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4章 世界樹のダンジョンと失われし焔たちの記憶
98話
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ふたりの関係が進展する機会は突然訪れた。
焔が数少ないお友達である千歳と一緒に遊びに出かけた時だ。
すっかり夕暮れ時となり、舞依が家に帰る時間を過ぎてしまっていることに焔は気づいていなかった。
そんな焔がいつもの公園の前を通りかかった時、ふと中を覗くとブランコのところに座っている舞依が目に入った。
「しまった」
家の鍵を閉めて出かけていた焔は、舞依が家に入れずにこんなところで時間を潰していたんじゃないかと焦る。
「あ、焔っ」
焔は冷や汗をかきながら舞依のところへ駆け寄った。
「舞依っ」
「あ、お兄ちゃん」
「ごめん、家に入れなかったよな」
「うん、だからブランコで遊んでた」
「ごめん、ごめんな。俺が悪かった」
焔は罪悪感から何かできないかと、とりあえず舞依の頭をなでた。
「うう~」
舞依は変な声を出しながら、でも抵抗するようなことはなくおとなしくなでられていた。
そこに後ろから千歳が近づいてくる。
「焔、その子は?」
「ああ、千歳。妹の舞依だよ」
「妹いたんだ」
「言ってなかったっけ?」
「聞いてないよ」
千歳は舞依に挨拶をしようと焔の隣に移動し、舞依を見る。
「こんにちは舞依ちゃん、私は千歳、よろしくね」
「あう……」
千歳がニコッと笑うと、舞依は急いでブランコから降りて焔の後ろに逃げた。
焔にしがみついて服をぎゅっと握りながら、警戒心MAXで千歳のことを不安そうに見ている。
「あらら……」
「こんな舞依は初めて見たぞ」
「人見知りするのかもね。あと焔、頬が緩み過ぎだよ」
「いや、ちょっとキュンとした」
「……まあいいや。それじゃあ私は帰るね、バイバイ」
「ああ、バイバイ」
千歳が帰った後も、舞依は焔の服を握って離さない。
仕方なく焔はそのままの状態で家まで帰ることになった。
その夜、珍しく神楽が家にいて、焔と舞依は何をするわけでもないが同じリビングで時間を過ごしていた。
本人たちは気づいていないが、やはり寂しいのかもしれない。
そんな時、ふと夕方の出来事を思い出して声をかけた。
「そうだお母さん、舞依にも家の鍵を渡したいんだけど」
「え、何? 小学一年生に鍵は早くないかな?」
「でもふたりとも出かけたら舞依が家に入れなくなるんだよ。今日もそうだったし」
「そっか~。私も親らしいことできてないしなぁ。本当はダメだけど、合い鍵作っとこうか」
焔と神楽の間で話が決まりかけた時、珍しく舞依が話に入ってきた。
「いらない」
「え? 舞依ちゃんどうしたの?」
「鍵はいらない。出かける時はお兄ちゃんと一緒に行くからいい」
「あら~」
舞依の言葉を聞いて、頬を緩ませる神楽。
「それがいいわね。やっぱりこんなかわいい舞依ちゃんがひとりでお出かけは危ないわ」
「ずっと家にこどもを置いていくお母さんがそれを言う?」
「焔君、お兄ちゃんなんだから舞依ちゃんのこと守ってあげないとだめよ」
「え~」
口では面倒くさそうな返事をする焔だったが、内心ではちょっぴり喜んでいたりもした。
舞依が自分と一緒にいたいと言ってくれていること。
そして舞依と自分が一緒にいる口実ができたこと。
それがうれしくて、焔の心は今まで感じたことのないような、よくわからないもので温かくなった。
「まあ、しょうがないな」
「あら、なんか嬉しそうだね」
「そんなことないから」
「ふ~ん」
照れ隠しをする焔だが、顔は緩んでいて神楽にはばっちりバレていた。
神楽は焔のそばに寄ると、やさしく頭をなでる。
今まで兄妹らしいところがほとんどなかったふたりが、少しずつ打ち解けていってることに一安心したようだ。
頭をなでられながら、焔は家族という存在の温かさをその身で感じ取っていた。
「……お兄ちゃんがお母さんになでられて鼻の下を伸ばしてる」
「ちょっ、変なこと言うんじゃない! なんで俺がお母さん相手に鼻の下を伸ばすんだよ」
舞依は焔の姿を見て、なぜか胸がモヤモヤしてジト目をむける。
「お母さん、舞依のこともなでてやって! きっと嫉妬してるんだよ!」
「よ~し、お母さんにまっかせなさい!」
神楽は両手の指を怪しく動かしながら舞依に近づいていき、でもごく普通に頭をなでる。
しかし舞依の表情は焔のようには変化しなかった。
「あれ? 舞依ちゃん? 気持ちよくないの?」
「全然。お兄ちゃんの方がいい」
「が~ん!」
