10 / 11
1.遺物と異物
10
しおりを挟む
「ふぁあ、私、寝てました?」
ノカが目を覚ましたのは次の日、つまり、尋問する日の朝であった。当然だが、格好は昨日のまま。押し入れの臭いがするタオルケットがかけられている。場所を教えた覚えはない」
「探してくれたんですね、ありがとうございます」
「普通、アルコール入りかどうかわかるだろ」
「こんな、フレッシュ・フルーツみたいな絵が描いてあったらわかりませんよ!」
「そうだとしてもひと口目でわからないか?」
「むぅ、私はひと口でもダメな人なんです」
「そうか、それは災難だったな」
「ええ、考える時間がめっちゃ削られました。それに勤務中にアルコールなんて」
ノカは頭を抱える。リアクションの大きさから、目が覚めたことが見てとれた。
「あーもう、あと何時間ですか?」
「あと二時間だ」
「じゃあ、一時間後には出発しないといけませんし、時間がないですね」
「呑むからだ」
「そんな事言われたって! 分からなかったんですもん! あんなの!」
ノカは怒っているが、何に対してかは本人も理解していなかった。
「もうほんとに、犯罪ですよ犯罪、ステルス飲酒させ罪ですよ。あんな皮しておいて・・・・・・」
「どうした?」
「わかったかもしれない」
「何が?」
「シルヴァ公国がどうやって指を輸出するか、です」
「本当か?」
「多分、すごく突飛ですので、あと一時間で詰めるだけ詰めたいです」
◆
ノカとアラタは取り調べ室に到着した。ギリギリになったが二人の話し合いは一つの着地をした。
途中連絡があり、オーリオは被疑者であるタイグリーを引き取りにきた、シルヴァ公国からの使者を出迎えることになった。
取り調べ室の外には刑事が数人立っていた。二人は彼らに向かい合うようにして並ぶ。
「政府直下特殊情報局超高密度情報集積体対策室のアラタです。本日は被疑者の取り調べに参りました」
「ノカです」
「〈パンドラ〉の方々ですね。話は聞いてますよ。貴方が捕まえたんですって?」
「ええ」
二人は彼らの声、口調からなんとなく邪険にされていると感じた。取り調べの最後のチャンスを奪われたのだから、仕方もないだろう。
会話を切り上げて取り調べ室に入る。
狭い立方体の部屋で、タイグリーと向き合う。ノカが椅子に座り、アラタはドア付近に立っている。
捕まえたのは一昨日である、印象は大きく変わっていない、とノカは思った。
「改めてですが貴方の名前はタイグリーでよろしいですか?」
「ああ」
タイグリーは何もない横を向いている。
「時間がありませんので、手短にいきましょう。貴方が〈勇者〉の指を持っていますね?」
「知らない」
「〈勇者〉は知ってますか?」
「言葉ぐらいは」
「タイグリーさん、貴方のお腹でしょう?」
目の前の男の眼が見開かれる。顔がこちらを向く。初めて二人と目があった。
勝負あった、とアラタは思った。
「な、何を言っている」
「政府専用機に乗って貴方は本国へ帰る。そして腹の中から〈勇者〉の指を取り出す、というシナリオですよね」
「そんな妄想には付き合ってらんないね」
「ええ、私もそう思います。身体の中に入れて出国するなんて馬鹿げてます」
「第一、どうしてわざわざ捕まる必要があるんだ?」
「それは一番安全だからです。シルヴァ公国へのアクセス手段は国内であれば、厳重に見張られています。ほぼ全てで魔力探知されると言ってもいいでしょう。しかし、真っ当に例外的にシルヴァ公国に繋がるのであれば、そのハードルはぐっと下がります」
「それが国家間の人間の引き渡しだってか?」
「そういうことです。それなら魔力探知機やそれ以外の全ての検査をパスできます」
「面白い考えだと思うよ」
「口の中を見せていただけませんか? 糸などが歯に括られていると、私は踏んでます」
「証拠も無く、口は開けられないね」
「はぁ、アラタさん、お願いします」
「先程から、魔力探知をしていました。貴方の体内から〈勇者〉の肉片に似た魔力を検知しました」
アラタは手にしていた端末を差し出した。
「ふっ、完敗だね。好きにしなよ」
タイグリーは口を開け、糸をするすると巻き取った。
細い糸の先には、丁度小指程度なら収まりそうなカプセルが結ばれていた。手袋をはめたノカが、結界を解き、カプセルが二つに割れた。
中からは想定通りと言うべきか、指が出てきた。ノカはそれを丁寧な手つきで持参したケースに収納する。
二人は取り調べ室を出る。
刑事が無然とした表情で立っている。
「私たちの仕事はここまでです。あとは任せます」
そう言い残して、ノカとアラタは取り調べ室を出ていった。
ノカが目を覚ましたのは次の日、つまり、尋問する日の朝であった。当然だが、格好は昨日のまま。押し入れの臭いがするタオルケットがかけられている。場所を教えた覚えはない」
「探してくれたんですね、ありがとうございます」
「普通、アルコール入りかどうかわかるだろ」
「こんな、フレッシュ・フルーツみたいな絵が描いてあったらわかりませんよ!」
「そうだとしてもひと口目でわからないか?」
「むぅ、私はひと口でもダメな人なんです」
