〈パンドラ〉-政府直下特殊情報局超高密度情報集積体対策室

とーかちゃん

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1.遺物と異物

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「ふぁあ、私、寝てました?」
 ノカが目を覚ましたのは次の日、つまり、尋問する日の朝であった。当然だが、格好は昨日のまま。押し入れの臭いがするタオルケットがかけられている。場所を教えた覚えはない」
「探してくれたんですね、ありがとうございます」
「普通、アルコール入りかどうかわかるだろ」
「こんな、フレッシュ・フルーツみたいな絵が描いてあったらわかりませんよ!」
「そうだとしてもひと口目でわからないか?」
「むぅ、私はひと口でもダメな人なんです」
「そうか、それは災難だったな」
「ええ、考える時間がめっちゃ削られました。それに勤務中にアルコールなんて」
 ノカは頭を抱える。リアクションの大きさから、目が覚めたことが見てとれた。

「あーもう、あと何時間ですか?」
「あと二時間だ」
「じゃあ、一時間後には出発しないといけませんし、時間がないですね」
「呑むからだ」
「そんな事言われたって! 分からなかったんですもん! あんなの!」
 ノカは怒っているが、何に対してかは本人も理解していなかった。
「もうほんとに、犯罪ですよ犯罪、ステルス飲酒させ罪ですよ。あんな皮しておいて・・・・・・」
「どうした?」
「わかったかもしれない」
「何が?」
「シルヴァ公国がどうやって指を輸出するか、です」
「本当か?」
「多分、すごく突飛ですので、あと一時間で詰めるだけ詰めたいです」



 ノカとアラタは取り調べ室に到着した。ギリギリになったが二人の話し合いは一つの着地をした。
 途中連絡があり、オーリオは被疑者であるタイグリーを引き取りにきた、シルヴァ公国からの使者を出迎えることになった。
 取り調べ室の外には刑事が数人立っていた。二人は彼らに向かい合うようにして並ぶ。
「政府直下特殊情報局超高密度情報集積体対策室のアラタです。本日は被疑者の取り調べに参りました」
「ノカです」
「〈パンドラ〉の方々ですね。話は聞いてますよ。貴方が捕まえたんですって?」
「ええ」
 二人は彼らの声、口調からなんとなく邪険にされていると感じた。取り調べの最後のチャンスを奪われたのだから、仕方もないだろう。

 会話を切り上げて取り調べ室に入る。
 狭い立方体の部屋で、タイグリーと向き合う。ノカが椅子に座り、アラタはドア付近に立っている。
 捕まえたのは一昨日である、印象は大きく変わっていない、とノカは思った。
「改めてですが貴方の名前はタイグリーでよろしいですか?」
「ああ」
 タイグリーは何もない横を向いている。
「時間がありませんので、手短にいきましょう。貴方が〈勇者〉の指を持っていますね?」
「知らない」
「〈勇者〉は知ってますか?」
「言葉ぐらいは」
「タイグリーさん、貴方のお腹でしょう?」

 目の前の男の眼が見開かれる。顔がこちらを向く。初めて二人と目があった。
 勝負あった、とアラタは思った。
「な、何を言っている」
「政府専用機に乗って貴方は本国へ帰る。そして腹の中から〈勇者〉の指を取り出す、というシナリオですよね」
「そんな妄想には付き合ってらんないね」
「ええ、私もそう思います。身体の中に入れて出国するなんて馬鹿げてます」
「第一、どうしてわざわざ捕まる必要があるんだ?」
「それは一番安全だからです。シルヴァ公国へのアクセス手段は国内であれば、厳重に見張られています。ほぼ全てで魔力探知されると言ってもいいでしょう。しかし、真っ当に例外的にシルヴァ公国に繋がるのであれば、そのハードルはぐっと下がります」
「それが国家間の人間の引き渡しだってか?」
「そういうことです。それなら魔力探知機やそれ以外の全ての検査をパスできます」
「面白い考えだと思うよ」
「口の中を見せていただけませんか? 糸などが歯に括られていると、私は踏んでます」
「証拠も無く、口は開けられないね」
「はぁ、アラタさん、お願いします」
「先程から、魔力探知をしていました。貴方の体内から〈勇者〉の肉片に似た魔力を検知しました」
 アラタは手にしていた端末を差し出した。
「ふっ、完敗だね。好きにしなよ」
 タイグリーは口を開け、糸をするすると巻き取った。

 細い糸の先には、丁度小指程度なら収まりそうなカプセルが結ばれていた。手袋をはめたノカが、結界を解き、カプセルが二つに割れた。
 中からは想定通りと言うべきか、指が出てきた。ノカはそれを丁寧な手つきで持参したケースに収納する。
 二人は取り調べ室を出る。
 刑事が無然とした表情で立っている。
「私たちの仕事はここまでです。あとは任せます」
 そう言い残して、ノカとアラタは取り調べ室を出ていった。
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