舞依の直球な言葉にショックを受けた神楽は、わざとらしくその場に崩れ落ちた。
そんなやり取りを見ていた焔は自然と笑みを浮かべる。
焔にとって、その時の3人はひさしぶりに家族だった。
焔が数少ないお友達である千歳と一緒に遊びに出かけた時だ。
すっかり夕暮れ時となり、舞依が家に帰る時間を過ぎてしまっていることに焔は気づいていなかった。
そんな焔がいつもの公園の前を通りかかった時、ふと中を覗くとブランコのところに座っている舞依が目に入った。
「しまった」
家の鍵を閉めて出かけていた焔は、舞依が家に入れずにこんなところで時間を潰していたんじゃないかと焦る。
「あ、焔っ」
焔は冷や汗をかきながら舞依のところへ駆け寄った。
「舞依っ」
「あ、お兄ちゃん」
「ごめん、家に入れなかったよな」
「うん、だからブランコで遊んでた」
「ごめん、ごめんな。俺が悪かった」
焔は罪悪感から何かできないかと、とりあえず舞依の頭をなでた。
「うう~」
舞依は変な声を出しながら、でも抵抗するようなことはなくおとなしくなでられていた。
そこに後ろから千歳が近づいてくる。
「焔、その子は?」
「ああ、千歳。妹の舞依だよ」
「妹いたんだ」
「言ってなかったっけ?」
「聞いてないよ」
千歳は舞依に挨拶をしようと焔の隣に移動し、舞依を見る。
「こんにちは舞依ちゃん、私は千歳、よろしくね」
「あう……」
千歳がニコッと笑うと、舞依は急いでブランコから降りて焔の後ろに逃げた。
焔にしがみついて服をぎゅっと握りながら、警戒心MAXで千歳のことを不安そうに見ている。
「あらら……」
「こんな舞依は初めて見たぞ」
「人見知りするのかもね。あと焔、頬が緩み過ぎだよ」
「いや、ちょっとキュンとした」
「……まあいいや。それじゃあ私は帰るね、バイバイ」
「ああ、バイバイ」
千歳が帰った後も、舞依は焔の服を握って離さない。
仕方なく焔はそのままの状態で家まで帰ることになった。
その夜、珍しく神楽が家にいて、焔と舞依は何をするわけでもないが同じリビングで時間を過ごしていた。
本人たちは気づいていないが、やはり寂しいのかもしれない。
そんな時、ふと夕方の出来事を思い出して声をかけた。
「そうだお母さん、舞依にも家の鍵を渡したいんだけど」
「え、何? 小学一年生に鍵は早くないかな?」
「でもふたりとも出かけたら舞依が家に入れなくなるんだよ。今日もそうだったし」
「そっか~。私も親らしいことできてないしなぁ。本当はダメだけど、合い鍵作っとこうか」
焔と神楽の間で話が決まりかけた時、珍しく舞依が話に入ってきた。
「いらない」
「え? 舞依ちゃんどうしたの?」
「鍵はいらない。出かける時はお兄ちゃんと一緒に行くからいい」
「あら~」
舞依の言葉を聞いて、頬を緩ませる神楽。
「それがいいわね。やっぱりこんなかわいい舞依ちゃんがひとりでお出かけは危ないわ」
「ずっと家にこどもを置いていくお母さんがそれを言う?」
「焔君、お兄ちゃんなんだから舞依ちゃんのこと守ってあげないとだめよ」
「え~」
口では面倒くさそうな返事をする焔だったが、内心ではちょっぴり喜んでいたりもした。
舞依が自分と一緒にいたいと言ってくれていること。
そして舞依と自分が一緒にいる口実ができたこと。
それがうれしくて、焔の心は今まで感じたことのないような、よくわからないもので温かくなった。
「まあ、しょうがないな」
「あら、なんか嬉しそうだね」
「そんなことないから」
「ふ~ん」
照れ隠しをする焔だが、顔は緩んでいて神楽にはばっちりバレていた。
神楽は焔のそばに寄ると、やさしく頭をなでる。
今まで兄妹らしいところがほとんどなかったふたりが、少しずつ打ち解けていってることに一安心したようだ。
頭をなでられながら、焔は家族という存在の温かさをその身で感じ取っていた。
「……お兄ちゃんがお母さんになでられて鼻の下を伸ばしてる」
「ちょっ、変なこと言うんじゃない! なんで俺がお母さん相手に鼻の下を伸ばすんだよ」
舞依は焔の姿を見て、なぜか胸がモヤモヤしてジト目をむける。
「お母さん、舞依のこともなでてやって! きっと嫉妬してるんだよ!」
「よ~し、お母さんにまっかせなさい!」
神楽は両手の指を怪しく動かしながら舞依に近づいていき、でもごく普通に頭をなでる。
しかし舞依の表情は焔のようには変化しなかった。
「あれ? 舞依ちゃん? 気持ちよくないの?」
「全然。お兄ちゃんの方がいい」
「が~ん!」
舞依の直球な言葉にショックを受けた神楽は、わざとらしくその場に崩れ落ちた。
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