早めに仕事が終わった日には、遥斗のマンションに来るのが、当たり前になっていた。
と言っても、忙しい泰生は十日に一度くらいの頻度だったが、ここ三ヶ月は、休日出勤すら当たり前の泰生だから、月に二、三回会える程度。
疲れた顔をしているくせに、遥斗の部屋に来ると、そのままベッドに直行なんてこともザラだ。
そんな泰生に、わがままなんて言ったら、面倒くさいと思われて、アッサリと捨てられそうで怖かった。
遥斗は、いつの間にか臆病になってしまった。本気で恋をするなんて、以前の自分には考えられないことだ。泰生の一言や、ほんのわずかな仕草に感情が揺さぶられる。
泰生が来れる日は、昼に「会えるか?」と一言だけ連絡が入る。遥斗は、泰生からの連絡に喜びながらも、必死で感情を押し殺して「待ってる」と返すだけ。どう考えても、遥斗の想いが叶う気がしない。
この素っ気なさは、やはり割り切った相手としてしか見てもらえていないのだろう。
「でも、諦めきれない……」
シーツをくしゃりと握りしめて、思わずため息を漏らす。
「遥斗? どうしたんだ」
「た、泰生」
そこにいたのは、すっかり帰り支度を終えた泰生だった。どうやら、遥斗は思っていたより長くボンヤリしていたようだ。
「帰るんだね。泰生」
「ああ、もう遅いからな。そうだ、今週末空いてるか? 久しぶりに休めるんだ」
「え? 一緒に過ごしてくれるの?」
「当たり前だろ……遥斗?」
驚いたような泰生の声に、遥斗は自分が涙を流していることに気がついた。慌てて拭おうとしたが、その前に泰生が、大好きな大きな手で遥斗の頬を挟んだ。
「なぜ泣く?」
「な、なんでもな……」
「遥斗。言ってくれないとわからない」
そのセリフはこっちのセリフだと、遥斗はムッとして泰生を睨む。
「寂しい思いをさせているのは理解している。でも、あと少しで落ち着くはずだ。遥斗との時間が欲しくて、今の会社から、友人の立ち上げた会社に転職するんだ」
「え……転職?」
「休日出勤と言っていたのは、本当はそちらでいろいろ話し合いをしていたんだ」
遥斗は混乱する。今、泰生は遥斗との時間が欲しいと言ったように聞こえた。
遥斗の口から、ずっと気にしていた言葉が、こぼれ落ちた。
「セフレじゃないの?」
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