「そうか、それは災難だったな」
「ええ、考える時間がめっちゃ削られました。それに勤務中にアルコールなんて」
ノカは頭を抱える。リアクションの大きさから、目が覚めたことが見てとれた。
「あーもう、あと何時間ですか?」
「あと二時間だ」
「じゃあ、一時間後には出発しないといけませんし、時間がないですね」
「呑むからだ」
「そんな事言われたって! 分からなかったんですもん! あんなの!」
ノカは怒っているが、何に対してかは本人も理解していなかった。
「もうほんとに、犯罪ですよ犯罪、ステルス飲酒させ罪ですよ。あんな皮しておいて・・・・・・」
「どうした?」
「わかったかもしれない」
「何が?」
「シルヴァ公国がどうやって指を輸出するか、です」
「本当か?」
「多分、すごく突飛ですので、あと一時間で詰めるだけ詰めたいです」
◆
ノカとアラタは取り調べ室に到着した。ギリギリになったが二人の話し合いは一つの着地をした。
途中連絡があり、オーリオは被疑者であるタイグリーを引き取りにきた、シルヴァ公国からの使者を出迎えることになった。
取り調べ室の外には刑事が数人立っていた。二人は彼らに向かい合うようにして並ぶ。
「政府直下特殊情報局超高密度情報集積体対策室のアラタです。本日は被疑者の取り調べに参りました」
「ノカです」
「〈パンドラ〉の方々ですね。話は聞いてますよ。貴方が捕まえたんですって?」
「ええ」
二人は彼らの声、口調からなんとなく邪険にされていると感じた。取り調べの最後のチャンスを奪われたのだから、仕方もないだろう。
会話を切り上げて取り調べ室に入る。
狭い立方体の部屋で、タイグリーと向き合う。ノカが椅子に座り、アラタはドア付近に立っている。
捕まえたのは一昨日である、印象は大きく変わっていない、とノカは思った。
「改めてですが貴方の名前はタイグリーでよろしいですか?」
「ああ」
タイグリーは何もない横を向いている。
「時間がありませんので、手短にいきましょう。貴方が〈勇者〉の指を持っていますね?」
「知らない」
「〈勇者〉は知ってますか?」
「言葉ぐらいは」
「タイグリーさん、貴方のお腹でしょう?」
目の前の男の眼が見開かれる。顔がこちらを向く。初めて二人と目があった。
勝負あった、とアラタは思った。
「な、何を言っている」
「政府専用機に乗って貴方は本国へ帰る。そして腹の中から〈勇者〉の指を取り出す、というシナリオですよね」
「そんな妄想には付き合ってらんないね」
「ええ、私もそう思います。身体の中に入れて出国するなんて馬鹿げてます」
「第一、どうしてわざわざ捕まる必要があるんだ?」
「それは一番安全だからです。シルヴァ公国へのアクセス手段は国内であれば、厳重に見張られています。ほぼ全てで魔力探知されると言ってもいいでしょう。しかし、真っ当に例外的にシルヴァ公国に繋がるのであれば、そのハードルはぐっと下がります」
「それが国家間の人間の引き渡しだってか?」
「そういうことです。それなら魔力探知機やそれ以外の全ての検査をパスできます」
「面白い考えだと思うよ」
「口の中を見せていただけませんか? 糸などが歯に括られていると、私は踏んでます」
「証拠も無く、口は開けられないね」
「はぁ、アラタさん、お願いします」
「先程から、魔力探知をしていました。貴方の体内から〈勇者〉の肉片に似た魔力を検知しました」
アラタは手にしていた端末を差し出した。
「ふっ、完敗だね。好きにしなよ」
タイグリーは口を開け、糸をするすると巻き取った。
細い糸の先には、丁度小指程度なら収まりそうなカプセルが結ばれていた。手袋をはめたノカが、結界を解き、カプセルが二つに割れた。
中からは想定通りと言うべきか、指が出てきた。ノカはそれを丁寧な手つきで持参したケースに収納する。
二人は取り調べ室を出る。
刑事が無然とした表情で立っている。
「私たちの仕事はここまでです。あとは任せます」
そう言い残して、ノカとアラタは取り調べ室を出ていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに
千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】
魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。
ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。
グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、
「・・・知ったからには黙っていられないよな」
と何とかしようと行動を開始する。
そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。
他の投稿サイトでも掲載してます。
※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる